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女将流★気持ちよい褒めコミュニケーション
人は褒められると嬉しいもの。「よいコミュニケーション」の一つは、「人を気持ちよく褒めること」だと私は思っています。今回は褒めて人との距離を縮める「褒めコミュニケーション」について深く考えてみました。接客中にお客様を褒める場面はたくさんありますし、接客業に限らず、どんなコミュニケーションにも役立つ内容ですので、参考になれば幸いです。
その褒め言葉、あなたの価値観を押し付けていませんか?
例えば、「痩せました?」と言われて、あなたは嬉しいでしょうか?言った人は褒めているつもりかもしれませんが、言われた側は不快に感じる可能性があります。見た目には本当にさまざまな価値観が存在します。必ずしも「痩せている=良いこと」とは限りません。また、「前は太っていたってこと?」「病気で痩せたわけじゃないのに」と、もやもやした感情を抱く場合もあります。自分の美醜の価値観を基準に褒めるのは危険です。気心の知れた仲でない限り、言葉を発する前に一度立ち止まって考えてみましょう。
外見を褒めることはセクハラになりうる
異性に対して見た目を褒めるのは、セクハラと受け取られるリスクがあります。これは「時代のせい」ではなく、私が実際に感じているリアルな感覚です。私は異性から「綺麗ですね」と言われても、嬉しいどころか気持ち悪く感じる場合があります。大人が外見ばかり気にしているのを見ると、興ざめしてしまうことも。見た目はすぐに変えられるものではありません。ルッキズムが問題視される現代だからこそ、外見を褒める際には注意が必要です。お客様を不快にさせない褒め方を心得ておきましょう。
その褒め言葉、誰かを下げていませんか?
「肌が綺麗ですね」「背が高くてかっこいいですね」などは典型的な褒め言葉ですが、その言葉が他の誰かを傷つけている可能性はありませんか?例えば、女性2人組の片方だけを褒めるケースは最悪です(笑)。言われなかった人の気持ちを考えたことがありますか?(かくいう私も傷ついた経験があるので大声で言いたいです。笑)褒める行為は比較を生みがち。外見に限らず、どんな褒め言葉にも同様のリスクがあります。褒め言葉をかける前に、「褒める対象の近くにいる人」がどんな気持ちになるか考える余裕を持てたら素敵ですね。どうしても褒めたいのであれば、1対1の場を意識しましょう。
では、見た目について何を褒めたらいいの?
私は「他の人よりもこだわっていそうなポイントやセンス」を褒めるようにしています。センスは努力で磨くものなので、褒められたら嬉しいものです。例えば、私は毎回違うおしゃれなスーツを着て来店されるお客様に「今日のスーツ、お色味が素敵ですね」と声をかけます。すると、無愛想だったお客様がにこやかになり、会話が弾むことがあります。海外では”I like your outfit.”と見知らぬ人に服装を褒めることがありますが、私もとても気持ちの良いコミュニケーションだと感じます。ぜひ、その人がこだわっていそうなポイントを探してみましょう。
「おめでとう」にプラスして褒める
中身の褒め方については「結果ではなく努力を褒めるべし」とよく言われます。これは人材育成や育児の鉄板ですが、接客においても同じです。例えば、こんなシーン…
「息子が大学に合格したお祝いで来店しました」とおっしゃるお客様の場合。
良い例は「おめでとうございます!息子さん、たくさんお勉強頑張られたんですね!お父様も息子さんの努力が実って、さぞ嬉しいでしょうね〜」といった具合です。
一方、「おめでとうございます!◯◯大学に受かったなんてすごいですね!」は注意が必要です。結果やステータスを褒めるのは表面的で、「◯◯大学だからすごい」という価値観が他のお客様を不快にさせる可能性があります。学歴コンプレックスをお持ちの方だったらどうでしょうか?ぜひ努力やプロセスを評価してみてください。
褒められたら褒め返す
私は顧客情報をデータベースに記録し、来店されるリピーターのお客様の情報を頭に入れてから接客しています。そのため、「よくそんなこと覚えていますね!すごいですね!」と褒めていただくことがよくあります。そんな時は、「えへへ、記憶力がいいんです」と調子に乗る代わりに(笑)、褒め返すチャンスです。
「前回の◯◯様が◯◯の話をされていた時の笑顔が素敵だったので覚えていたんです〜」と返すと、お客様が笑顔になることが多いです。嘘をつく必要はありません。目の前の方が褒めてくれるのは、人の良いところを見つける素敵な感性を持っているからです。そんな人にも良い気持ちになってもらいたいですね。
総論
なにも無理にお客様を褒める必要はありません。あなたの感性で「素敵だな」と思ったことを素直に伝えると、多くの場合、気持ちの良いコミュニケーションになります。
ぜひどんどんお客様を褒めて、「気持ちの良い体験だった」と思ってもらえる機会を増やしていきましょう!
以上、「女将流★褒めコミュニケーション」でした。