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J.S.バッハ:シャコンヌBWV1004 をチェンバロで弾く
無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌ、有名過ぎるほど有名曲ですが、チェンバロのために自分でアレンジしてコンサートで演奏しました。 同じ鍵盤楽器へのトランスクリプションとしては、ブゾーニやブラームス(左手のための)がよく知られています。 今回、チェンバロ用にアレンジする、というと「ピアノ編曲を参考にしたんですか?」と何人かから聞かれましたが、「まっっったく」参考になりませんでした(笑) 参考にしたのは、もちろんチェンバロ(G.レオンハルトやS.センぺ)、そして、ギターやリュートのアレンジ。 そう、「撥弦楽器」のトランスクリプションです。 シャコンヌ(楽譜ではチャッコーナ)といえば、もとを辿ればスペインが起源のギターをかき鳴らして激しく踊る、教会などでは禁じられた曲。 それを「ヴァイオリン」向けに作ったものを、今回は再度「撥弦楽器」で弾くものとして書き直したわけです。 ヴァイオリンでは音域やテクニック的な都合上、「オスティナートバス」が省かれたり、途中で音域を上げて弾く、などの箇所があります。 通奏低音で弾くことを念頭に、なるべくシャコンヌのオスティナートバスを再現しました。 また、無伴奏ヴァイオリンであることから、旋律のみでハーモニーがついていないところも多くあります。 そういうところにハーモニーを補う作業も楽しいものでした。 ところでこの曲、もとは二短調なのですが、G.レオンハルト(武久源造氏も)に倣ってト短調にしました。 チェンバロの最低音Gに合わせてのことかな?と思いますが、S.センぺ編曲は二短調なんですよね。 曲の一番最後は、最低音(この日のチェンバロの最低音はFでしたが)のGの響きを印象的に聴こえるようにしてみました。 つらつら書きましたが、いろんな人に聴いてもらえたらと思います。 「本邦初演」ということで、本番中も装飾やアルペジオを即興的に変えたりしながらの演奏なのでちょこちょこ事故ってますが、これをブラッシュアップして、またどこかで弾けたらいいなと思います。
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吉嶺史晴 「Caravan~アルトリコーダーとピアノのための」演奏:グラ☆コロール
リコーダー奏者財前奈緒子さんとお互いの生徒さんを集めて発表会を開催して、一番最後に講師演奏として演奏したものをYoutubeにアップしました。 (グラ☆コロールというのは私と財前さんとのユニット名です) 鹿児島在住のリコーダー奏者吉嶺史晴さんが作曲された作品で、ふだん古~い音楽ばっかりやっている私には難しかったですがとてもかっこいい曲で、本番は楽しかったです。 吉嶺さんのYoutubeチャンネルで楽譜も販売されています。 https://www.youtube.com/user/nangokurecords3/featured たまにピアノも楽しいもんですね(笑)
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J-H ダングルベール : シャンボニエール氏のトンボー
昨年10月の演奏会の映像です。 この演奏会はフランスバロックばかりのプログラムでしたので、ソロ曲はダングルベールの作品を選びました。 ジャン・アンリ・ダングルベール(1629-1691)はフランスの作曲家で、フランソワ・クープランやドイツのヨハン・セバスティアン・バッハよりも更に前の時代です。 唯一出版されたのが『クラヴサン曲集 Pièces de clavecin』で、今回弾いた「シャンボニエール氏のトンボー」を含む組曲や、リュリの作品の編曲もあります。 何曲か弾いたことはあるものの、人前で演奏するのは初めてでした。 チェンバロを始めてまず戸惑ったもの、バロックピッチ(415Hz)、そして「プチッ」という独特のタッチ感。 ピアノの「叩く」動作に長年慣れてきた身には「指ではじく」感覚がずっと馴染めませんでした。 ピアノで楽々弾けていたバッハの平均律やフランス組曲、イタリア協奏曲などを弾くと指が転ぶ・・・・ ようやくそれらに慣れてきた頃、次は「ゆったりした曲」に苦心するようになりました。 ほぼ2分音符や4分音符のみの、見た目「簡単な楽譜」。なのに楽譜どおりに弾いても全くサマにならない。。。 指の上げ下ろしの速度や、装飾音の入れるタイミング、多声部の僅かな音のずらし方などで全く和音の色が変わります。加えてチェンバロは1台ずつが違うので、家と先生のお宅でもまた倍音の響きなど違ってその都度、弾き方も変えていかないといけません。 とにかく「美しい響き」を求めてじっくり自分の出す音に耳を傾ける作業(練習)をしていて、ある日「この感覚って、大学の卒業試験でドビュッシーを練習していたときに似ているな」と気付きました。 ドビュッシーの「映像第1集」、その1曲目「水の反映」で「音の滲みと煌めき」をいかに表現しようか、と苦心したことを思い出したのです。 ずっと「苦手意識」があったフランスバロックですが、近代にもそのエッセンスは受け継がれているのですね。「国民性」というものかもしれません。
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テレマン 新パリカルテット第6番 ホ短調 TWV43:e4
ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681年-1767年)はドイツの盛期バロックを代表する作曲家です。 現代ではドイツのバロックの作曲家、といえばヨハン・セバスティアン・バッハがまず思い浮かびますが、当時名声があったのは各地の宮廷楽長や教会楽長を務めるなど広く活躍していたテレマンのほうでした。 ちなみに、バッハとは終生親交が深く、バッハの息子カール・フィリップ・エマニエル・バッハの名付け親にもなっています。 1737年(56才)から8カ月、フランス・パリに滞在中に書かれたのが、この「新パリ四重奏曲」です。 「四重奏曲」と聞いて、皆さんは「どんな楽器で演奏するんだろう?」と思われるでしょうか? 古典派以降の作品と違って、バロックの曲には明確に楽器が指定されていないことがよくあります。(「○○または△△のための」というように) 今回の演奏では「フラウトトラヴェルソ、バロックヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、テオルボ、チェンバロ」の「5つの楽器」で演奏しています。 ・・・・・・ん?5つ?四重奏曲なのに? これはバロック音楽にかかせない「通奏低音」というパートに関係があります。 記譜は低音とそれに付随する数字(現代のコードネームのようなもの)のみで、奏者は書かれた低音とそれに合った和声を即興で演奏します。 今回はテオルボ(大型のリュート)とチェンバロがそのパートを受け持っています。 2人で同じ楽譜を見て、それぞれが即興で弾く・・・・なかなかスリリングで、かつ楽しい作業です。「即興」といってもあらかじめ打ち合わせはします。「この音は入れよう(抜こう)か」「ここは上の旋律とハモリを入れるとキレイかも」など。 しかし「即興」なので、結局はその場でお互いいろいろお約束じゃないことをするのが常ですが(笑)。 さて、テレマンは「もっともたくさんの曲を作った」としてギネス認定されている作曲家です。 商才にも長けていたので、自分の曲を一般のアマチュア向けにどんどん出版しました。ということで、そういった「アマチュア向き」の曲はわりと演奏しやすく、でもあまり深みもない・・・・なことが多いです。 しかし、この新パリ四重奏曲は細部に至るまで非常に緻密に書かれており、テレマンの代表作の一つと言えるのではないでしょうか。 テクニックもかなり高度なものを要求されます。 加えて、古楽器演奏となると4パート分の奏者を揃えるということ自体がまず困難です。 私自身ずっと演奏したかった曲なのですが、大阪南部で活動するアマチュアグループ「アンサンブルシュシュ」で今回やっと演奏が実現しました! コロナ禍の中の演奏会となり、お客さまにも感染防止のご協力をいただきながらの開催となりましたが「初めて古楽器の音を生で聴いて感激しました」「心が穏やかになる音ですね」とお声がけいただきました。 こんな時代だからこそ、音楽の力をあらためて実感しています。
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