私の『パノラマ島奇譚』
先月結果が出た、「ギャラリーハウスMAYA装画コンペvol.22」では、
一人4点まで応募できるので、私は4点応募しました。
いくつかある課題図書の中から、最終的に『ノラや』(内田百閒)と『パノラマ島奇譚』(江戸川乱歩)にそれぞれ2点ずつ装画のためのイラストを描いて送ったのですが、実はまず取り掛かったのは『幽霊たち』(ポール・オースター)で、その後描いてみようとしたのは『ヘンゼルとグレーテル』(アンデルセン)、『羅生門』(芥川龍之介)でした。
なぜ『幽霊たち』を真っ先に選んだかと言えば、久々に、抽象画を描いてみたかったから…。
登場人物は、映画や実在の人物以外、全て色が名前になっています。
それで、青い人、白い人、黒い人+茶色い人’(ブラウン)で何か描こうと思いましたが・・・、
「そもそも、この本は何が言いたいの?」という、読後感。
阿部公房の『砂の女』を、大学生の時、夫に薦められて読んだのですが、その時の読後感と同じ、「分かんな~い」(笑)。
この「分からなさ」は抽象画にも通じる感があって、丁度良いと思ったのですが、いい構図が浮かばす、ギブアップ。
答え合わせをする気持ちで、選考結果を見たのですが『幽霊たち』は上がっておらず、残念…。
そんなこんなで他の図書についても色々考えているうちに、コレ!というのが浮かばず、描けそうなものに辿り着いたというわけです。
それでまず、『パノラマ島奇譚』で1点描くことにしました。
・読後感は
「どんなけ裸女好きだよ!」
「海藻と魚類のいい図鑑が手に入ったのかしら?」
・ザックリしたあらすじは
「貧乏な夢想癖の主人公が、自分と瓜二つで超大金持ちの学生時代の知人が死んだことを知り、その知人に成りすまして自分の夢想世界を実現しようと知人の地元にまで赴き、周囲の人間も簡単に騙せると踏んで用意周到に計画し実行するが・・・」
・印象的なシーンは、
「主人公が土葬の墓を掘り起こして、自分と瓜二つの死体を出そうとした時、肉が崩れる感触を味わうシーン」
「計画を実行し始めるが計算違いが一つ発生する/それは知人とその妻の関係/主人公は墓から蘇ってきた演技をして路上で倒れているところを発見され、家に運ばれ、妻が愛おしそうに主人公の顔を覗き込み、その時、薄ら目を開けて妻を観察していた主人公は、年若い妻の桃色の頬にある白い産毛までも見て、『知人と妻の愛情関係は自分の予想以上で、この妻しか知り得ない知人の体の”何か”がある』と確信し、『殺さなければならないかも』と思うシーン」
とはいえ、表紙にくるのは「パノラマ島」だろう!と「パノラマ島」を描くことに。
最初に頭に浮かんだのは、こんな感じ↓。
でも、これだと「島」でなく、島の「周り」に焦点が行ってるかなあ、と思い、次に「島」そのものを考える。
どうでもいい話ですけど、三重県の島だと思っています。
三重県に住んでいたことがあり、あちこち行ったので
最後、ドッカーンとなるので、てっぺんが吹き飛んでる感じ。
「周りをコンクリートで囲まれるその異様な島はある男の夢想から生まれたもの」
しかし、島の上に巨大建築物が建設される当時はコンクリートで覆われてなかったんじゃないかなあと思えてきて、コンクリートは無しに。
今なら、裸女でほぼ埋め尽くした島でもいいかな、と思います。
で、だんだん分からなくなってきて…。お手上げ~。
参りました。
しかし、審査員さんの講評を読むと「今回『パノラマ島奇譚』を描く人が多く、「パノラマ島」祭りの様相を呈していた」ようです。
皆様の描ききれる力が、羨ましいと思いました…。
ここで「島」を描くのは断念。
気を取り直して、印象に残ったシーンの中の
「主人公と知人の妻」の間を描くことにしました。
私には、この話が「自分の夢想世界を作るために知人の妻を殺すことを選ぶか、自分を疑いつつも愛情を寄せようとする知人の妻を選ぶか」を考え続ける男の話、とも捉えられたので。
1点はこれ。
「この男…なんやねん…何考えとるん…」
もう1点はこれ。
「これは私のあの人かしら」
哀しいかな、自分でmock-upを作ってみました(笑)。