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母の耳が遠くなってきたので、補聴器を買いに行った話。

母の耳が聞こえづらくなりはじめたのは、今年に入ってからだっただろうか。
テレビの音量が大きくなり、会話中に「え?」と言われることが増えた。

87才という年齢を考えても、耳が遠くなるのは仕方ないとは思うものの、私の呼びかけが聞こえなかったり会話が通じなかったりするので、同じことを何度も言ったり大きな声を出さなきゃいけないのは、なかなかにストレス。

それに、耳が遠くなるとボケるって言うしなあ…と心配していた。

やはり本人も聞こえなさが気になるようで、とうとう補聴器を見に行った。


ところで、補聴器っていくらぐらいするかご存知だろうか。

安いもので片方5万円。
ちゃんとしたものになると、片方20万円以上する。

勝手に「5万円あれば作れるんじゃない?」と思っていたのでびっくり仰天。
ちゃんとしたもの作ったら、両耳で50万円コース。ひえー。

母が行った補聴器屋さんは「2週間、無料貸出サービス」をやっていたらしく、今絶賛お試し中。
普通に会話ができるしテレビの音量は小さくなったし、補聴器すごい。

「きちんと検査もしてくれて、耳の型も取ってくれたの」と母は言うけど、それはつまり「気に入ったら買ってね」ってことだし、今度外して聞こえなくなった時にめちゃくちゃ不自由だろうし、とはいえその50万円はどこから捻出するのでしょうか母よ…。


そういえば、少し話は変わって、春に父が救急車で運ばれた時のこと。
車椅子のご主人と付き添いの奥さんが、隣のベッドにやってきた。

ご主人がベッドに横になったタイミングで、カーテンで仕切られた。
けど救急外来の診察室なので、会話は筒抜け。

聞いていると、どうやら奥さんの耳が遠いらしい。
なのに、やたらと奥さんが話をしていて、おそらく具合の悪い旦那さんが「うん、ああ」と返事をしていた。

時々旦那さんが何か言葉を返すと、奥さんが「え?なに?」と何度も聞き返し、その度に旦那さんが大声でもう一度繰り返していた。

うちの父はめまい症で運ばれて横になっていたのだけど、耳は元気だったので、二人でなんとなくその夫婦の会話を聞いていた。

しばらくあと旦那さんが「もう疲れたから寝る。お前と話すの面倒くさい」と言うと「え?弁護士さん?」と奥さん。
どうやら「面倒くさい」が「弁護士さん」に聞こえたらしい。

突然の「弁護士さん」登場に、カーテンのこちら側で父と私は笑いを堪えていた。

「弁護士なんて言っとらんわ」「え?弁護士さんがどうしたの?」「め、ん、ど、く、さ、い、の!」「ああ。なにが?」「お前と!話すのが!」「え?」「わしは!もう!寝たいの!」「あ、そう。どうぞ」

大変だなあ…と思って1分もしない内に、奥さんが「それでね、お隣の水谷さんがね」と話し始めた。

吹き出しそうになる私。

でも優しいご主人はその後も「うん、うん」と聞いていた。
偉いなあ。体調悪いだろうに。


うちの母はまだそこまでじゃないけど、このまま進行したらあんな感じになるのかなと思うと、ちょっと面倒だなと思ってしまう。

にしても、50万円は高いよね。
もうちょっとお値打ちにならないものかしらねえ。

歳を取ると、いろんなことにお金がかかるなあ。
しかも「より良くするため」じゃなくて「現状維持」にお金がかかるんだもん。
嫌になっちゃうなあ。

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