人は自分で決めることが好きではないのかもしれない:フランク・パヴロフ『茶色の朝』
「茶色の朝」。著者:フランク・パヴロフ、絵:ヴィンセント・ギャロ。原題:Motin Brun。すべてが茶色でなければならない世界の小さな小さな物語。
「茶色の朝」を読んで、高校の世界史のHMTさんのことを思い出した。
HMTさんは変わった人だった。前期・後期に分かれたHMTさんの世界史の授業は、前期はギリシア時代で終わり、後期もフランス革命・産業革命あたりで終わってしまった。ある意味、枠にとらわれない人だった。
枠にとらわれないという言葉はHMTさんの印象を誤解させてしまう。HMTさんの話し方は独特で、決して大きな声を出すことはなく、全体に静かな印象の人だった。しかし、その静かな話し方の中に聞き逃してはいけないと感じさせる何らかなの人生に対する機微と達観、もう少しいえばわずかな毒が隠れていた。私たちは、その静かな毒の含ませ方に、表面的な静かな印象とはうらはらの強い、枠にとらわれないという印象を感じていた。
そのHMTさんが、何がきっかけだったのかは思い出せないが、あるときにこんなことを話し始めた。
高校の世界史の授業でのHMTさんの言葉は今も強く心に残っている。もう40年も前のことなのに。