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答えのない質問
レナード・バーンスタインの「答えのない質問」。副題は「1973年ハーヴァード大学詩学講座」。高校生の頃に本の方を古本屋で買った。それなりの値段がしたような気がする。少し背伸びをしながらわくわくして読んだ。
目次は、1.音楽的音韻論、2.音楽的統語論、3.音楽的意味論、4.曖昧さの喜びと危険、5.20世紀の危機、6.大地の詩と続く。
第3章の音楽的意味論 IIでは、「ベートーヴェンの<<田園>>交響曲を、外部的で非音楽的なあらゆる隠喩から分離させて、純粋音楽としてきくことが可能だろうか?」という問いが投げかけられる。第4章の曖昧さのよろこびと危険では、ベートーヴェン、シューマン、ショパン、ベルリオーズ、ワーグナー、そしてドビュッシー<<牧神の午後への前奏曲>>へと続く曖昧さの量的変化の系譜が語られる。
持っている本の中でも好きで大事にしているものの筆頭だ。内容の理屈っぽさが好きだしタイトルもいい。
"The Unanswerd Question"。20世紀を象徴するタイトルだと思う。この言葉に心が囚われてしまったといっても過言ではない。この本によって自分は19世紀から20世紀にかけて、そして20世紀から21世紀にかけてと100年のスケールで考える視座を借りることができたのだと思う。
講義録を録音したレコードが欲しかったが、当時、それは自分では手に入れることができなかった。音楽の講義録なのだ。本来は読むものではなく聴くものなのだ。ああ、レコードが欲しいなぁと思っていた。
それから25年以上がたち、録音がDVDとして発売されたことを知ったときは本当に嬉しかった。モノとして手にしたことが嬉しいと、普段はほとんど感じることがないのに、このDVDだけは別だった。人生の中で、モノとして手に入れて嬉しかったものはこれくらいなのかもしれないなと思う。