「Temporary Dollar Liquidity-Swap Lines」- FRB、新たに9中銀とドル・スワップライン設置。「流動性融通」を拡充。
FRBは新たに9カ国と「Temporary Dollar Liquidity-Swap Lines」を締結した。内容は以下の通り:
期間は6か月
600億ドル枠 = オーストラリア、シンがポール、スウェーデン、韓国、ブラジル、メキシコ
300億ドル枠 = デンマーク、ノルウェー、ニュージーランド
この枠は先日発表された6カ国との「90日物ドル資金供給オペ」の補完措置であり、ドル不足に陥った企業、金融機関への「流動性供給」が主旨。
「ドル資金供給オペ」は金融機関による入札方式で行われるため「資金使途」ははっきりしている。*おそらく9カ国とのスワップラインも同様の運用がなされるはずだ。
*この発表を受けて韓国ウォン、メキシコペソ、ブラジルレアルなど通貨安に見舞われた国々の通貨が買い戻されているようであるが、市場には誤解もあるようだ。ここで供与されたドルは自国通貨安を防止するためのドル売り介入に直接使うためのものではない。
更に技術的要素が2つ:
①通貨スワップはあくまで「市場実勢」をベース。「ドルプレミアム」は各国、あるいは企業、金融機関が上乗せコストとして払うことになる。
②銀行などがこのドルを受け取る場合、厳しい担保掛け目が課されるため市場で調達するよりも条件が悪くなる。
つまり銀行や企業は通貨スワップ市場で直接ドルが調達できるならば、このファシリティーは使わない方が良いことになる。あくまで担保の余裕はあるが取引相手が見つからない、というような場合に限られた「駆け込み寺」であり、**現状を劇的に改善する「打ち出の小槌」ではない。
**リーマンショックの時も同じドタバタがあったが、資金繰り担当としてはこのスワップラインはあまり有り難いものではなかった。なので「損切丸」もなるべく使わない方向に向かった。
いずれにしろ6か月後には調達したドルを返済しなければならず、特にスワップラインを使った国々にはチェックが入るだろう。
ECBの国債買取にFRBのスワップラインと、まるで2008年のプレイバックを見せられているようだが、市場は一時的に回復しているようだ。
例えばECBの措置を受けてイタリア、ギリシャの10年債金利は▼100BP以上劇的に低下したが(その後数十BP戻した)、注目すべきはCDS市場。イタリアはほぼ変わらず、ギリシャに至ってはむしろリスクプレミアムが拡大しており、金利だけ「介入」によって無理やり下がった印象が強い。
中央銀行の措置はどれもこれも時間を稼ぐための「対症療法」。各国とも本質的問題解決に取り組まない限り、通貨安やドル債務問題などからは逃れられない。アメリカやIMFなどが救済してしまってはまた同じ事の繰り返しになり、モラルハザードの問題もある。特にデフォルトを繰り返している国々にはより厳格な対応が取られるだろう。
いずれにしろマーケットが答えを出していくだろう。「ユーフォリア」は長続きしない。