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セイタカアワダチソウ

そういえば、最近、あまりセイタカアワダチソウを見かけない。外来種で、河原や空き地にやたら生えていたのに。緑の保全活動などをしているときは見かけると小さいうちに片端から抜いていた。

他の植物の生長を抑える物質を放出するアレロパシーという性質を持っていてちょっと面白いなとも思っていた。どこかでアレロパシーは自家中毒もあると聞いた。それが本当かどうかは定かではない。いま住んでいる埼玉は暑すぎて適さないのかもしれないが、。以前住んでいた川崎でも、子どもの頃ほどは見かけなくなっていたような気がする。、多摩川の河川敷でも。

セイタカアワダチソウのことを考えるとき、伊藤比呂美の『青梅』の記述を思い出す。詩で描かれたのは荒川だろうか。

 七時に起きて鍵をかけてうちを出る。山手線から駒込、田端、京浜東北線へ赤羽、蕨、浦和、赤羽を出て青い電車は川を渡る。鉄橋は音が響く。広い河原にところどころ叢がある。一年のほとんどを灰緑色に繁っている。いつも見ている。
 叢の草が縦横に黄色いくびを揺らす。夏の間はただの叢であるのに今頃になるときゅうに色づく。線路沿いや河原がとつぜんに黄色くなる。
 ちかくで見たかったのだ。
 あそこに出るには線路ぎわから少し坂をのぼり、いちど川の流れるのを遠目に見て坂をくだり、信号のある道を道なりにずっと行けば、もう一本の道と交叉して、突切ると段々がある。段々をのぼるとそこが川の土手になる。<すいもん>というものが設けられてあり、ここで水はすこし澱み、ひらかれていく。すいもんの堤防の上を人が往来する。子ども連れで来る。犬連れで来る。トレーニングウェアの人たちも来る。自転車にのって子どもたちが通る。カモメがいることもある。
 Bをつれておりていった河原は、ずっとつづく芝生だった。川べりに行くと、あの草が群れていた。
 私たちはその中に分け入る。草の根もとは湿った土だ。栄養素をふくみ、この草を成長させてきたおのだ。わたしたちはかたまりに触る。土はぼろぼろと手からこぼれる。爪のあいだに黒い粒子が残る。
(なんというくさ)
(アキノキリンソウか、セイタカアワダチソウか、よくしらない)
Bは背伸びして草の頭に触わる。草はなびいてBに寄り添う。
(でもあたしはアキノキリンソウのほうがいいな。秋の、っていうのがね)
(うん、野生のきりんみたいでね)

伊藤比呂美『青梅』河原より

その植物を"セイタカアワダチソウ"という名前で意識したのは、この詩がきっかけだった。

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