蛙
本日は休み。
午後テ戸外に出ると、湿りを帯びた植え込みの中に、何処から迷いこんだのか?
小さなガマガエルを発見。
暫し観察。
子供の頃、夏休みの大半は昆虫採集と ザリガリ釣りに費やしたが、餌にする多くの蛙達を殺生した。
竹竿に糸を付け、様々な『餌』で試してみたが、最も食い付きの良かったのが蛙の『皮』であった。
捕えた殿様蛙を地面に叩きつけ、気を失ったところで足の水かきから爪を入れると、子供が万歳をするが如く、綺麗に皮を剥ぐ事が出来る。
近所に二歳年上の大柄な腕っぷしの強い女が居て、喧嘩になると 決まってその怪力で捩じ伏せられるのが常であったが、ある日田圃で出会い、近よりしなに裸の蛙を投げ付けてやったら見事顔に命中し、普段泣く事など決して無いこの女が、大声で泣き叫ぶのを不思議な感覚で眺めていたのを想い出す。
釣竿を放置して置くと翌朝『皮』は干物になるのだが、再度池に投げ入れると水分を含み元に戻るので、何日に渡っても使う事が出来る。
イタリアにもフンギポルチーニと云う香りの強く美味なる茸があるが、これにもセッキ(乾燥の意)があり、これと似ている。
そうやって多くの蛙の服を脱がし、ザリガリ達を誘惑した。
大きく成ってから、その事を深く懺悔したが、本来子供と云うのは残酷な生き物に相違ないのである。
隣家に住む五歳年上の兄ちゃんの家に行くと、夕刻、たくさんの『獲物』が鍋の中で茹でられて居たのには驚いたが、ザリガリは勿論、蛙まで食す文化が西欧に有るのを知ったのは、自分がもっと大人になってからの事である。
話しを戻すとテラスのガマガエルは階下まで運ばれ、放たれた。
蛙は何事も無かったかの様に目をパチパチさせ、二度程大きく跳ね、チラと一瞥をくれた後、
ゆっくりと
茂みの中に消えて行った。
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