2023ギャラリーハウスMAYA装画コンペvol.22「アルビレオ賞」受賞しました
初めての応募で、女性として(という枕詞は無粋かと思いますが…)憧れの存在でもあるアルビレオさんから評価していただけたことに、驚きました。
そして、やっとスタートラインに立てた、という気持ちです。
ずーっと挿絵をメインにやってきて、数年前から装画が描けるようになりたいなあ、と思い始めたものの、装画は本の世界観や著者の思想などを一手に背負うようなもので、いざ「この本の表紙を描いてみよう」と練習してみても「何を描けばいいのか分からない」「本の、著者の世界観なんてどう表すの?」と悩んでは、行き詰まり中途半端に終わってしまっていました。
そんな頃、昨年末、JILLA主催の宮川和夫先生の装画塾に参加できることになり、たった4回の講座でしたが、色々、色々貪欲に宮川先生から、それぞれの絵に対する考え方やダメポイント、グッドポイントなどを聞き出すことができたのが私にとって幸いでした。
先生が色々な人のそれぞれのイラストを講評したあと、私はいちいち「なんでこの表現がダメですか?」「どうするといいですか?」「この表現のどこが良いですか?」などと、学校や他の先生であれば「もう自分で考えろよ!!怒」と嫌がられるかもしれない質問に対し、宮川先生は1つ1つ答えてくださり、ちゃんとそれには理由があるので、先生の根拠のある言葉が、どう描くかと悩んだ時の支えになってくれました。
応募したのは課題図書のうち『ノラや』(内田百閒)に2点、『パノラマ島奇譚』(江戸川乱歩)に2点で、このうち『ノラや』の1点を評価していただきました。
原画は、配達の際などに万一のことがあると手元に戻りませんから通常スキャンをしておくのですが、この時は『孤独なケムシ』だった頃で気持ちがいっぱいいっぱいで、スキャンをしていませんでした。
【 受賞作品 】 | GALLERY HOUSE MAYA (gallery-h-maya.com)
↑こちらでご覧いただけます。
独特な刈り上げとギョロっとした目と黒ぶちメガネの百閒さん。
百閒さんは最初、着物姿で考えていたのですが、3年前の息子の大学受験の付き添いで、ホテルチェックアウト後一日中試験が終わるまでブラつかねばならず、漱石山房記念館で得た戦利品「津田青楓」の作品集に漱石一門の集合写真が載っており、そこで百閒さんだけが洋装だったのを見つけ、「百閒さんは通常洋装でうろついていたに違いない」と思い、洋装に替えました。
本当に4点描いている間は、自分自身が『孤独ないじケムシ』になっていて気を許すと涙が落ちて原画がふやけるような、辛かった時期でした。
受賞の電話は一難去った後で、受賞も、一人では喜べないなあ、と思いました。
一緒に喜んでくれる人がいないと寂しいものだ…、と。
夫はいつも、かる~く「へ~」くらいにしか言ってくれないのですけど(笑)、まあそれでいい。
コンペを主催してくださっているMAYAさん、評価をくださったアルビレオの西村真紀子さん、草苅睦子さん( 装丁家・グラフィックデザイナー)にも、いただいた幸運に感謝です。
年齢的にベテランですが、初めの一歩のつもりで年明けのグループ展に臨みたいと思います。