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"イノベーション" の帰結点 - 「需要」は「追う」のではなく「創り出す」

 お堅い国営放送を辞めて民間に転出したOキャスター。アメリカの新大統領就任式取材で米出張していたが、そのレポートが秀逸。久々に「ジャーナリズム」を見た気がした。本人もこういう事がしたくて "出た" のだろう

 中でも目を引いたのが ”平均年収2,000万円” と言われるサンフランシスコの取材。家賃や物価が高くて年収1,500万円以下ではまともな生活が出来ないと言われる現地の ”光と影” を上手く描き出していた

 2年前からキャンピングカーで暮らしのH・サントスさん :
「家賃なんて払えない。みんなAIに仕事を奪われて、仕事も給料も減っている。とにかく家賃が高すぎる」

 衝撃的だったのがたくさんの「路上生活者」腰が曲がった状態で動けないのはヘロインの約50倍も薬効がある合成麻薬「フェンタニル」のせい。背骨が弱って直立出来なくなるという。「国民皆保険」もない超競争社会・アメリカの縮図と言えばそれまでだが、日本同様「人手不足」でインフレになっているアメリカにおいてはかなり痛い人的リソースの喪失でもある

 その対比として出てきたのが33階のスカイスクレイパー(高層マンション)に自宅兼オフィスを構える25歳の若手IT起業家。 "イノベーション" の騎士という事になるが、Oキャスターが路上生活者の事について尋ねると:

 ” 『AIは富める者をさらに裕福にするつもりか』と皮肉られますが、本当に求めているのは『AIはどのように万人に機会を与えられるか』です。その意気込みをここでは毎日のように感じられます」AIを使って多くの人を助けるような仕事がしたい”

 単なる ”勝者の理論” にも聞こえがちだが、路上生活者と起業家の命運はどこで分かれたのか。筆者がハタと思い当たったのが世の中の「需要」を「追う」人と「創り出す」人の差ではないのか

  "イノベーション" は何もIT業界に止まらない

 日本を例に挙げれば「円安」をきっかけに訪日客が増え、+8兆円もの貿易黒字を創り出した「インバウンド」がそう。一瞬で情報が世界中を駆け巡るSNSが一役買った面もあるが、日本の食文化やアニメ、あるいは昭和歌謡が世界中に "見つかった" のも、ある意味 "イノベーション" ではある

 「需要」を「創り出す」 "イノベーション" はかつての日本にも確実にあった。代表例は「ウォークマン」だろう。あれこそ人々が求めるものを「創り出す」 "イノベーション" そのもの。それから「自動販売機」。400万台まで大分減ったようだが、それでも年間売上高が約4兆円で過去最高を記録した「インバウンド」黒字の半分と聞けば恐れ入る。問題は日本がかつての「需要」にしがみついて縄張り争いに終始していることだ

 「損切丸」が専門にしている「お金」の話も同様。最近で最も顕著な例が「ビットコイン」だろう。発行枚数を制限したり「半減期」等々 「お金」が信用できない? - 鍵は ”希少価値” |損切丸 を上手く利用している

 ダイヤモンド・シンジケート: ”クズダイヤは全てドーバーに捨てろ!”

  のようなユダヤ系が得意にしている手法を思い起こすが、BTCもダイヤも有効なのは「インフレ」というベースがあるから4京円もの「大借金」でマーケットに「お金」が有り余っているからこその戦略でもある

 そして「お金」の「需要」の調整弁になるのが「金利」だ。FRBやECBが+5%、+3%等の「利上げ」を敢行したのは ”ドーバーに捨てる” より自らが発行する「法定通貨」の価値を守るため、と考えれば合点がいく。世界中が「ゼロ(マイナス)金利」だった所からの脱却という意味ではこれも "イノベーション" の一部と見做なしていい

 いつもの事ながらこれらに立ち後れているのが何でも時間がかかる我が国・日本30年近く続いた「ゼロ(マイナス)金利」からの脱却と言う、まさに世界的一大 "イノベーション" 。だからどうしてもマーケットの反応は大きくなる。 ”さてどん尻に控えしは” といった所か(苦笑)

 この数年間は「需要」ではなく「供給」を創り出してきた低金利通貨「円」同じ低金利通貨に「スイスフラン」もあるが、何のかんの政策金利もECBに沿って@1%まで引上げられていたし(現在は@0.50%「量」が違いすぎる。その帰結は数百兆円に上る「円キャリートレード」多くの人に「得」をもたらした "イノベーション" と言えるだろう

 その やはり「過剰流動性」の総本山は日本 ー 「結果」を得るには一度「苦況」を乗り越えなければならない|損切丸 が「供給」から「需要」に舵を切る。前稿.「資金繰り」担当者の ”気持ち” - 「ゼロ金利」の ”魔法”|損切丸 で「ゼロ金利」の ”魔法” については解説したが、①▼20円近くの「円高」②▼8,000円もの「日経平均」の急落を乗り越えて、最もハードルの高い「ゼロ金利解除」はやり遂げた。ここからの上り坂はそれほどきつくない。*市場の予想より早く@1%超へ到達するだろう

 *FRBの「利上げ」局面で見た通り、一旦「利上げ」が始まれば展開が早いのも「金利」相場の特徴。市場も織込みが進みみんな目が慣れてくるからだ。一度上がってしまえば何て事は無い。振り返ってみれば30年も続いた「ゼロ金利」がいかに異常だったか、気づくことになる。「利上げ」が進む毎に「円キャリートレード」の ”魔法” も解ける「中立金利」の差、e.g.、アメリカ@4.0%-日本@1.5~2.0%≓+2.0~2.5%、から推計すると日米の政策金利差が@2.5%を下回れば ”魔法” は機能しなくなるドル円の適正値は@130=135円と勝手推計しているが、さて市場はどう織り込むか

 アニメや食文化、J-ポップ等々、ソフト面では日本に "イノベーション" の余地はまだまだあるし、頑張っているベンチャー企業もある。あとは既存の「需要」にしがみつく「既得権益」がどれだけ邪魔するか。 「大きな政府」と「小さな政府」- どちらの ”ポリシーミックス” を選ぶのか|損切丸 の視点でみると新たに「需要」を創り出す「103万円の壁」の議論は政治的 "イノベーション" の端緒ともなり得る。アメリカの大統領も替わって紆余曲折はあろうが、結局この国の行く末は我々日本人自身の行動次第。路上生活者が溢れる街にしないためにも創意工夫が試される

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