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「弱いところを攻めろ!」 Ⅱ。ー リスクは「金利」から「信用」へ。

 「弱いところを攻めろ!」 ー 「資金繰り」が決め手の「信用格差」。|損切丸|note の続編。

 米国債の本格的売り相場に引っ張られるグローバル市場。これだけ「金利」がドタバタ動くのは久しぶりで何だか懐かしいが(苦笑)、実は「金利」の "中身" が変化してきている

 標題に添付したのはアメリカの「高金利債券」にあたる「ジャンク債」の金利推移だが、2022年に入り一気に@5%超に金利が急騰(価格が急落)。アメリカの住宅ローン金利が@6%を超えてきている事とも連関するが、これが示唆するところは「信用」リスクの上昇、平たく言えば「資金繰り」に詰まるところが出てきているということだ。社債やハイイールド債に投資している方は既にお気付きかと思う。

 「金利が上がった」

 今取り沙汰されているのがFRBやECBによる「利上げ」だが、実は「金利」には2つの大きな要因が作用している:

 ①物価リスク ≓ 景気、インフレ
 ②信用リスク → デフォルト(倒産・破綻)リスク

 今回は②信用リスクに焦点を当ててみよう。実は国債市場にも「金利」の中身が「物価」から「信用」に移行している兆候も見えてきている。

 実は "変化" が大きいのは「無制限・国債指し値買取オペ」で話題沸騰(苦笑)の日本・JGBである。CDS(クレジット・デリバティブ・スワップ、信用リスクを1 BP=0.01%の ”保険料” で示したもの)についてはその指標性にやや疑義があるものの、方向性や雰囲気は感じ取れるJGBの5年CDSはずっと@10~20BPで比較的おとなしく推移してきたが、ここにきて上限を破り@30BP台に乗せてきている。

 やはり日本の "懐具合" が知れてきているのだろう。財務省の管理する1,200兆円ものJGBとその半分近くを抱えている日銀+1%の金利上昇で年間▼10兆円近く「コスト」が上がる10年なら▼100兆円だ。「はいそうですか」と見逃せる軽いリスクではない

 デフォルト(倒産・破綻)リスクを図るのに大事な3要件は:

 ①赤字リスク →  ”債務超過” 
 ②資金繰りリスク
 ③人手不足リスク

 通常「倒産」「不渡り」と言うと  ①赤字が嵩んで何年もかかかって ”債務超過” に陥り潰れるのがほとんど。これは国家にも当てはまる。

 多くの日本人が「日本が破綻するなんてあり得ない」と思っているからこそ1,000兆円もの「円預金」を抱えている。確かに日本のデフォルトなど非現実的だ。それなら5年CDSを@10BPで引き受ければ、1兆円で保険料+50億円が丸々儲かる。今まではそういう雰囲気だったが、それが@30BPになるのは保険の引受け手の雰囲気が変わってきたと言うこと。

 「ひょっとしたら "保険金" を払わなければいけないかも」

 これが*企業発行の社債なら「信用リスク」の増大を反映して下落=金利上昇するはずが、例の「無制限・国債指し値買取オペ」で強制買い支え代わりに売られる「円」を見れば保険の引受け手が不安になるのも当然だ。

 例えば企業が自社の社債を買い支えている事が明らかになればどうか投資家は②資金繰りリスクを強く感じることになる。「金融政策」の名の元に堂々と行っているが、このオペがいかに非常識か、判ろうというもの。

 ちなみに日本ほどではないにしろ、あの「財政の優等生」ドイツのCDSもじわじわ上がって来ているドラギ首相(元・ECB総裁)の辞任で揺れるイタリアも@100BP以下で "安定" していた5年CDSが急騰「信用リスク」の上昇に見舞われている。

 この**「信用リスク」上昇の大きな背景がFRBによる「QT」(量的引締)。やはり9月から毎月▼950億ドル≓▼13兆円もの「お金」がマーケットから引上げられるインパクトは半端ではないECBもこれに続く

 **今回の「金融引締」とよく比較されるのがグリーンスパン議長による1994年2月からの「利上げ」。「メキシコ通貨危機」とその後のタイバーツ暴落に始まる「アジア通貨危機」の誘因になったが、それでも「利上げ」半年で+150BP今回はそれを上回るハイペースであり、加えて強烈な「量的緩和」からの「QT」。多くの "犠牲者" が出るのは不可避な情勢だ。

 既にベネズエラ、レバノン、トルコ、最近ならスリランカ、パキスタン強烈な「ドル高」という形で②資金繰りリスクが顕れた”防戦” を強いられたフィリピンや韓国が相次ぎ「利上げ」に動いているのも危機感の表れ

 意外なところで「デフォルト」が顕現化したのが暗号資産。資産価値そのものではなく、運営会社がバタバタ倒れたのは虚を突かれた。保険会社や投資会社もそうだが、いかに商品が良くても運営会社自体が潰れれば全て「紙屑」と化す。そういう「デフォルト」の基本を改めて思い起こさせた。

 そして「デフォルト」最大の「灰色のサイ」はやはり中国の不良債権だ。こちらは情報開示が十分でないだけにまさに ”ブラックボックス” 。政治リスクもあり、***社債金利の@20%~が高いのか安いのか、判断がつかない政府管理下にある「人民元」の為替レートも「適正値」が計りにくい

 ***本来信用リスクを取り扱う「クレジット市場」では「倒産価値」が売買の決め手社債価格が@50(e.g. @100が満期で元金満額償還)なら、「倒産」後50%以上の元金が回収されれば買い、それ以下なら売りである。

 「信用リスク」の面からは、マーケットで現状を消化せず金利が上がらないJGBはかえって不安②資金繰りリスクで突然死はないにしても、継続的な貿易赤字など①赤字リスクは悪化する一方だし、「円安」を利して国を再興しようとする時③人手不足リスクも大きな障害になる。

 主要通貨であるドルの「金融引締」時には「お金」のない順に「デフォルト」に襲われるのが定石。今回も例に漏れずその流れが始まっているが、「お金持ち」と思われてきた日本もかつてほど「資金繰り」に余裕はないマーケットを "敵視" するのではなく、そのメッセージを尊重して然るべき手を打っていけばまだ間に合う。日本人の1人として危機感を覚える。


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