無罪判決はどのように生まれるのか(脅迫)前編 傍聴小景 #30
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もう少しこのビッグウェーブに調子づきたいので、おかげさまで多くの方にご覧いただいている記事をこちらでもご紹介。
何度も見ても、二万字超えなんて書く方も書く方だし、読むほうも読むほうですぜ(嬉しい気持ちの裏返し)。ホントありがとうございますね。
従来ですと、週に1本は有料会員の方向けの部分有料記事の配信なのですが、今回は前後編ということで、前編は完全無料にて発信いたします。
さて、今回の話。
私は人生で600件(今まで500と言っていたが更新)ほど裁判を傍聴しておりますが、無罪判決に出会ったことはありません。
日本の起訴後の有罪率は99.9%と言われています。一般的にこの99.9%って100%と書いて絶対ないと断言するのもなぁという保険のような場合に表現されることが多いように思えます。でも実際に無罪判決って存在します。それが0.1%より高いのか低いのかはわかりませんが、ニュースで見たり、傍聴マニアの横の繋がりで伺ったり。
私も無罪を主張してきた被告人は何人も見ています。しかし、だいたいがその主張はちょっとなぁと思うものばかりだったのですが、果たして今回はどうでしょうか。
はじめに
基本的に傍聴人にとって、裁判が始まるまでどんな事件内容かわかりません。でもまさか、「脅迫」という罪名で70歳のお爺ちゃんが出てくるとは思いもしませんでした。
脅迫と聞くと、いかにも凄んできそうなものを想像します。この被告人も、例に漏れず、背こそ低いものの、目つきの鋭さは一癖も二癖もあり、私が動画でよく使う、
いらすとやのこの爺さんそっくりでした。もしくは、目つきの悪い猫みたいな感じの人。
事件の概要(起訴状の要約)
想像以上のアナーキーな爺さんでした。
平穏に過ごしたい我が家の玄関先でナイフを持っている人がいるなんて、想像もしたくありません。
ただ、ここで気になることが。脅迫という言葉はよく聞くものではありますが、どういったときに罪として成立するのでしょうか。
刑法222条には「本人や親族の生命、身体、自由、名誉または財産への害を与えることを告げて脅迫」とあります。
生命、身体への害を与えることを告げて、とあるので「お前を〇す」というのでも通じるそうなのですが、今回「奇声」を上げてとしかまずは紹介されませんでした。この辺りが気になります。
この起訴状の内容を踏まえ、被告人と弁護人に最初の意見を求める罪状認否の場ではこのように答えます。
文章だと伝わりにくいですが、人の意見を聞かなそうな人が、さも面倒くさそうに、裁判官すらも挑発するような感じで答えます。「相手が挑発してきたから」と答えている以上、何かはしたのは間違いないようです。
内容について、どういった部分まで認めるのか、否認するのかを確認する必要があるので、裁判官が質問します。
続いて弁護人が話します。
争いごと自体があったのは認めるものの、「なんや」しか言っていないし、ナイフも使っていない、との主張。
つまり被害者側と供述が食い違っているということですね。被告人が罪を逃れるために嘘を言っているのか、被害者側が事を大きくしたり被告人に何かしらの悪い感情があって陥れようとしているのかという展開になるのでしょうか。
今の段階では、情報が少なすぎて、なんとも言えません。
検察官によって提示された証拠関連
検察からはいろいろなことが語られました。
まずは、前科16犯に驚きです。累計でどれだけ刑務所に入れるのでしょうか。恐らく僕史上最多の前科です。集計してないのでわかりませんが。
だからといって、今回の件が即有罪認定されるはずもありません。詳細はわかりませんが、被告人と被害者は度々もめていたようですね。
その揉めていた要因はなんなのか、そして今回何が起きたのか、第三者が冷静に判断できる材料が揃えばいいのですが…。
証人尋問(事件被害者):検察官より
というわけで、事件前後などの状況を詳しく聞くべく、被害者が証人として法廷に現れました。見た目は、年齢通り若々しく、体つきはややしっかりしている感があり、寡黙っぽいけど気は強そうな見た目。
法廷内に入るなり、被告人は被害者をキッと睨みつけます。
それに対し、被害者は「またか、、、」みたいな反応。特段、敵意は見せていませんが、怯んでもいないかなといった印象。
まずは検察官からの質問です。
急に割って入る被告人。
当然、そんなのでは裁判の進行に支障をきたすので認められていません。裁判官から注意を受けます。それに対して被告人は「へっ」という感じで、そっぽを向きます。
事件の事実関係はわかりませんが、裁判官の心情は悪化したことでしょう。
その一方で被告人側にも気になったことが。
別に悪いことじゃないんですが、あまり愛想がないというか、なんというか言葉尻が強いんですよね。
私は傍聴メモを取る際、証言の再現は要点だけ伝わればいいと思うので、語尾にですますをつけたかまではメモしないのですが、この人は単語のみで切れていたのをはっきり覚えています。僕も声が低いので感じるのですが、端的に要点を伝えているつもりでも、相手に威圧的と思われることもあるんですよね。
若干、そんなことを思ったり。
ジュワみたいな感じで、証言台で構える証人に少し萌えてしまった私。いわゆるファイティングポーズをとったと言いたかったんですね。
僕のメモが足りていないのでしょうが、状況がわからなくなってきました。
またがないと家に帰れないってことは、玄関を出て前後関係が逆転したということでしょうか。最初はコケて帰ってったと言っていたのですが、もみ合ったみたいですし。
これを証言の変遷として信用性に足りないと捉えられるのか、単に言葉が不足していて補足されればわかるのか、事件当時のことがショッキングで詳細は覚えていないということなのかちょっとわからないです。
あと、わざわざ入れていませんが、被告人は自席からちょいちょい、「嘘つくなや」「何を言ってるんだ」とかの茶々を入れています。小さい声ならスルーしていますが、はっきり聞こえるものはそのたびに注意を受けています。
ここまで、法廷内で争っている裁判も珍しいです。
今のところ検察のターンなので当たり前ではあるのですが、被告人が相当血の気が多いタイプというのはよくわかりました。証言内容以外でも、その人格がわかるのは自爆以外何者でもないですが。
証人尋問(事件被害者):弁護人より
続いて、弁護人からです。
このやりとりによって、弁護人が何を軸にしたいかがわかるといいのですが。
なるほど、まずは被害者側にも問題があったと言いたいわけですね。
深夜に掃除機かけたりしたら、確かに気になる人はなりますね。
警察は民事不介入だ、と漫画などでよく見ますが、本当にそういうこと言われるのですね。
引っ越しまで薦められるとは、民事不介入だけど、手をつけられない人だっていう認定は被告人は受けていたのでしょうね。
ただ、引っ越しって高いですよね。トラブルは望まないけど、なんでそれでこっちがお金かけてまで引っ越しすんねんと思うのではないでしょうか。
ほんと日常的にトラブルがあったのでしょうね。
それにしても、下の階のドアが閉まる音まで聞こえる作りなのだとしたら、深夜の生活音はかなり気になるかもなと思ったり。
ありますね、たぶん事故防止でゆっくりとしか閉まらないドア。まぁだいたいそういうドアって、あんま閉まるとき音がならなそうですが。
そのあとも、弁護人はいくつか証人に質問をするのですが、ここからのメモが大変で、情報が不正確なので、あえて要点だけに留めます。メモにかなり自信がないので。
というのも、
弁護人としては、そのやり取りの最中に被告人はナイフを衣服に隠し持っていたけど、振りかざしたり、見えるようにしていないと言いたい様子。
なので、落としたときはどこに落ちたのか、それは被害者側か、被告人側か、距離はどれくらいか、そのときの位置関係はどうなっているか、廊下から立ち去るときの二人の角度や見え方などについてすごく細かく話されました。
裁判上、事実の明確化という意味では必要な話だったと思いますが、現場見取り図がわからない傍聴人にとっては、なんとも難しい話で何度も頭を悩ませてしまいました。
このコンテンツ自体が、謎解きを目的とするものでないので、その点は細かいやり取りが行われたということのみで、留めさせてください。
正直それを聞いて、わからないなりに、証人に対して矛盾してないかなと思ったり、弁護人に対してそこまで記憶を求めんなやと思ったり、まぁごちゃついていたということだけは伝えます。
というとりあえず、証人を巡った双方のやり取りがあったということで、
今回の記事としては、いったんここまで。
当日の事件の概要が検察側の証拠や、被害者の証言などによってぼんやりとわかってきました。
ただし、被告人のこの公判においての言動を見るに、それが事実に反しているからなのか、弁護側としての作戦なのかはわかりませんが、どうやってもこの内容をそのまま認めるとは思えません。
また、被害者の方を疑う訳ではないですが、今回なにかケガをしたとか、防犯カメラに映像が残っていたという証拠はありません。なので、裁判官がどのように事実を判断するのかがとても気になります。
ということで、次回の後編は被告人の言い分、最終的な検察官と弁護人の意見、そして判決までお伝えいたします。
無罪を主張し続ける被告人の意見は届くのか。裁判官は何をどうやって判断して判決を決めたのかなどが注目のポイントとなっていきます。
それでは来週の更新をお楽しみいただけたらと思います。
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