「ホワイト国除外」と「据置き協定」ー ロイター通信の放った矢

 8月2日で閣議決定が既定路線と思われていた韓国の「ホワイト国除外」。2日前になって絶妙のタイミングで米国の仲介による「据え置協定」を提案、という矢をロイター通信が放った。メディアやネットは騒然となっているが果たしてどこに真意があるのか。3カ国の思惑から推測してみる。

韓国 - 当然ホワイト国除外の阻止、そしてその中には半導体関連も含まれる。筆者も前稿で解説したが、韓国側の被害が甚大になる恐れがある、と考えている。(おそらく輸出管理に係る書類や「覚書」に署名できないのだろう。「覚書」の内容は、輸出品の管理に不備が発覚した場合、当該品目の輸出許可を取り消す、といった趣旨か)
日本 - 半導体3品目の管理は継続。それに続く「ホワイト国除外」は国内管理の問題であり、既に決定事項。4万件ものパブリックコメントのうち90%以上が支持している「民意」はさすがに無視できない。仮に「据置き協定」が米国から提案されたとしても、それは今後の徴用工訴訟の差し押さえ現金化に対する対抗措置など本当の「規制」に関するもの、との解釈。
米国 - 半導体3品目だけ管理されていればどちらでも良い。なぜなら、情報産業にも軍需産業にも戦略物資である半導体が米国の管理下になり、中国に覇権を握らせない、という目的がそれで十分果たせるから。半導体関連以外の品目が日本から韓国に流れることについては、正直あまり興味がないのでは。まずは軍事情報包括的保全協定( GSOMIA=General Security of Military Information Agreement, ジーソミア)の維持が最優先で、駐留米軍の負担増やイランへの有志連合の参加を踏み絵に日韓両国を天秤にかけるつもりではないだろうか。

 「据置き協定」提案や「ホワイト国除外」に対する菅官房長官や世耕経済産業相の発言を聞いていると、日本寄りのシナリオに決着する可能性が高い、と「損切丸」は見ている。韓国には、「今回の措置は規制ではなく、他の非ホワイト国同様手続すれば日本からの輸出は今まで通り行われる」、といった説得が強調される形になるだろう。

 31日に開かれていた日韓の議員の会合後の双方のコメントを聞いていると、ますますそんな風に思えてくる。一点、政治力学に変化があったとすれば、韓国の不買運動の影響から九州などでLCCが減便になったり、観光収入が落ちたりして地方から与党に陳情が相次いだ事だろうか。若干空気の変化はあったかもしれないが、日本側の方針転換につながる程ではあるまい。

 市場の反応 - 「据置き協定」の記事を見たときに、反射的にこれは日経は売られるな、とは思った。(ただし東京エレクトロンなど半導体関連は値持ちしていた)逆に韓国株式指数=KOSPIは値持ちするのかな、と思っていたらこちらも売られ、一時防衛ラインと見られる2,000ポイントぎりぎりまで落ちた。サムソン、SK、LGなども総崩れ。ちょっと意外だったが、今回の米国の仲介如何に関わらず韓国の半導体産業のシェアが奪われる見通しが変わらないのなら、納得のいく動きとも解釈できる。

 今回のロイター通信の放った矢が、韓国よりのフェイクニュースだと囃す向きもあるようだが、今回のような歴史のターニングポイントで油断は禁物。筆者の見立てが正しければ、なにしろ今回の騒動の主役であるはずの米国の立ち位置が非常に不明瞭であり、米国に利があれば他国がどうなっても構わない、というアメリカ第一主義の副作用が現われている。

 いずれにしろ、あと2日で結果はでる。31日の市場もそうだったが、結果に対する株価の反応などが単純ではない可能性も高い。折しも1日の株式市場は*NYダウが急落(といっても-1.2%程度)した後だけに要注意。

*利下げが不十分だったため、と解説されているが、FOMC(連邦準備制度理事会、Federal Open Market Committee、アメリカの中央銀行であるFRBの金融政策決定会合にあたる)の発表前後でドル金利市場はほとんど動いておらず、FRBがちょっとかわいそうではある。

 それにしても日韓とも米国に対する貢ぎ物は随分高い物につきそうだ。老後に「2,000万円」貯めなければいけない日本国民にとっても痛い出費ですね。 (トホホ...)


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