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歳時記を旅する8〔襤褸市〕後*ぼろ市の尺で売らるる臼と杵

磯村 光生(平成六年作、『花扇』)

 世田谷を愛した作家、徳富蘆花はボロ市を
「東京中の煤掃きの塵箱を此処へ打ち明けた様」
といい、
「新しい筵、筍掘器、天秤棒を買って帰る者、草履の材料やつぎ切れにする襤褸を買う者、古靴を値切る者、古帽子、古洋燈、講談物の古本を冷やかす者、稲荷鮨を頬張る者、玉乗の見世物の前にぽかんと立つ者、ひとさま〲の限を尽す。」(『みみずのたはごと』大正二年 岩波文庫)
とその賑わいを伝える。

 平成二十二年、世田谷ボロ市を歩いて、作務衣、木製の匙とそば盆を手に入れた。

 ボロ市本来の農具、古物、正月用品の店は数を減らしていて、臼と杵を売る店は約七百店のうち二店(平成二十五年)にまでなっている。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和二年十一月号)

写真/世田谷区ホームページ

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