見出し画像

「大きな政府」と「小さな政府」- どちらの ”ポリシーミックス” を選ぶのか

 ”株のアービトラージ(裁定取引)で1兆円貸してくれ”

 100億円ならいざしらず1兆円なんて...。投資銀行で「資金繰り」を担当していた時に日本株のトレーダーとよく揉めた ↑ 。実際には50億円、100億円というオファー(貸し手)を掻き集めるので1兆円なら100億円×100回。当然レート=「金利」は上がる。だが「1兆円」というボタンを押せば自動的にいくらでも取れると思い込んでいる彼らには理解できない。ほんの+0.02~0.03%上乗せするだけで「泥棒!」と罵る始末

 国の「資金繰り」を司っているのが日銀であり財務省全体を見ている「税調」の立場からすると▼7兆円も収入が減る「103万円の壁」の引き上げなど ”とんでもない” 。銀行と財務省の大きな違いは「徴税権」があることだが、これが「権益」で彼らの「力」の源でもある

 「財源論」とか各論に持ち込んで反対するのはよくある「手口」だが、全体を見れば予算全体の規模=「大きな政府」か「小さな政府」かの選択

 日本:国債発行残高1,200兆円 vs 預貯金1,000兆円
 「大きな政府」≓ 増税+低金利 → 国民負担増大
 「小さな政府」≓ 減税+高金利 → 国庫負担増大

 ざっくりとだがこういう構図になる。当然「権益」を守りたい与党・財務省は「大きな政府」路線退職後の ”天下り” にも強力な武器になるから「公共支出」という「力」の源を手放したくない。これを強力に推し進めたのが「増税」(含.社会保険料)+「低金利政策」であり、最後に放ったのが「XXバズーカ」「異次元緩和」そして「国債無制限指値買取りオペ」

 そう考えてくると今回の「123万円への引き上げ」≓ 減税拒否と日銀の「利上げ見送り」はまさに「大きな政府」路線の ”ポリシーミックス” 。「権益」保持に対する執念を感じる

 義務教育から「清貧思想」「上意下達」「預金は善」を刷り込み "我慢強い民衆" を育ててきた成果がこの ”理想の社会主義国家” 。だが「6公4民」に「インフレ」が重なり堪忍袋の緒が切れかけている。こうなると「大きな政府」路線で負担ばかり押しつけてくる与党・財務省は "国民の敵" でしかない。その結果がハングパーラメント(少数与党)という選挙結果になった

 日本人が「円安」嫌いに転じたのも、端的に言えば膨張しすぎた「大きな政府」から「小さな政府」への転換要求になる。「円安」を止めるには「利上げ」が不可欠だからだ。そのダメージを抑えるには「減税」が必要になる。そうやって始めて負担は国民から国(国庫)に移る

 ただそれで全て解決するかというと 続・『地獄でなぜ悪い』 - 「減税」「給付金」は『天国』なの?|損切丸 いたずらに「減税」路線だけ推し進めれば「円」はマーケットに溢れ「円安」は加速してしまう。仮に▼7兆円減収となるならその分「支出」も▼7兆円減らす必要がある

 人間は「自分」に甘い生き物。冒頭の株のトレーダーもそうだが、減らされる対象が「自分」となると途端に抵抗し始める。公共事業だって医療費だってそう。110兆円まで膨張した年間予算を少なくとも100兆円以内に納めようとすれば煽りを受ける企業や団体が出てくる。例えば*現状1~3割の医療費負担の3~5割への引上げを国民は受け入れる事が出来るだろうか

 *イギリスで「国民皆保険」を強権で実質的に廃止したのが ”鉄の女” と揶揄されたサッチャー首相。 "ゆりかごから墓場まで" はもう無理。ー 「お金」の事ははっきりさせよう。|損切丸 の先達ではあるが、日本ではこういうドラスティックな改革は難しい。時間をかけてゆっくり進めていくのかもしれないが、マーケットは待ってくれない「円安」はいわば令和の ”黒船”"外圧" がないと変らないのもいかにもこの国らしい

 ”よくこんな会社ばかり担当してるねぇ...”

 筆者が支店勤務で外国課担当だった時に本店審査部の担当者に言われた。輸出入業者は売掛金の回収に時間がかかるので総じて「借金」が多い。中には年間売上高の2倍以上借りている会社もあった

 だがこれより悪い状態の国がある。そう、「日本」

 「借金」≓ 政府債務11兆ドルは「年間売上高」≓「GDP」4兆ドルの3倍近い「預金」≓10兆ドルがあるから何とか「資金繰り」出来ているが、一般企業なら銀行はとても追加融資できない

 そしてより深刻なのが、この国の「借金」が「日本株式会社」のために使われていないこと国内で使い切れない500兆円もの「余り金」は「円キャリートレード」でアメリカを中心とした欧米の「資金繰り」を支えている。つまり やはり「過剰流動性」の総本山は日本 ー 「結果」を得るには一度「苦況」を乗り越えなければならない|損切丸 だから日本の事情だけで安易に「利上げ」できなくなっている

 もっとも与党・財務省が「減税すると地方の税収が減って公共サービスに支障が出る」などと ”脅し” をかけているのは、選挙民はそういう "痛み" に耐えられないとたかを括っているから。公共事業の減少医療費の自己負担増、あるいは「利上げ」に伴う「変動金利」の上昇もそう

 「減税」で手取りが増えるのはいいが、それは決して "エルドラド" (黄金郷)ではない。「小さな政府」路線を目指せば必ずどこかに皺寄せがくる政府・財務省を「国民の敵」とするなら我々も腹をくくる必要がある今の「インフレ」「マイナス実質賃金」による生活苦から脱却するには「減税」「利上げ」=「小さな政府」は避けて通れない道サッチャーのような豪傑政治家の出現を期待出来ない以上、個人個人が "覚悟" するしかない。そうして初めて「円安」から抜け出すことが出来るだろう

いいなと思ったら応援しよう!