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風俗嬢にガチ恋しそうな男の話

ホス狂いの彼女は、そこでお金を使うことで価値のある人になれる、存在意義を感じられる(意訳)

僕には今、自分の価値を実感できる場がない。
仕事を通じて自分の価値を感じることは出来ない。
生活の中で、人付き合いの中で感じることもない。

でも僕は"価値のある人間"であることを望んでいる。
自分の存在意義を実感したい。

”あなたが必要なんだ”と言われたい。
普通の人が貰えない報酬を頂きたい。


そうなりたい、そうなっていないといけない。
でも、現実の僕はそうじゃない。

誰からも求められない。
誰からも必要とされない。
仕事で手に入る収入は雀の涙程度。

自己否定の毎日。
理想と現実のギャップで苦しんでいる。

こんなはずじゃない、僕はこんな人間じゃない。


だから僕は風俗に行く。
風俗でなら、"自分の価値"を感じられる。
ホテルで女の子と過ごす1時間だけは、"自分は価値のある人間"だと思える。

その時間は、現実の自分を忘れることが出来きるから。

8月、お盆。
久しぶりに風俗に行った。
一時期通い過ぎて貯金がみるみる減ってしまい、流石にヤバいと感じ風俗断ちをしていたのだが、コロナで実家にも帰れない中、給付金の10万円も余っている状態で、半年ぶりぐらいに風俗に行ってしまった。

初めてのお店、初めての女の子。
初めてのラブホテルで緊張しながら出迎えた彼女に、僕は惹かれた。

ショートボブの黒髪の少女。
楠木ともりに似ていると言えば、声優好きなら分かるかもしれない(ggrks)
働きはじめて半年ほど経っていたらしいが、まだ水商売慣れしてない感じ。
でも人気嬢で、お店のランキングでは上位。

簡単な挨拶を済ませ、お互いソファーに腰かけるも、彼女から話しかけてはくれない。

お互い苦笑い。

だから僕が必死に話しかける。話題を作る。
自分から頑張って雰囲気を作る。

話しかけると、ちゃんと答えてくれる。
嫌そうな雰囲気はない。

当たり障りのない話題から始める。
お互い20代で、何か共通の話題がないかを探す。
でも、決して踏み込んだ話はしないように。
彼女が嫌がる話はしないように。

風俗に行くときは、出来るだけいいお客であろうする。


行く前にはシャワーを浴びる。爪は短くしておく。
食べ物にも気を使い、歯はきちんと磨く。
ガムやフリスクで口臭に気を付ける。

ホテルに着くとバスマットを広げる。
バスタオルを取りやすい位置に置く。

髪は触らない。
プライベートは詮索しない。

痛くないように、無理をさせないように。

気持ち悪がられないように。
嫌な気持ちにならない様に。


でも、それが楽しい。
”価値のある人間”になれた気がしたから。

あの1時間の空間は、僕がお金を払って買ったもの。
お金を払ったからこそ、普段関わりのない、年下の女性と関わることが出来る。十分なサービスも頂くことが出来る。

でもそれ以上に、僕は彼女にとって"いいお客さん"になれた気がした。
そうなろうと努めた。

特に今回の彼女はそう思わせてくれた。


それが嬉しい。
それが幸せ。

自分は価値のある人間であるのだ。そう成ろうとして、成れたんだ。

そう感じた。そう感じられた。

お金を払って、その空間で誰かにとって喜ばれる存在になれた気がした。
”価値のある人間”になれた気がした。

昔は自分のことを、価値のある人だと思えていた。

学生時代は大人から信頼されていた。
色んな事を任せてもらえた。

ルールを破り、自分勝手で他人に迷惑をかけるクラスの問題児を横目に見ながら、優越感に浸ることができた。

皆とは違う。

僕は信頼され、期待されている。
僕は価値のある人間。
これまでも、これからもそうにちがいない。

今僕は、誰から期待されているだろうか。
誰の役に立っているのだろうか。

他人を恐れ、人と人との関わり合いを極力減らし、気付けば誰からも必要とされない人になってしまった。

人の輪から切り離されてしまった。
一人ぽつんと、人の繋がりを眺めている。

その繋がりに僕も混ざりたい。
その中で、たくさんの人に必要とされたい。

でも、ここから踏み出すのが怖くてどこにも行けない。

彼女との1時間を過ごしてから、ホテルを出て別れてから、ずっと過ごした時間を思い返している。

写メ日記を何度も読み返し、出勤日を何度も確認している。

また行きたい、またあの時間を過ごしたい。
誰かにとって必要な人になりたい。

あぁこうやって皆風俗にハマっていくんだ。
人はこうやって皆色んなものに執着していくんだ。

お金で買った時間で得た、偽りの価値を求めてしまっている。
僕は、救われない人になってしまうのかな。

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