我々はどこから来たのか?我々は何者か?我々はどこへ行くのか?《深読み 千と千尋の神隠し&タイタニック》vol.36
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2019年12月XX日
途方もない考えに取り憑かれた男の夢の中
第一階層『千と千尋の神隠し』
国道21号の分かれ道
不沈のモリー・ブラウン(マーガレット・ブラウン)は、私財を投じて社会活動をしていた…
女性が安心して働ける環境づくりや、シングルマザーになってしまった女性の受け皿づくりなど、女性の地位向上や社会進出を助けるために…
もしかしたらローズは、ニューヨークでまずモリー・ブラウンと連絡を取り、何らかの世話になったのかもしれない…
そうでもなければ、住所不定無職どころか、この世界のどこにも存在を証明する記録がない「ローズ・ドーソン」という人間は、生きていけなかったはず…
だからローズは出産後、すがる思いで彼女に我が子を託した…
我が子をルースの魔の手から守るには、そうするしかなかったから…
そしてモリー・ブラウンは、ローズ自身の身も守るため、「荒野」へ避難させた…
「荒野」とは、もちろん「HOLLYWOOD(ハリウッド)」のこと…
1910年代初頭、まだ誕生間もないハリウッドは、まさに荒野の中にあった…
アメリカ西部有数の大富豪だったモリー・ブラウンは、カリフォルニア州の荒野に誕生したハリウッドにも人脈があった…
彼女はハリウッドに出資し、女優として映画にも出演している…
だからローズを安全に匿うことが出来る場所も用意できたはず…
まさに『ヨハネの黙示録』のように…
女は荒野へ逃げて行った。そこには、彼女が千二百六十日のあいだ養われるように、神の用意された場所があった。
その『ヨハネの黙示録』は、こう続く…
さて、天では戦いが起った。ミカエルとその御使たちとが、龍と戦ったのである。龍もその使たちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らのおる所がなくなった。
モリー・ブラウンと彼女の女性支援団体がローズの産んだ赤ん坊を匿っていることを知ったルースは、ローズと婚約していたキャルの力を借り、あらゆる手段を使って取り戻そうとした…
「天」とは摩天楼ニューヨーク…
しかしモリーたちはローズの赤ん坊を守り抜き、ルースは戦いに敗れる…
そして『ヨハネの黙示録』は、こう続く…
この巨大な龍、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経たへびは、地に投げ落され、その使たちも、もろともに投げ落された。
その時わたしは、大きな声が天でこう言うのを聞いた。
「今や、われらの神の救と力と国と、神のキリストの権威とは、現れた。われらの兄弟らを訴える者、夜昼われらの神のみまえで彼らを訴える者は、投げ落された。兄弟たちは、小羊の血と彼らのあかしの言葉とによって、彼にうち勝ち、死に至るまでもそのいのちを惜しまなかった。それゆえに、天とその中に住む者たちよ、大いに喜べ。しかし、地と海よ、おまえたちはわざわいである。悪魔が、自分の時が短いのを知り、激しい怒りをもって、おまえたちのところに下ってきたからである」
龍は、自分が地上に投げ落されたと知ると、男子を産んだ女を追いかけた。
赤ん坊の奪還を諦めたルースは、ローズを追って荒野へ向かった…
戦いの舞台は「天」から「地と海」へ…
摩天楼ニューヨークから、西海岸の HOLLYWOOD LAND へ…
ここから実に興味深い描写が連続する…
女は自分の場所である荒野に飛んで行くために、大きなワシの二つの翼を与えられた。そしてそこでヘビからのがれて、一年、二年、また、半年の間、養われることになっていた。
ヘビは女の後に水を川のように、口から吐き出して、女をおし流そうとした。しかし、地は女を助けた。すなわち、地はその口を開いて、龍が口から吐き出した川を飲みほした。
龍は、女に対して怒りを発し、女の残りの子ら、すなわち、神の戒めを守り、イエスのあかしを持っている者たちに対して、戦いをいどむために、出て行った。そして、海の砂の上に立った。
このためにジェームズ・キャメロンは、ローズの写真をたくさん用意した…
あの写真一枚一枚には、ちゃんと意味がある…
その通りだレウコノエ…
「荒野」へ向かう女に与えられたものは「大きな鷲の2つの翼」…
これをジェームズ・キャメロンは、ハリウッドへ向かうローズに与えられた飛行機「Biplane(複葉機)」に置き換えた…
そしてヘビ(龍)は大量の水を吐き、女を溺死させようとした…
しかし「地」が川の水を吸い上げ、女の命を救う…
だからローズは「象」に乗っていた…
怒り狂った赤い龍は、女と赤ん坊を匿う者たちに、激しい敵対心を燃やした…
そして、最後の戦いを挑むため、「海の砂の上に立った」という…
その写真が、これ…
海の砂の上に立つ鹿毛(赤毛)の馬…
そして『ヨハネの黙示録』は、こう続く…
わたしはまた、一匹の獣が海から上って来るのを見た。それには角が十本、頭が七つあり、それらの角には十の冠があって、頭には神を汚す名がついていた。わたしの見たこの獣はヒョウに似ており、その足はクマの足のようで、その口は獅子の口のようであった。龍は自分の力と位と大いなる権威とを、この獣に与えた。その頭の一つが、死ぬほどの傷を受けたが、その致命的な傷もなおってしまった。そこで、全地の人々は驚きおそれて、その獣に従い、また、龍がその権威を獣に与えたので、人々は龍を拝み、さらに、その獣を拝んで言った、「だれが、この獣に匹敵し得ようか。だれが、これと戦うことができようか」
海から上がって来た巨大な怪物…
角が十本あって、頭が七つあって、角には十の冠があった…
そしてヒョウのスピード、クマの破壊力、ライオンの咆哮を併せ持っていた…
これらの特徴は、まさに Santa Monica Pier(サンタモニカ埠頭)にある桟橋遊園地 Looff Pleasure のローラーコースターのよう…
6つの急回転、24回の急降下で、当時、世界最大級のスリルと謳われた Blue Streak Racer(青い稲妻レーサー)…
そして巨大海獣には、もう1つの重要な特徴があった…
それは、予め定められていた活動期間…
この獣には、また、大言を吐き汚しごとを語る口が与えられ、四十二か月のあいだ活動する権威が与えられた。そこで、彼は口を開いて神を汚し、神の御名と、その幕屋、すなわち、天に住む者たちとを汚した。
実はあの巨大ローラーコースターにも、予め「活動期間」が定められていた…
最初はサンディエゴに作られ、解体されてサンタモニカ桟橋へ運ばれて再度組み立てられ、しばらくしてからまた別の場所に移設されている…
新しくオープンする遊園地の目玉アトラクションとして、引く手あまただったというわけだ…
サンタモニカでの活動期間は1917年から1923年の間…
その間の休園日や点検日を差し引くと、実働日数は42ヶ月くらいになるという…
そして、こんなことも語られる…
耳のある者は、聞くがよい。虜になるべき者は、虜になっていく。剣で殺す者は、自らも剣で殺されねばならない。ここに、聖徒たちの忍耐と信仰とがある。
剣といえば sword…
ローズの写真には、釣り竿片手に swordfish(カジキ)と記念撮影しているものもあった…
剣で殺す者(カジキ)は、自らも剣(釣り竿)で殺されねばならない…
そして、あの巨大海獣には、奇妙な「像」があった…
まるで生きている人間のように喋ることができる像が…
それから、その獣の像に息を吹き込んで、その獣の像が物を言うことさえできるようにし、また、その獣の像を拝まない者をみな殺させた。
サンタモニカ桟橋の遊園地にも「物を言うこと」が出来る人形がいた…
そして『ヨハネの黙示録』は、こう続く…
この書の中で、ある意味、最も有名な部分…
また、小さき者にも、大いなる者にも、富める者にも、貧しき者にも、自由人にも、奴隷にも、すべての人々に、その右の手あるいは額に刻印を押させ、この刻印のない者はみな、物を買うことも売ることもできないようにした。
すべての者の手や額に押される刻印…
アメリカの遊園地は、それがなければ出入りできない…
そしてこのフレーズ…
この刻印は、その獣の名、または、その名の数字のことである。
ここに、知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字を解くがよい。その数字とは、人間をさすものである。そして、その数字は六百六十六である。
獣の数字666…
これを読み解くには、知恵が必要だという…
この「獣の数字」を再現するために、ジェームズ・キャメロンは「サンタモニカ桟橋の遊園地」を映画に登場させた…
タイタニック沈没事故の起きた1912年当時は、まだ存在していなかったにも関わらず…
すべては、タイタニックとローズの物語が、『ヨハネの黙示録』に基づいていることを暗示させるため…
サンタモニカ桟橋の遊園地は、海に向かって走る幹線道路の終着地、道路が桟橋につながる地点に作られた…
ジェームズ・キャメロンは、この道路に着目したのだ…
その道路は、アメリカ人のみならず、世界中の多くの人が知っている道路…
実際に行ったことはなくても、この歌で名前とコースは知られている…
その道路の名は「Route 66」…
サンタモニカ桟橋の遊園地は、その終点に位置する…
このアイデアは、ジェームズ・キャメロンの出世作『TERMINATOR(ターミネーター)』と全く同じ…
未来を知る男の子供を身籠ったサラ・コナーが走る道路はルート66…
なぜなら『ターミネーター』も『ヨハネの黙示録』に基づいた物語だから…
最初にこのアイデアを思いついたのは、ジェームズ・キャメロンではなく、ノーベル文学賞作家ジョン・スタインベックだがな…
スタインベックの代表作『The Grapes of Wrath(怒りの葡萄)』では「獣の数字666」が「ルート66」に重ねられている…
そもそもタイトルも『ヨハネの黙示録』の中の言葉だし、ストーリーも『ヨハネの黙示録』をそのまま1930年代のアメリカ西部に置き換えたもの…
ローズは母ルースに打ち勝った…
そして、モリー・ブラウンに預けていた我が子を引き取り、共に暮らし始めた…
そしてローズは、ハリウッドで映画女優になる…
おそらくローズに映画出演を勧めたのはモリー・ブラウン…
アメリカ東部で虐げられていたユダヤ系移民や非プロテスタントの移民が移住して興した新興産業ハリウッドは、ワケありの人々が多く働いていた…
普通の職場では働けないローズのような「未婚のシングルマザー」でも、ハリウッドでは不問にしてくれる…
俳優や監督の不倫や隠し子も珍しいことではなく、それを揉み消すノウハウもあったからだ…
そしてローズはカルバート氏と出会い、結婚する…
ハリウッドの事情をよく知るカルバート氏は、ローズの過去を尋ねることはせず、父親不明の子も自分の息子として受け入れた…
そして少年は大人になり、エリザベスの父となった…
しかしエリザベスは三十後半になっても良縁がなく、このままいけばジャックの血が途絶えてしまう…
ジャック・ドーソンという人間がこの世に存在したことを証明する唯一の記録(レコード)であるDNAが…
だからローズは名乗り出て、これまで隠し通して来た過去を明らかにした…
ジャックとの約束「生き延びて、子供を産んで子孫を残し、長生きして、最後は暖かいベッドで死ぬこと」を成就させるため、あの絵のモデルだと名乗り出てタイタニック探査船に乗り込み、かつて船上でロマンスを育んだ自分とジャックのように、孫娘エリザベスとトレジャーハンターの間に愛が芽生えるよう行動した…
これが映画『タイタニック』に隠された真の物語だ…
まさに A Promise Kept(守られた約束)…
完璧な仕事ね、ジェームズ・キャメロン…
James Cameron
同じ「絵描き」の映画人として、宮崎駿も思うところがあったのだろう…
ジェームズ・キャメロンが『タイタニック』でやったことに、刺激を受けないはずがない…
Hayao Miyazaki
だから『千と千尋の神隠し』は『タイタニック』とよく似ていた…
巷に流布されている制作秘話では、鈴木プロデューサーが当時大ヒットしていた『踊る大捜査線 THE MOVIE』を遅れて観て、こういう映画を作らなければと宮崎駿監督に進言したと言われているけど、それはおそらく嘘…
鈴木Pと宮崎駿監督が見たのは『タイタニック』だったはず…
間違いないだろう…
『千と千尋の神隠し』のタイトル画の場面、分かれ道の道路標識にある「3つの21」の1つは、映画『タイタニック』で見事に再現されていた『ヨハネの黙示録』第21章の「21」だ…
道路標識の中に書かれた3つの21…
最後は「中岡㉑」…
ここにも知恵が必要ね(笑)
つづく
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