「俺たちは "低金利" "過剰流動性" が好きなんだ!」
また ”デジャブ” である。ショート(売り=金利上昇)で突っ込んだ金利市場に2021年の "悪夢" を思い起こさせるような米国債の買い戻し。10年米国債は@1.70%割れと、Conundrum = ”謎” はまだ続く。
前稿.「利上げ」のアメリカ VS 「利下げ」の中国の "対決" ?。|損切丸|note で書いた歴史的低水準の株価「イールドスプレッド」。特に金利上昇の影響が顕著なナスダックの不調が極まっており、年初来で既に▼5%近く下げている。昨年の投資を牽引したビットコインも▼7.8%と不調だ。
「中国株推奨」は失敗に終わったが、ウォール街の推奨通り「利上げ」のなさそうな欧州株に「お金」が逃げている模様。タイトル通り、彼らは本当に "低金利" "過剰流動性" が大好き。いや、ここまで来ると「金利なんか上げたらどうなるかわかってんだろうな!」と米政府・FRBに ”実力行使” しているように見える。中間選挙を控え、確かに株価下落は避けたい。
だが パウエル議長の "心変わり" 。|損切丸|note はそもそも「インフレ」によるバイデン政権の支持率低下が原因。ここで*「俺たち」の "脅し" に屈して「利上げ」を躊躇すれば、今度は強烈な「インフレ」のしっぺ返しを喰らうだろう。実際原油などエネルギー価格が再度上昇しつつある。政権にとっては「究極の二択」で、 ”二兎を追う者は一兎をも得ず” 状態。
「インフレは一時的」
**2021年央までこう言い続けてきたパウエル議長を、筆者はそもそも「信用していない」。政権側も「利上げ」に反対していたはずで、CPI+7%に達する物価上昇は、いわば「意図的に作られたもの」。効果が6ヶ月後に現れる金融政策としては、はっきり言って ”Behind the Curve" 、失策だ。延焼が広がってから消火活動に入っても火事はなかなか鎮火できない。
"場当たり的対応" で現・米政権も今は「インフレ退治」でFRBに「利上げ」をけしかけているが、NYダウが30,000ドルを割り込んだり、金融危機が起きたりすればまた何を言い出すか分ったものではない。おそらく大統領選の中間選挙のことで頭の中は一杯だ。
そういう雰囲気を感じて米国債には度々買い戻しが入る。2年後、政策金利が2%まで上がることを示唆するFRBの "Dot Plot" ↓ を市場参加者が本当に信じているなら、10年米国債金利はとっくに2%を突破しているはず。筆者同様、米国債のトレーダーにもFRB不信があるのだろう。
ここまでは「FRB利上げ」というテーマでガンガンドルを買ってきたFX(為替市場)も、止まらない「インフレ」を見て ”Behind the Curve" という認識に変わってきたのかもしれない。本来の「実質金利」に立ち返ればドルは「超低金利」。(株とは反対で)FXは "低金利" が大嫌い。これまでのドル買いはいわば「褒め殺し」的な要素もあったので、その反動もある。
「ドル高」トレンドの転換は「通貨安」に苦しんできたブラジルやトルコには朗報になる可能性もある。実際「利上げ」を続けてきたブラジルではようやくインフレ沈静化の兆しも見えてきているし、金利も頭打ちだ。
一方「ドル安」を懸念しているのは「中国」。こちらは相変わらず米国向けの輸出で儲けているので、「ドル安」=「人民元高」は儲けの減少を意味する。それでなくても不良債権問題で苦しんでいるのに、せっかくの「利下げ」効果も台無し。この辺りはかつての日本の「円高不況」と同じ構図だ。
もっとも「ドル安」はアメリカ自身にとって毒と化す怖れもある。調整程度ならまだしも、ドル売りが本格化すれば海外投資家の「アメリカ売り」に飛び火し「ドル安・株安・米国債安」のトリプル安の "悪夢" が蘇る。筆者は現政権を「信用していない」ので、その可能性も十分あると踏んでいる。
今回は「 "利上げ" しても ”Behind the Curve" なら金利が下がることがある」という典型例。FXが目覚めてしまうと、思ったより大相場になる。マーケットから目が離せない状況が続く。