ドル建日経1年

高値を更新し続ける株式市場 - NYダウは史上最高値、日経平均も年初来高値を更新中。

 「こんなに上がるのはおかしい!買われすぎだ!」 

DJ1年

 株の下落に賭けた投資家やファンド、トレーダーの怨嗟の声が聞こえてきそうだ。日経などは逆張りの売りが多かったそうだから、おそらく「損切」を余儀なくされていることだろう。それがまた株価を上昇させている。日経平均はNYダウほどきれいな上昇相場ではないが、「ドル建日経平均」(標題添付↑)にするとNYダウと同様、明確な上昇トレンドであることが判る。

日経1年

 「損切丸」は株の専門家ではないので、株価指標やその分析にはほとんど素人。ただ、銀行の資金繰りに長年従事してきた中でキャッシュフロー、いわゆる「資金の流れ」を注意深く観察してきたため、「お金」の側からマーケットを見る術は身につけてきている。

 株価が落ちる時は「お金の流れ」が株式市場に向けて止まる、あるいは流出する時である。そういう場面を何度も見てきた。だから、株式トレーダーが常に警戒するのは中央銀行による金融引締めや金利の上昇。債券などの金利商品にお金が逆流するからだ。

 では2019年年末近い今の状況はどうか?株価は上昇しているのに、金融引締めどころか日本やヨーロッパでは「マイナス金利」の深掘りまで議論されている状況だ。こんな事は今までの経験則に全く当てはまらない。「理論派の株トレーダー」はこの部分を軽視していたのではないか。→「買われ過ぎの株価は絶対に是正されるはず」の罠。

 経験則に基づけば、今回も株のショートで儲かったはず。しかし今回は過去に例を見ない、中央銀行がインフレ、もっと言えば法定通貨の価値減価を目指している相場だ。是正されるのは株価ではなく、法定通貨の価値そのものの可能性があるため、株価自体は下がる必然性が薄れているのである。

 典型的なのがドイツのDAX指数。11月5日投稿.「ヨーロッパがおかしい - 遂に個人預金にマイナス金利が適用へ。富裕層の資金は株へ向かうのか? 」で書いたが、中国の内需後退が自動車産業を直撃し、今ドイツ経済はリセッション(景気後退局面)にあると言っていいほど不調だ。しかし、日経平均同様DAXは年初来高値を更新し上昇トレンドを取り戻しつつある

DAX1年

 ヨーロッパを中心に分析しているエコノミストなどは解説に窮していることだろう。「損切丸」的考え方では、大量に余ったお金は主に主要な株式市場を目指すので、実はそれほど不思議ではない。ちなみに、BREXITですったもんだしたイギリスの株式市場はさすがに上昇軌道には戻れていないが、ポンドの回復とともにドル建(下グラフ)では年初来高値に接近している。

FT1年

FT in USD 1年

 それではドイツの輸出に打撃を与えた中国経済はどうだろう。上海の株式市場を見る限り、結構ダメージを受けていそうである。こちらは米国の関税報復を受けている事から、通貨、株式ともに不調を脱し切れておらず、お金が流れ込んでいる気配がない

上海1年

 人民銀行が一定の金融緩和措置を取っているものの効果は薄く、また株の買い支えも控えられているようである。最近の香港の騒動も、この景気悪化の隙間をついて起きているのではないか。経済的に余裕があれば、政府もまだ対応余力があったかもしれないが、この経済状況で資金力のある香港を無視することはできないのだろう。

 もう一つ、今年前半はアジア市場の主役級だった韓国の株式市場。こちらも中国輸出に傾斜しているためダメージがありそうであるが、1900ポイント付近まで売られていたのが2100ポイント台まで急回復している。

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 まあ、こちらは急激に売られすぎた反動と政府の買い支えがあったようであるから、中国とはちょっと様相を異にしているが、通貨ウォンが対ドルで下げていることを考えると、2019年のパフォーマンスはあまりいいとは言えない。あとは韓国大推奨のジムロジャースを信じる人がどれだけいるか、にかかっている(笑)。

 「ブラックスワン」リスクとしては「トランプ大統領弾劾」「安倍政権退陣」などが挙げられるが、一時的なショックがあるにせよ、日欧米の巨額の借金が解消しない以上、現状の政策は維持されるだろう。そうすると、これまでもそうであったように、キャッシュフロー=お金の行き場、を考えると株式市場は急落に見舞われても、またゴムの様に戻ってきてしまう

 2020年もインフレ政策と「金余り」を基本に、キャッシュフローを意識しながら相場を予想していこうと思う。

 インフレに強い株式を考える時、一点だけ注意。*教科書的には銀行や保険会社もインフレに強い、とされているが、これはおそらくNG

 *インフレ→金利上昇→金融機関の利鞘増加、を想定しているのだろうが、今回金利が上がる時は「本物のインフレ」が起きる時であり、暴力的な動きになるかもしれない。金融機関にとっては、目先の利鞘の拡大より保有債券の損失の方がはるかに大きくなるだろう。増える自然災害も保険会社にはマイナスだし、銀行の金融規制は依然厳しすぎる。銀行を早期退職した筆者が言うのも何だが(苦笑)、金融株は買う選択肢に入らない。

 とは言え、この高値で株を買うのはなかなか勇気が要る。しかし、ざっくりとした経験で言うと、「怖いなあ」と思って持ったポジションの方が勝つ確率が高く、逆に「これは買いで間違いなし」のように妙に確信めいていた時はほとんど負けていた。これも相場の真理なのだが、「間違いのない買い」は既に多くの人が手掛けた後のため、あとは落ちるしかないのである

 「売買い半々のはずなのに、なぜか逆に行くんだよなあ」

 こう嘆いた友人がいたが同感である。いつになっても相場は難しい。ただ地道に人の行かない道を行った人の方が勝つ確率が高いのも事実。へこたれずに頑張るしかない。「損切丸」もマーケットの検証を怠らずに臨みたい。


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