見出し画像

「お金」の "力学" - 「減税」でも「金融緩和」でも「お金」をばらまけば「通貨」は売られる

 もの凄い勢いで「円安」に戻している。気が付けばあっという間に@155円台。マーケットの理解としては「103万円の壁」→178万円への引き上げ ≓「▼7兆円減税」≓「お金」のバラマキ → 「円売り」の "力学" が働く

 直近で「減税」で失敗した例としては短命に終わったイギリスのトラス政権が思い浮かぶ。筆者も何度か引き合いに出したが日本との大きな違い日本が ”オーバーデポ” (Over Depo、預金超過)なのに対しイギリスが ”オーバーローン” (Over Loan、借入超過)である点だ

 「実質金利」がマイナスという点で共通しているのがスイス ↓ だが、こちらは巨額のブラックマネー等々いわゆる ”闇金” が集まって「フラン高」が維持されている

 これに対し日本は「ホームバイアス」+「預金信仰」が「円安」を阻む。正直これ程の「マイナス金利」で@155円台で済んでいるのは "奇跡" と言っていい。トルコやアルゼンチンのように「ハイパーインフレ」に至らないのは戦後50年の蓄積でもある1,000兆円強の「預金」のお陰

 もう一つスイスとの違いで言えば、スイスの物価水準が世界一レベルで高いのに対し日本は相対的に下がっている事。ビッグマック指数2024 ↓ で見てもスイス(1位)が@1,200円に対し日本(45位)は@450円。こんな状況で現在の「円安」が成り立つのは「円キャリートレード」のせい

 「損切丸」の手元推計でもこの8年間で社会保険料は約2倍になっており、ほとんどの日本国民、特に働いている中間層の生活が苦しくなっているのは理解できる。だから「103万円の壁」引上げ→@178万円で▼7兆円減税を主張する政党に「票」が集まったのだろう。だがこれは1人当り▼7万円の給付金を「ばらまく」のと同じ。それでなくとも「マイナス金利」で溢れかえっている「円」を更にばらまけば「円売り」に繋がるというのが合理的思考だ

 不思議なのは*大手メディアを中心にやたら「減税」=「歳入」の減少ばかり書き綴るのに対し「歳出」の議論が全く無い事。本来なら▼7兆円の減収を補うために▼7兆円の支出を削るのが道理。家計でも企業財務でも同様だ

 * ”政府に近付き過ぎると取材力が落ちて結局新聞が売れなくなる” 
(かつて世界一新聞の種類が多いといわれるイギリスであった議論)
今回の衆院選、兵庫県知事選でメディアに向けられた批判は、霞ヶ関・永田町への "忖度" を止めてFACT(事実)を追え、というメッセージ。大事な取材源を失いたくないという怖れはわかるが、目先の視聴率・ヒット率ばかり追えば「信頼」を失うかつて「Rッキード事件」のスクープで政権をひっくり返した気概を想い出して欲しい

 これを阻んでいるのが「省益」霞ヶ関(官僚)は自らの「権限」の根源である「税収」を減らすのを極端に嫌がる「給付金」だ「補助金」だと▼10兆円、▼6兆円は簡単にばらまくのに...。だから「財政健全化至上主義」なるものが大ウソなのは明白。もっともこれは永田町(政治家)も同じ穴の狢。だから議論が一向に進まない

 「歳出」で最大なのは「社会保障費」、特に▼40兆円にも上る「医療費」。ネットではようやくこの事に焦点が当りつつあるが、問題は最大の受益者が「高齢者」=「大票田」である事。そしてこれを最大顧客としている*街医者≓「N本I師会」が立ちはだかる。結局「シルバーデモクラシー」なのだが、与党に2/3もの議席を与えている隙に一気に社会保険料を上げてきた。だがそれも限界に達し今回の選挙で「変化」が起きた

 *パンデミック時に「日本の病院は欧米より多い」という議論があったが、その中味はほとんど街医者。結局発熱患者の診療を拒否する病院が多く全く機能しなかった。おまけに危機対策の「補助金」でウハウハ。構図としては東京に15万件もある飲食店 ↓ と一緒で「ゼロゼロ融資」で生き延びたものの、政府の補助が外れて倒産が相次いでいる。病院然り。日本の問題はあらゆるものがオーバーサプライ(供給過剰)なこと。銀行もアパートもコンビニも全てそう。「早い!安い!うまい!」も考えものである

 自治体に ”悲鳴” を上げさせて「減税」を何としても止めようと画策しているようだが、その点は国税・地方税の分配率 ↓ を変えれば済む。首長も暗にその事を示唆しているが、権限を持つ霞ヶ関に抵抗できない

 歳出にメスが入らなければ「円安」を止める術は「金融引締」しかなくなるばらまいた「お金」を回収するには相当な「利上げ」+QT(量的引締)が必要になり景気にはマイナスだ。日経平均が@40,000円手前で何度も足踏みしているのはそういう不安が根底にあるからGDPの54%(2024・2Q)を占める個人消費の主役「中間層」をこうやってイジメ続ければ結局「シルバー」層も恩恵を受けられなくなる。中長期的に見れば「歳出改革」の方が景気にはプラスのはずだ

 1点、この「通貨安」の "力学" は当然アメリカにも作用する長期金利が上昇基調にある米国債は新大統領(返り咲き)による財政拡大を懸念してのことだが、8年前の記憶を辿ればあの ”御仁” 、実際の政策はとてもリアリスティック(現実的)。株価の急落を招くような金利上昇は絶対に避けてくる。そこを見越しての米国債の買い ≓ ”リアルマネー” の壁|損切丸 「60%の関税」とか「強力な軍隊」とかの発言はその後の交渉を有利に進めるための「ブラフ」。だから大幅な「ドル安」は想定し難い

 日本政府・日銀も「シルバーデモクラシー」に阿るのではなく、より合理的な政策運営をお願いしたい。「金融正常化」=@1.5~2.0%までの「利上げ」と「歳出改革」は必須止まらない「円安」など見たくもない

いいなと思ったら応援しよう!