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枯れマツを薪に利用する
年末に池町さんに山遊びに連れて行ってもらったので、帰りに薪ストーブの燃料を拾ってきた。
立ち枯れたマツの下に、枝分かれ部分が何本も落ちているのを見つけたのである。
アカマツはパイオニア植物だ。伐採跡地や崩落地など、荒れ地ができたときにソッコーで進出してくる植物種のことをいう。
いちはやく日当たりのいい場所を得るために驚くようなスピードで成長したり、荒れ地という目立ちやすい場所でも食害されにくいよう猛烈なトゲがあったり、昆虫に食われにくくまた耐候性を高めるために樹脂が多かったり、一気に繁茂して他の植物が嫌う忌避物質を出したりと、エグいくらいエッジの立った戦略をとっている植物が多い。
熱帯林みたいに複雑系すぎて理解しにくい植物群落と比べて、シロウトにも分かりやすくキャラが立っていて戦国大名の国取り合戦みたいに分かりやすいので好きである。
かれらの生態を知ると、その植物種のニッチがよくわかるし、その土地に直近の撹乱が起きたタイミングなどの来歴をかなり正確に推定できたりする。
このアカマツ、幹の上部はすでに失われている。この場所が最後に伐採されて40-50年くらいたつのだろう。ひらけた山林に最初の20年くらいでアカマツが育ったが、そのあと落葉樹に覆われて20-30年くらいたってアカマツは破れ去ったという林だ。
幹自体はもうボソボソに枯れ果てていて、蹴飛ばしたらバッタリ倒れそうなくらいだ。そんなマツの細い枝分かれ部だけがなぜこうして地面に落ちているのか。
拾い上げてみたら、この部分だけ緻密で非常に重いのである。木の枝というよりほぼ樹脂の塊なのだ。枝分かれの根本は、その先に枝葉をひろびろと進展するためにも強度が必要なので強度を高めるために樹脂を集めるのだろう。だから枯れても菌類に腐食されず、地面に落ちてすらもこんなしっかりした形を保っているのだ。
これはひょっとしてと思って家に持ち帰ってストーブで焚いてみると、案の定小さいのにプラスチックの塊を燃やすのと同じくらいのすさまじい火力である。ナラの薪の1/3の量で同じくらいの熱量がありそうだ。
今後山で立ち枯れマツを見つけたら積極的に拾い集め、超優良焚き付けとしてだいじに使うことにしよう。