” Rising Sun” 再び? ー 「当座預金」と「日本国債」の奇妙な均衡。
再び@30,000円乗せが見えてきた日経平均が好調だ。3年ほど前までは 「公的マネーが大株主 8割」 ー 日銀・GPIFによる「株買い占め」。なぜ今更 ”表沙汰” にするのか?|損切丸 (note.com) のせいで外国人投資家にソッポを向かれ、 やっぱり凄い国「アメリカ」。ー” Rising Sun” 再び?|損切丸 (note.com) とアメリカとの対比が叫ばれてきたが、ここへきて ”黒船” が戻って来ている。
一体何が起きているのか?
確かに日銀による40兆円余りのETF買いで「日銀が大株主」↓ の上場企業が増えたのも事実。加えてGPIF(年金運用機構)も国内株式を買い込んでおり、市場価格が著しく割高に歪んでいた。ファンドなどはこの辺りきちんと ”査定” していたので、「日本株投資」に向かわなかった。
だが2020年「コロナ危機」以降の3年間、大きな変化が2つ起きた:
これで日経平均が ”フェアバリュー” に届き ”黒船” が戻って来た。FRBの「利上げ」転換による米株の不調、ビットコイン等暗号資産や原油等の商品市場の低迷もあり、消去法的に「お金」が日本に向かった面も否めない。
ではなぜ「円高」にならないのか? これにも明確な理由がある。
↑ 標題に日本の「純金融資産」を添付したが、その内容はこう ↓
これでもアメリカに比べると「貧富の差」は大きくないのだが、全体の@3%に満たない「富裕層」が@20%以上の「お金」を動かしている。「円」の命運は彼らが握っていると言っても過言では無い。
彼らは「お金」を億円単位で保有している。共通しているのは今の「インフレ」が非常に居心地が悪い事。何しろ持ってる「お金」がドンドン陳腐化するので、株が好きな人は株に、不動産が好きな人は不動産に出来るだけ換えようとする。実際筆者の自宅周辺でも土地売買が活況だ。
だが株も土地も「売り手」が存在するわけで、結局「お金の押付け合い」が起き、これだけでは「円預金」は減らない。だが、「円」から「ドル」や「ユーロ」に換える人も出て来れば「円預金」は減り「円安」が続く事になる(「円」を受け取った海外筋が国内に残せば減らない)。
では「円預金」が減るには根本的に何が必要か。鍵は「貸出」だ。
事実「バブル」時代に銀行は「貸出」にノルマを張り競って貸し込んだ。結果、銀行は「お金」が足りなくなって顧客向け定期預金金利を@5~8%に引上げた。これが「バブル」の正体である。
「貸す先が無い」
今邦銀のどこに聞いてもこういう答えが返ってくる。本当か?
答えは「否」。
確かに民間の借入需要はそれ程強くない。溜め込んだ400兆円もの「剰余金」を元手にした「お金」があるので銀行からわざわざ借りる必要が無い。
だがここに強力な「借り手」が存在する。
1,200兆円も国債を発行している「国」である。
個人投資家や銀行から見れば「国債」も「貸出」の一部。ただ問題なのは「金利」が低すぎる事で、これが「バズーカ」が残した "禍根" である。
ここで最新の「日銀バランスシート」を見てみよう ↓
*「当座預金」と「日本国債」の奇妙な均衡にお気付きだろうか。仮に日銀が保有国債を500兆円売ってJGB金利が+1%上昇し、それを邦銀が買えば「バランスシート」は240兆円まで縮小する。つまり日銀の「YCC廃止」とか「利上げ」とかいうのは、その作業をどういう過程で行うか、ということに尽きる。これが「正常化」への道である。
円金利が「正常化」して十分「投資」に耐える水準になれば、日本の「お金持ち」は「円」を売るのを止める=「円安」が止まる。これは海外に出ているとされる「500兆円」の "里帰り" を意味し、マーケットに甚大な影響を及ぼす。我々日本人が思うよりその影響は大きく、だからファンドがあれほど遮二無二「円」を仕掛けてくる。
「円安」で過去の「円売り介入」で積上がった米国債等100兆円余りの「外貨準備」に利益が出る。だが、事は1,600兆円もの「純金融資産」に関わる問題。真の「国益」を考えるなら金融政策の正常化は待った無し。財務省の「省益」だけを優先していれば本当にこの国は滅んでしまう。
もっとも植田日銀がモタモタするようなら、個人レベルでは自らの資産を守るためにFXなり株なり不動産なり「お金」を動かす=「投資」しか無い。今後日本人としては「日銀の金融政策」を最重要事項として注視していく必要があろう。動向次第で "結果" は180度変わってしまう。