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〖地域おこし協力隊〗を正しく活用せよ!

 平成21年(2009年)に地方の過疎化に歯止めをかけることを目的として、総務省の地域自立応援課主導で「地域おこし協力隊」の活動が開始されました。
 総務省の資料によると、制度概要は〖都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移した者を、地方公共団体が「地域おこし協力隊員」として委嘱。隊員は、一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組。」と記されています。
 開始から10年経った平成30年時点で、5530人が隊員として登録され、その内約6割が目的の定住を果たしたと中間報告されています。
 ただし報告書には「地域おこし」にどの程度効果を上げたかは記されていません。
 ところで隊員1人あたり報償費と経費を合わせて、480万円を上限として支給する規定になってますので、この資金は国民の税金から意識せずして支払われています
 仮に隊員が5000人として1人平均400万円が支出されたとすると年間200億円が我々の役に立たない用途に使われることになります。
 バカを見るのは我々国民です
 したがって、単に定住したという結果だけでは、我々国民は納得できません
 一般的に政府は予算取りには力を入れますが、その予算がどういう明細で支出され、どのような成果を上げたのかをフォローすることはほとんどありません。
 そのようなことは民間会社ではあり得ません。
 ちなみに令和4年度の隊員は6447人でした。令和5年度の実績は未集計です。
 令和6年度の総務省の計画は8000人に設定されています。

兵庫県新温泉町の実態


 以上は総務省の報告書をもとに「地域おこし協力隊」制度の実態と問題点を述べましたが、実際に隊員の仕事の状況等を新温泉町の公式報告をもとに考えてみます。
 新温泉町には現在12名の隊員が活動しています。活動期間は通常1年から3年です。
 公式報告では、各人にインタビューする形で紹介されていますので、ポイントをまとめます。

1.男子8名、女子4名で、登録年は、令和2年1名、令和3年3名、令和4年4名、令和5年4名。

2.担当する地域おこしのテーマは、温泉新興(店舗運営)が6名、移住定住促進が2名、観光振興・水産振興・道の駅活性化・地域振興が各1名。
 温泉街がある関係で、「温泉新興」に偏っていますが温泉街は基本的にあらたな雇用を生む事業ではなく、いわゆる既得権益で成り立っている産業なので、彼らが従事している仕事も5名が温泉街のカフェの手伝いで、とても「地域おこし」レベルの仕事でありません。
 温泉新興の残りの1名は資料からは読み取れません。
 「移住定住促進」担当の2名は町の空き家バンク事業の手伝いをしているようです。
 したがって、これも地域おこしの本質ではありません。
 「観光振興」担当の1名は山間部の農業や自然環境をPRするエコミュージアムの取り組みを手伝っており、12名中唯一地位おこしに近いかなという感じの仕事に従事しています。
 「水産振興」と「道の駅」の担当者は従来の仕事の延長線上の手伝いで新規性を感じません。
 「地域振興」の担当はUターンで地元に戻ってきた人で資料からは何をやっているのか分かりません。

3.新温泉町の場合、総じて従来の仕事の延長が主体で、地域おこしと言うより、過疎化による人手不足の解消という目的が強そうです。これでは我々の税金を使っている意味がありません。失敗と言わざるを得ません。


他府県の実態

 ではこの「地域おこし協力隊」制度をうまく活用している都道府県はないのかということですが、私は登録者数が突出して多い長野県と北海道に注目して調べてみました。人数にして他の都府県平均の5倍程度です。
 結果、兵庫県の取り組みとは全く異なることに気が付きました。知事の力の差でしょうか。
 ちなみに長野県の知事は総務省出身ですし、北海道の知事はコロナでは失敗しましたが、都庁で自分の足を使って苦労してきた人で、それなりの実力がありそうです。
 具体的にどう違うかは3つの自治体のホームページを見れば簡単に分かりますが、北海道と長野県は道県レベルのしっかりとした青写真にしたがって活用しています。したがって、多くが地域振興政策の中でこの「地域おこし協力隊」の制度を活用しています。
 当然応募する側もこの2つの道県の意欲に魅かれて集中することになります。
 それにしても47都道府県中、わずか2つの道県だけしか国の意図を反映できないというのは驚きです。

結言

 都道府県の取り組みがピント外れになっている原因の一つは、総務省の「制度概要」の締めくくりの文が「その地域への定住・定着を図る取組」となっていることです。
 「カネで移住者を買う取組」と勘違いされてしまいます。
 総務省には即刻文章を改めてほしいです。
 目的はあくまでも「地方の復興・活性化」です。

 私はかねがね「失われた25年」を取り戻す力は「地方の自律化・活性化」しかないと考えていますので、SNSを活用して必死に情報発信していますし、我々の税金で運営されている「地域おこし協力隊」制度もより良い方向で活用されるよう願っています。


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