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小学生になって少し経って、母親が「ハリーポッター」を読み聞かせてくれるようになった。ほどなくして映像でホグワーツの世界に浸り、もう少ししてから読み聞かせを卒業した頃には、僕はすっかり物語の虜だったように思える。 小説を貪るように読むようになったのこそここ数年かもしれないが、ハリーポッターを始めあらゆる漫画を通して「物語」に触れて、「物語」を頼りに生きてきた人生だったようだ。そんな記憶へのアクセスから、令和元年の年の瀬は「そもそも『物語』とは何なのか」を考えるきっかけとな
【18:27】薄暗さを帯び始めた夏の夕暮れに、ぼくは露天風呂に浸かっている。 うだるような暑さがビルに反射し輪をかけて嫌気が増す都会。耳をつんざくセミの声が溢れる郊外。室内は室内で、殺人的な温度の低さの冷房が体をうざったく吹き付ける。そんな都会の夏からエスケープするように、今は田舎の露天風呂に浸かっている。路面電車が走るような面倒見がいい田舎の温泉。 露天風呂には、風呂が合計3つある。露天風呂の中心部には、グルメ特集が流れるテレビ付きの大きな浴槽。一つは、3つ並んだ五右