「利下げ」はまだ気が早過ぎる
UAW(全米自動車協会)のストライキから3万人程労働者が戻り、10月の雇用統計が実態以上に下振れしていた事が確認された。アメリカの労働市場は依然堅調だ。平均時給が+4.0%に緩んでいるのは朗報だが「利上げ」は止まっても「利下げ」はまだ気が早過ぎる。早期のリセッション(景気後退)まで織り込むのは明らかにやり過ぎで、米国債は2年以内の短期ゾーンの中心に売られた。同時に発表になったミシガン大指数も強い。
12/6 スロバキア連銀総裁「1~3月の利下げはただの空想」
ECBの理事がこう語っていたがユーロの「利下げ」予想も拙速。年明けすぐに「利下げ」はさすがに絵空事だろう。ただマーケットはせっかちなのでいつも前のめり。植田総裁の「チャレンジング」「年末から来年にかけて」→12月政策決定会合で「マイナス金利廃止」も同様だ。
ただ金利のベクトルが欧米と日本が "逆向き" になったことは否めない
面白かったのが「ドル円」。雇用統計発表直後@144円台後半まで「ドル買い」で突っかけたが「キャリートレード」筋の祈り虚しくすぐ失速。@144円台前半に押し戻された(ただ一度バナナを吐き出したのでその余力でNY引けにかけて@145円手前まで巻き戻した)。
やはり いくら好きでも満腹のゴリラはバナナを食べない。|損切丸 (note.com) 2年間ずっとバナナ(ドル買円売)を食べ続けていたのでもう飽きてしまってリンゴ(円買い)を探すようになっている。ボラティリティー(変動率)の点では余り動かなくなったユーロやポンドとは対照的で相場のエネルギーは未だ充満している(若干動き過ぎ。苦笑)。
金利も同様で「利上げ」バナナ(欧米)にはもう飽いている
一方ずっとご飯を取り上げられて飢餓状態だった株式市場は食欲旺盛。 "ゴルディロックス" スープをゴクゴク飲んでいる。空腹が故に多少不味くても飲み干してしまい、こちらは満腹になるまでまだ時間がかかりそうだ(ビットコインなど暗号資産も大分お腹が空いている)。
ただ堅調なアメリカの雇用や景気は日銀の背中を押すことになる。気掛かりなのは国内政治の大混乱だが、いずれにしろ「利上げ」に向かう道筋は変わるまい。少なくともFRBやECBの「利下げ」よりは余程確率が高い。
この日米欧の ”逆向きベクトル” が今後も相場の軸になる
ドル円の「キャリートレード」も頑張れば頑張るほど日銀の「利上げ」を早めてしまうという矛盾。 令和でまたまた復活?「意地の悪い相場」ー 今度はドル円|損切丸 (note.com) の苦しみが続きそうだ。
今後も 世界は「過剰流動性」中毒Ⅲ ー それでも彷徨い続ける「お金」|損切丸 (note.com) であちこちで "ミニバブル" を作っては 相場が壊れる時は突前訪れる|損切丸 (note.com) を繰り返すだろう。だから「投資」やトレードをする立場としてはきめ細かなリスク管理が必要になる。
”利食い” と "含み益" は全然違う。ポジションを閉じて初めて「儲け」になる。そういう苦い思いをされた方も多いと思う。「ほったらかし」「ガチホ」もいいが「中長期的観点」を「損切り」しない理由にしてはいけない。
デフォルト(破産・倒産)に出くわせば最悪「お金」はゼロになるし、下落相場が止まるポイントなど存在しない。「下がったら買う」と言う方がいるが、下がっている時は売り要因が出ているはず。その要因を見極めずに中途半端に手を出せば大きな後悔が残るだけ。
今「利下げ」パーティーになっている株式市場もどこかでお腹がいっぱいになる可能性もある。バナナ(「利下げ」)を食べなくなったら「ドル円」同様要注意だ。「再利上げ」まで警戒する必要は無いが、最悪2024年一杯FRBもECBも動かない可能性も30%程残っている。
筆者が警戒しているのは 燻る「インフレ」の ”種火” 。|損切丸 (note.com) 再び「お金」の蛇口を開けてしまえば "再点火" も有り得る。
日米欧とも根本的に「人手不足」。商品価格や通貨安が是正されても "種火" (人件費)が残る限りいつでも燃え広がる。おそらくFRBもECBもその点を懸念している。「利下げ」が "リアル" になるには相当時間がかかる。
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