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ちょっとしたマーケットの変化@2021.1.30 ー ジャングルでは減っていく「餌」の奪い合いに。

 1.ドイツの物価上昇率(CPI)が▼0.3% → @+1.0%に急上昇。

 12月ドイツCPIが予想を外れてあまりに高く驚いた。年率+1.0%の上昇。為替レートが対ドルでユーロ高で推移する中、一体何があったのだろう?

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 まさか日本のように数値を ”調整” はしていないだろうから(笑)、これが実態なのだろう。元・ドイツマルクの金利担当者として経験上言えるのは、確かに*ドイツ人は易々とは「妥協」しない

 極端な例だが、物を売る時仕入れ値が@60円で粗利が40円と決めたら売値は@100円からテコでも動かない。それに対し買い手は商品が売れていないと見做せば@50円の買値を動かさない。日本人なら徐々に@80円@70円と歩み寄っていきそうだが、ドイツではそのまま数ヶ月動かなかったりする。実際筆者が担当中、賃金交渉でそういう場面を見た。

 そんなドイツで値段が上がっているのは、実際需給が売り手有利に働いている証でもある。ユーロ高下のドイツでそうなのだから他国は推して知るべし。米国や、特に中国の需要の強さが影響しているのだろう。CPIを無視すれば日本でも様々な物の値段が上がっているのが ”FACT”

 10年ドイツ国債(Bunds)の実質金利は@▼1.63%に落ち込み、この状況、ECBではなくブンデスバンクなら即利上げの局面だ。おそらく政策金利は最低でも@+1.50%まで引き上げられる。まあ今そんなことをすれば「ブラックマンデー」の再現となり、ユーロドルは@1.3000越え、株価は世界的に急落する。ECBで良かったと思うべきなのか、それとも...

 同じ欧州域内でCPIが@▼2.30%のギリシャが存在するのも異常だ。物の需給が本当に引き締まっているなら、他のユーロ圏諸国のCPIはプラス方向に引っ張られ、景気の悪い国は「スタグフレーション」のリスクが高まる。各国で頻発する過激なデモはその顕れかもしれない。ただでさえイタリアが政治的に不安定になっているのに盟主国ドイツも頭の痛いところドイツのCDSがアメリカを上回ったのもそれらを反映した結果と考えられる。

 2.株価急落でも下がらない長期金利

 ゲームストップ株の ”ショートスクイーズ” に目を奪われている間に世界中で株価が急落損失穴埋めのための ”レパトリ” でファンド等が利の乗っている株、e.g. アップルテスラ、etc.,etc. を売ったからだ。日本株なども真っ先に売りの対象になり、年初来の上げのほとんどを失ってしまった。まさに「丑年のつまずき」

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 利の乗ったポジションとしてはFX「ドル売り」もあるので、こちらも ”レパトリ” でドルの買い戻しが進んだ。

 米国債もショート(売り)ポジションを保有しているだろうから買い戻しか、と思って見ていたら昨日(1/29)は株価下落とともに売られた。どうも**「日銭稼ぎのキャリートレード」で米長期債をロング(買い)で回していたらしい。株と共に「損切り」を迫られた格好だ。

 **ヘッジファンドというともの凄いプログラムやAIを駆使して最先端の取引を手掛けていると想像する方もいるかもしれないが、意外とやっていることは「原始的」だったりする。筆者も彼らのオフィスを訪れて拍子抜けしたことがあり、個人のデイトレーダーの方が余程高度。体がでかいだけの象が賢い蟻にやられるのは至極当然とも言える。

 「金利上昇」には3大要素:①インフレ ②お金が足りない ③信用リスク があるが、今回は①+②のようだ。こうなると株価の下落は国債や社債の支援材料にはならない。特に①インフレが1.ドイツCPI@+1.0% ↑ が示すように ”真性” なら、10年米米国債は再度@1.20%を目指す展開になろう。

 株価もリバウンドはあるだろうが、戻りが弱く高値 e.g. 日経平均@28,500.- 前後、を回復できないようだと苦しい。典型的売りチャートに移行する懸念も出てくる。年初からいきなり「正念場」を迎えている。

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