15年前に買った腕時計の話。
2年近く止まったままだった時計を、電池交換に出した。
この時計は、30歳の時「節目の年だから」と自分で買ったカルティエの「タンクフラセーズ」という時計。
当時、仲の良かった友達が時計好きで、よく時計の話を聞かされていた。
彼女はすでにロレックスの腕時計を愛用していて、次は何を買おうかとよく話していた。
フランクミュラー、オメガ、ウブロ…あとは忘れたなあ。なんだっけ?
彼女と一緒にテレビを見ていると「この人、どこそこの時計してる!これ○○万はするよ!」みたいに教えてくれたりした。
多分その影響もあって「30歳になったら、良い時計をひとつ買おう」そう思ったんだと思う。
その頃私が使っていた腕時計は、ハタチの時に親に買ってもらった「アニエス・ベー」のものと、アメリカ旅行の時にノリで買ったナイキか何かのデジタル時計の2つだった。
そして30歳を迎えてしばらくした時、その友達に付き合ってもらってデパートへ行った。
上の方の階にある宝飾品フロアで「やっぱりロレックスっしょ」と、ロレックスの店頭に行った。
あまり華奢なデザインは好きじゃなかったので、買うなら少し大き目の「ボーイズサイズ」と決めていた。
お目当の時計をショーケースから出してもらって、試着した。
人生初めてのロレックスは、驚くほど似合わなかった。
私の腕は無駄に細いので、時計の存在感が大きすぎてなんだかしっくりしなかった。
それならば、と小さいサイズに変えても、どうにもこうにも似合わなかった。
友達も「うーん、ちょっと違うね」そう言った。
丁寧な対応をしてくれたお姉さんにお礼を言い、他の時計を見て回ることにした。
その中で、「あ、これいいな」と思ったのがカルティエだった。
そして後日、現金を銀行で下ろして封筒に入れ、デパートの宝飾フロアではなく、カルティエの店舗へ向かった。
「これ、見てもいいですか?」そう言って、もう一度試着をさせてもらった。そして決めた。
「これ、ください」
今よりは安かったけど(今めちゃくちゃ値上がりしてるのね。お店で見てびっくりしたよ)、それでも大金。
ドキドキしながら支払った。
確か、手続きを待ってる間、チョコレートが出てきて、「カルティエのチョコレート…」ってなった記憶。
現在もあるのかしら。
あれから15年。
スマホがあれば、時計なんて必要なくて全然使っていなかった。
2年近く前に止まったまま「まあいいか」と放置していた。
代わりに、2,000円ぐらいのスマートウォッチを買って「便利よねえ」って思ってた。
でも最近なんとなく、「ちょっと良いものを身につけたいな」と思うようになり、電池交換に出すことにした。
少しくすんでいた時計は、驚くほどピカピカになって返ってきた。
ピカピカの時計を久し振りに腕にはめたら、ちょっと重く、でもとてもしっくりした。
スマートウォッチみたいに、歩数もはかってくれないし、血圧も心拍数も睡眠時間も測ってくれない。スマホと連携もできない。
でも、アナログの時計にはアナログの良さがある。
そして、この時計には15年分の思い出があるんだ。
しばらくは、この時計と出かけよう。
2年の月日を、埋めるように出かけよう。
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