「無理」を押し通す日銀。- 日本国債(JGB)市場の "歪み" が意味するもの。
ネットでもやたらと用いられているが、どうもこの ”コストプッシュ” という言い方が好きになれない。まあ、国のトップが国会でこう言えば "洗脳" されるのかもしれないが、良く考えるべき。
例えば「デフレ」20年でも ”コストプッシュ” は存在したが、「賃下げ」、あるいは値段を上げずに量を減らす「スティルス値上げ」で凌いだ。
それがなぜ今になって猛烈に「値上げ」が進むのか?
「損切丸」では繰り返し主張しているが、これはアメリカ同様、人手不足によって人件費が上昇してきたから。つまり ”コストプッシュ” ではない。それを判っているのに、さも「円安」だけのせいにしている所にこのレトリック(詭弁)の悪質性がある。だから* "来年度以降の消費者物価は@2%を下回る水準まで低下していく" などという無責任な発言が出てくる。人件費の上昇まで日銀は精緻に予測できているのか?
ここまで日銀が「金融緩和」に固執する理由はただ1つ。国債の利払いを増やしたくないから。黒田総裁が元・財務官である事を忘れてはいけない。**日銀も「利上げ」で爆発する545兆円@9/30 ↓ もの "JGB爆弾" を抱えており、今や日銀・財務省は完全に "一蓮托生" 。
では「払いたくない国債利子」の ”ツケ” はどこへ回ったのか。
ここに「国債無制限買取オペ」のカラクリが存在する。
↑ 赤線部分が今日(10/17)時点のJGBイールドカーブだが、随分と形が歪んでいる。これは「国債無制限買取オペ」で10年JGBとJGB先物の変動を抑えるためチーペスト銘柄に当たる7~8年JGBも買占めたから。 ”自然体” なら青線のようなチャートになるはずだ。
つまり赤線と青線のギャップになっている "歪み" が「円安」に転嫁されている。ヘッジファンドの連中と話をすると判るが、元は米系の投資銀行に在職していたトレーダーも多く非常に論理的。クオンツ(高等数学、物理学を投資に応用するスタイル)なら、例えば10年JGBを▼0.5%抑え込んだ ”圧力” がいくら「円安」になるかまで計算している。日本政府が「投機筋」などと蔑んでいるが、決して地下で蠢く ”ショッカー” のような存在ではない(苦笑)。特に金利系は真面目な人が多い。
***「今金利を上げたら住宅ローンと中小企業が破綻する」
今の「戦争」のプロパガンダではないが、財務省に頼まれているのかと思うぐらい(苦笑)ネットではこう言う書込みが多い。これは間違いではないが、おそらく ”大変な事” になんてならない。なぜなら日本は世界で突出した異様な「預金大国」だから。「利上げ」は国民のメリットの方が大きい。
財務省もこの事は把握しており、だからこそ掟破りの「低金利政策」。企業の剰余金484兆円@2022.3(うち預金325兆円@2022.6)を含め、民間預金1,000兆円と国債発行残高1,225兆円@2022.3がほぼ両建てで釣り合っている。これを「金利」で考えると、1%で財務省は年間+12兆円、民間は▼10兆円「損」をしている。今の日本においてこれは「預金税」と言っていい。
ただ企業は「国際競争」の名の下に法人減税で「損」を補填されており、「福祉目的」のはずの「消費税」もこの "穴" を埋めるため。結果負担は ”羊のようにおとなしい” 「サラリーマン」にのし掛かる。
「円安」による輸入物価上昇も重なり、ここ5年の物価動向 ↓ では幅広く年間+2~10%もの「値上げ」が見られる。これが生活者の実感だろう。
まさに理想の「インフレ税」政策。
提言:政策金利は最低でも+1%引上げるべき
仮に黒田総裁の来年CPI+2%を信じるとしても、これがマーケットを納得させる「最低線」。+10円も「円高」に戻せば1,000兆円預金による「資産効果」は+100兆円。財務省が減らそうとしている▼10兆円の国債利息の10倍だ。「円買い介入」とタイミングを合わせれば+20円も可能だろう。とにかくFXのトレーダーを儲けさせるような介入では逆効果。
投機、投機と「他人のせい」を繰り返しても何も解決しない。現在の様な "歪み" を放置すれば付け入る "隙" を与え続けるだけ。「円安」加速で個人消費が落ち込こめば元も子もない。そんな事も思考できないほど官僚の質が劣化しているのだろうか。
このままだと本当に「財務省栄えて国滅ぶ」。国が栄える政策を打つのが支持率回復の近道だと思うが…。ユニクロの柳井氏が痛烈に皮肉っていたが、今は自分の身内に「小金を配るだけ」の政策になっている。だから「金利」が上がって自分達の動かせる「お金」が減ることを嫌がる。だがそれこそ「財政健全化至上主義」に反する。加担している日銀の責任は重い。