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主婦病/森美樹【読書メモ】

個人的備忘録を兼ねた読書メモです。

<読もうと思ったきっかけ>
新潮社の「女による女のためのR-18文学賞」について調べていたときに知った作家さんで、HPで見かけた著書の装丁とあらすじに興味を惹かれたから。
森美樹さんは第12回読者賞受賞。

<読んだ感想>
帰省に持って行ったので、新幹線と実家のソファで読了したのだが、ずっっっと夢中で読んだ。
サクサク読めたのは、短編集だったことと、1編目の「眠る無花果」が面白かったのが大きい。
主人公は小学生で、母を亡くすところから始まる。その母と、自宅で整体院を営む父と、そのお客さん。家の中の、潔癖で美しく、まめで几帳面だった母の名残。父とふたりでつくる不器用な食卓。母は自殺ではないか、という噂。母はなぜ亡くなったのか、明確な答えがないままなんとなく察していく主人公と、ずっと背中合わせにあるざわざわした不穏な空気。
途中で出てくる金髪の男がぶきみで、出番が少ないのになんだか妖しく、なぜ出てきたのかと思っていたくらいだったが、すべての編に出てきた。かなり出番が多い話もある。むしろこの男を軸にした、必ずこの男が出てくる短編集だったようだ。
6編すべて読むと、金髪の男の人生もかなり深掘りされて面白い。勝手に、綾野剛みたいな感じかな、と想像するも、途中の編で目が大きいという描写があったので、もっとわかりやすくハンサムな顔立ちかも。モデルとかいるのかな。
すべての話を読むと、1編目の母目線の話もある。読む手が止まらなかった。
あと、ハッとする表現が多い。ハッとする表現のところに付箋をはさもうとしたら、付箋だらけになるだろうなってくらい、時々すごいパンチラインがある。
とくに、「月影の背中」は凄かった。恋しているときのびりびりくるほどの胸の高鳴りや興奮がページ越しに伝わってきて、ため息が出た。
受賞作の「まばたきがスイッチ(旧題:朝凪)」は、この本のなかではそこまで面白いと思わなかった。ほかの編の方が好みだったので。でも、読むと元気になり、共感する力があるので、受賞は納得。あと、終わり方がめちゃくちゃよかった。
1つだけ気になること。金髪の男を出す縛り、全編通して読むと面白かったけど、それぞれだけで読むと、この男は何?という感想になってしまいそうな懸念があった。


<面白かった順>
眠る無花果
月影の背中
森と蜜
まだ宵の口
まばたきがスイッチ
さざなみを抱く

・・・と、ここまで並べて思ったけど、
下位もしいて言うなら下位かなという感じ。
全部面白かったので。下位3つは団子状態。

<ハッとした表現メモ>
全編通してたくさんあるけどキリがないのでとりあえず、ハッとするような美しい表現の宝庫だった「月影の背中」から3つ。

・何度も何度も、反芻してしまうのに、いつでも新鮮なのだ。自分がこわれているのではないかと危ぶむほどに。
・どの年代の女も、こういう瞬間をていねいにつないで、自分だけの心のネックレスにしていく。
・おかずの入ったトートバッグを掲げ、満面の笑みで小首を傾げるだけでよかった。~気安い素振りは命がけの演技だった。丸裸でぶつからなければ相手を丸裸にできないことを、本能で知っていたのだ。

本当にすごかったな。続きが気になって夢中で読み進めたり、素敵な表現にため息をついたりするのが読書の醍醐味だと思っているので、それを味わえる本に出会えてよかった・・・!

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