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♪株はジェットコースター♪ ー 「AIほったらかし投資」はどう反応するのか?

  "全てAIにお任せ!ほったらかし投資で安心運用!”
 
"2年以上の利用者の94%がプラスの運用実績”

 株の運用等ででこういう宣伝文句を見かけるが、この3日間「AI」はどんな運用指示を出したのだろう。非常に興味がある。日経平均@31,000円、ドル円@141円で「損切り」して@34,000円、@145円で買い戻し、なんて事にならないのだろうか。「損」だけ投資家に押付けたりして…

 今回の相場で「新NISA」等のニューカマー(Newcomer、新規参入者)は実感しただろう、何年もかけて積み上げた利益が一瞬で吹き飛ぶ怖ろしさを。30年携わった「損切丸」が言うのも何だが「相場」とはそういうもの。筆者も随分酷い目に合ってきた

 「お金」のフローを追って来た立場で言えるのは、こういうクラッシュの前には必ず "異常なポジションの積み上がり" がある。古くは「世界大恐慌」(1929)、「ブラックマンデー」(1987)、そして筆者が実際に対応を迫られた「LTCM破綻」(1998)、「リーマンショック」(2008)。そして全てに共通するのが「金利」が引金になっている点

 ヘッジファンド(HF)が台頭してきた現代では「キャリートレード」が混乱の元になるケースが多い。これは投資家があまりに高い「利回り」を求める事に起因するのだが、収益を増やすためにHFは「キャリートレード」を多用する。それは金利差を利用した「円キャリートレード」だったり「レポ市場」(債券の貸借市場)だったりする

 「リーマンショック」の時は "中味" の判らない訳のわからない債券に無理矢理「A」格付を付与し、それを「レポ」でグルグル回した”毒” は世界中に巡り、最後は "中味" が露呈して大混乱に陥った。もうどこがいくら「損」しているかわからない疑心暗鬼

 そして「LTCM破綻」と今回は金利の低い円を借りる「円キャリートレード」スイスフランなども対象に上がるが所詮規模が違う。「円」を担当するようになって実感したが、100~1,000億円単位の「お金」をブンブン貸借りするマネーマーケットは日本だけ世界一の「ドル」でさえ「お金」を集めるのは10~50億円を丹念に拾う苦労があるが、「円」は一発で1,000億円揃ったりする。実は世界でも稀に見る「高・流動性市場」なのである

 だからHFは「円」が大好き。実際ここ数年のマーケットを見てもドル円や日経平均(先物)のボラティリティー(変動率)は断トツ高い収益を追及するHFにとって「円」は "生命線" 。とにかく巨額の「お金」を5回転、6回転と "レバレッジ" させるには恰好のマーケット

 「LTCM破綻」で酷い目にあった時は ”これで投資銀行業界は大人しくなるだろう" と思ったものだが、そこで ”奉加帳方式” (取引銀行が協議して決めるやり方)で「LTCM」を救った事が仇になった”何かあっても当局が何とかしてくれる” というモラルハザードが蔓延、その後の「リーマンショック」に繋がる

 社会インフラである「銀行」、特に大手の破綻を防ぐために資本・流動性管理などの金融規制を強化し、決済システムのRTGS化(即時決済システム)など確かに金融市場は整備・強化された。今回の株価暴落でマーケットが揺らがなかったのはそのお陰でもある

 だが「デフォルト」(破綻・倒産)問題は残る今回の混乱で窮地に立たされたHFは無いのか。そしてその影響が「銀行」に及ばないのか

 「LTCM」の時のようにポジションの一極集中はなかったものの、怖いのは「デフォルト」の連鎖。これは一般企業でもそうだが倒産は連鎖する。今のところは見えていないが、今後何か出て来る可能性もある

 そして現在のマーケットにおける最大の「変化」は「AI」だろう

 HFT( High Frequency Trades、高頻度取引)もその一部だが、1秒間に何万回も取引するような「マシーン」に「人」はついていけなくなっている人類は ”火” を起こして以来様々な「道具」を生み出してきたが、それも使いこなせてこそ。今の金融市場はちょっと前のSF映画さながら「人」が「マシーン」に奉仕するような逆転現象が起きつつある

 FRB日銀・金融庁等々、金融当局もその事には気が付いているだろう。サーキットブレーカーを用いたりFXでは100倍とかの高レバレッジを禁止したり「規制」してきた。例えばHFTについては取引回数を制限するなど何らかの措置が講じられる可能性が高い(中国では既に税金をかけている)

 今回の市場の混乱でも「AIほったらし投資」"往復ビンタ" を喰らわしたのか、それとも「壊れたナビ」同様全く動かなかったのか。底なしに下落した場合、きちんと「損切り」出来ないようならそれはそれで怖い。プログラムの中味はきちんと検証すべきだろう

 ドル円も日経平均もここから上も下もある戻り売りで「損切り」を確定させるのか、それとも強気で買い増すのか。そこは個々の判断になるがこの局面「AI」任せは感心しない”わからないモノには投資しない” が筆者の信条だが、 ”使いこなせない道具は使わない” も同様。どんなに便利になっても最後に残るのは「人」。そうあるべきだしそうあって欲しい


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