E154: 平成元年の日の丸弁当
【連続投稿 71日目】
「わかったの?」
「………。」
「だから、わかったのって聞いてるの!」
「………。」
私の母は、(本人曰く)とても素直に育ったらしい。
親に反抗するなど、もってのほかで、
そういう母からすると、
納得しないことがあると、しっかり不満を言う私が
まったく理解できなかったらしい。
最終的に「わかったの?」と言われ
納得してないから
こちらは全く返事をしなくなってしまう。
まぁ、なんともめんどくさい子供であった…。
そんな親子の冷戦状態が続いた次の日、
黙って弁当を受け取る。
なんだかいつもより重い弁当だった。
こちらもイライラしているから、
ありがとうも言わずにムスッと受け取る。
まぁ、なんとも困った子供であった…。
さて昼休み、
そんなこともすっかり忘れて
弁当を開けた、次の瞬間
目に飛び込んできたのは
こーれでもかああああああ!!
というくらいに
ぎっちぎちに詰め込まれたご飯と、
でーーん、と真ん中に鎮座した梅干し
そう、
見事な日の丸弁当
私は、今開けたばかりの弁当箱を慌てて閉めた。
幸い、友達には見られなかった。
「え?源太、お前、もう食ったの?」
「う、うんうんうん! 今日な、早弁したからすぐ終わった」
「え?お前、早弁なんかしてた?」
「う、うんうん、してた、してた。この凄技がわからへんかったか?」
何が凄技だよ 笑
私は、後ずさりしながら食堂へ走っていく。
母は言う。
何かあると、「もう弁当抜きだから!」と言う親がいるけど、あれは私、違うと思うな。どんなことがあっても、親の「仕事」を放棄してはいけない。ただ、親だって人間だから、息子の言動に腹を立てているという事は示しておかなければならない。というわけで、【当たり前のように、いつものお弁当を作ってもらえると思うな!】という親の意思を示させていただきました。
……私の完敗である。
あの頃、なんであんなにイライラしてたんだろう?