
もう一つの「アメリカ例外主義」
東欧の「停戦」交渉が何だか変な雲行きになってきた。両国とも継戦能力が著しく低下している中 ”リアリスト” (現実主義者)らしい交渉術とも言えるが「お金」に関してはあまりに露骨。自分達の "都合" で援助しておいて、経営者(大統領)が替わったから▼5,000億ドル(75兆円)返せは酷い。まるで悪徳金融屋の ”押し貸し” である
もっともこれは初めてではない。「昭和」世代の政治家の肩を持つつもりもないが、突然はしごを外されて煮え湯を飲まされてきたのは我が国も同じ。今流行の言葉で言えば「アメリカ例外主義」(Exceptionalism)となるが平たく言えば大国の横暴だ
端的な例が「鉱物資源を渡さないならスターリンクを止めるぞ!」という脅し。ドローンを中心とした戦略の中では確かに致命的だが、これが世界的にどういう結果をもたらすか
中国メーカーを「情報リスク」を盾に通信施設から閉め出した当事者のアメリカだが、これではやっていることが一緒。何かある度に「止めるぞ!」と脅してくる「国」の設備を基幹施設に採用するだろうか。実際カナダはスターリンクの使用を止めた政府事業があるそうだから、他国も同様に「アメリカ例外主義」に依存する「リスク」を認識するだろう。さすがにヤバいと感じた ”社長” が火消しに回っているが時既に遅し
これでは中露等の独裁国家と変らない。「香港治安維持法」(2020)をきっかけに「人」「モノ」が一気に逃げ出したが、同じようなことがGAFAに依存しすぎたインターネットやクラウド等に起こるだろう。今や生活に不可欠になった「インフラ」を突如「止めるぞ!」となる「リスク」は計り知れない。そういう意味でもう一つの「アメリカ例外主義」が広がりそうだ
ではこれをマーケット的視点で考えてみよう
世界中の「お金持ち」がなんだかんだ言って米国債や米株に投資してきたのは "Trust" (信頼)あってこそ。「主要通貨ドル」による覇権はそれによって成り立ってきたわけで、大袈裟でなく今回の「停戦協議」の経緯は世界の「お金」の流れを一変してしまう懸念がある。何をされるか判らない懸念で「独裁国家」から逃げ出してきた「お金」だが「アメリカ例外主義」≓「独裁国家」と定義づけられるなら同様のことが起きる
「どうせアメリカ抜きでは何もできまい」
そういう "驕り" も垣間見える。確かに短期的(現大統領在任中?)にはそうかもしれないが、少なくとも中長期的にはもう一つの「アメリカ例外主義」≓ ”アメリカ・ドル回避” に繋がる可能性がある。結果訪れるのは「強過ぎるドル」「高過ぎる米株価」「低過ぎる米国債金利」の是正だ。「将来価値」を見据えるマーケットではそういう兆候も見えてきた



”何年もかかって築いた信頼も崩れるのは一瞬”
これは「個人」でも「ビジネス」でもそうだが、たった一つの出来事であっという間に崩れてしまうのが "Trust" (信頼)。「国」も同様である。その点は日本がもっとも厳格だが、欧米流なら「お金」でなんとでもなると考える風潮が強い。だが基幹「インフラ」ともなれば話は別。時間をかけてもう一つの「アメリカ例外主義」≓ ”アメリカ・ドル回避” が進むだろう
一見関係ないように感じるが、「憧れのアメリカ」の終焉。ー「音楽」「映画」等のソフト産業の変遷と共に。|損切丸 続・「憧れのアメリカ」の終焉 ー 「アジアの時代」到来か?|損切丸 など、いわゆる* ”ソフト” の部分でももう一つの「アメリカ例外主義」が進んでいるように感じる
*かつて自動車や電気産業が ”憧れのアメリカ” を追いかけて技術発展を遂げてきたが、今やその面影もない。USスティール買収劇がその典型だが「国」が ”メンツ” だけに拘って阻止に動くとは…。「アメリカ例外主義」も落ちたものだ。確かに+40兆ドル超の時価総額を誇る株式市場は圧倒的だが、何だかマッチョなだけで中身がスカスカにも思えてくる
こんな中「新NISA」のほとんどがアメリカに向かっている現状はちょっと危うい。もう一つの「アメリカ例外主義」が露わになってきた現状では、もう少し考え直す余地があろう。 "Trust" (信頼)無き「投資」など有り得ない。少なくとも欧州の「お金持ち」は「お金」の配分を考え直して来るはず。「これが人気です」の勧誘に弱い日本人もよく考えたほうがいい
「アメリカ例外主義」が修正する可能性があるとすれば 「大借金」の後始末 - ”株帝国” アメリカと「関税」≓「消費増税」|損切丸 しかない。1980年代に実際にこの目で見たが、あの国は「株安」に本当に脆い。全てが ”逆噴射” してボロボロになるため、それ以降米政府もFRBも金融・財政政策はその ”パラノイア” (被害妄想)に突き動かされてきたといっても過言ではない。「リーマンショック」然り「コロナ危機」然り
傍若無人で言いたい放題の米大統領もご自分の所有する不動産価格が落ち始めれば考えを改めるだろうか。80歳近いご老人に "自制" がかかるかどうか、今後のマーケット動向の鍵を握っている。何とも困ったものである