まっすぐ書こう(おでん式)【美文字の極意③】
ところで、筆者は”美文字”という言葉を発する際に、どうしても一抹の気恥ずかしさやうしろめたさのようなものを感じてしまうのですが、皆さんはどうでしょうか・・・?
もちろん”きれいな字”は大好き、なんですが。
いつか、この”美文字”の呼び名の出どころや時期、ニュアンスなどをきっちり言語化してみたいと思っています。
で、今日は「美文字の極意」第三弾!『まっすぐ書こう!!』です。
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まっすぐ書くのはとってもとっても大事!!
美文字/きれいな文字を書きたい、というのは、単に文字の形が美しいことを言うのではありません。
文字を書くとき、ほとんどの場合は1文字や2文字で終わることはありません。文字がたくさん連なって文字列となり、1行で足りなければ2行3行と続いていくことになります。
文字はビシっとまっすぐ書かれていると、整然としてとても美しく見えます。
漢字とひらがなの事例をふたつ。赤点線が中央線です。
①はビシっとまっすぐ
②は右へ(あるいは左へ)大幅にズレていってしまう
③は微妙に蛇行している
全く同じ文字でも全体としての出来栄えは大きく異なることが分かるのではないでしょうか。言い換えれば、まっすぐ書ければ上手く見えるとも言えます。
となれば、今の自分の文字の完成度でも、まっすぐ書くことさえができれば、その分上手く見えるとも言うことができるでしょう。
文字の幅は関係ない
まっすぐ書くために、時々字幅を揃えようとしたり、前の文字の左(あるいは右)側線を合わせようとする方がいらっしゃいますが、次の事例を見ると、変ですよね・・?
(極端な事例に思えるかもしれませんが、文字を教えていると実際にこれに似た現象が起きているのをよく見かけます)
縦書きで字幅を合わせようとすると、中心はズレませんが文字サイズにかなり差が出てしまいます。右あるいは左側線に合わせると、文字サイズ変わりませんが中心がずれて、まっすぐに見えません。
横書きで字幅を合わせようとすると、「かき」の場合「か」が大きく「き」が小さくなってしまいます。また、下線あるいは上線合わせだと中心がずれてまっすぐには見えません。
つまり、「まっすぐ書く」ためには字幅はまったく関係がない、字幅を頼ってはいけない、と言うことになります。
字の形、大きさは色々
というのも、そもそも文字の形・大きさとは色々あるもの。例えば「あ」「い」「り」「ほ」は次の通り、字形も、文字が使うスペースもそれぞれ全然異なるのが分かると思います。
一般的に、文字はそれぞれ固有の字形をそれぞれ持っています。字形の宿命とでも言うべきでしょうか。
「い」を縦長に「り」を横長にすると、この2字は近づいてくるので、文字を区別する意図でも字形は重要です。
もちろん字形や大きさが様々であることは漢字も同様です。
ここで言いたいのは、
文字が持っている固有の、宿命的な形(真四角/潰れた四角/三角など)があるということです。
肝は文字の中央線【おでん方式】
文字にはそれぞれ宿命的な形があり、大きさが均一ではない。
では、どのようにすればまっすぐ書けるのか。
最も大事なことは、
文字の中央を捉え、揃えること。
バラバラな字形、バラバラな大きさの文字を貫く一本の串。
これぞおでん方式!!!!
おでんに「あわい」と文字を入れた事例はちょっと無理やり感がありますが(ちくわが横に細長過ぎて笑)でも、つまりはこういうこと。
バーベキューの串でも焼き鳥の串でも良いけれど、形さまざまということでおでんを採用。
とにかく、縦書きでも横書きでも文字の中央を捉えて串刺しにしていくこと。こうすればバラバラな文字たちをビシっと整列させることができます。
文字の中央って?
例えば「中」のように、縦画が文字の中央であることが自明なものは良いですが、特にひらがなや左右で偏と旁に分かれる漢字などは「文字の中央にこの線が絶対来る」とは言い難いもの。
そこで頼りにするのは、文字の字形イメージです。あくまでイメージでOKですので、書こうとする文字の字形を思い浮かべてください。
「い」はつぶれた四角かな、「ら」は縦長四角かな、「る」は丸っぽい、「り」はのびやかな縦長四角、「れ」は正方形くらい、「ん」は三角だよね、とかそんな感じ。
その字形イメージの真ん中を貫くつもりで、文字を連ねていきましょう。
字形が思い浮かばない・・・という方はこちらをご参照ください。
その他、まっすぐ書く工夫9選
文字の中央線を意識することが最も肝と言えますが、結構難しいと思います。その他にもまっすぐ書く工夫をご紹介しますので、参考になさってください。
1.紙を机と平行にきちんと置く
これ大事!すごく大事!紙が曲がっているとまっすぐってとりづらいもの。きっちり机の枠の直線と平行に紙を置きましょう。(まっすぐ書く練習をしたいときは丸テーブルはお勧めしない!)
ちなみに自然な状態で自分の利き手を机に置いた、その前あたりに紙をセットすると良いでしょう。
2.白紙で練習する
練習はコピー用紙のような白紙がおすすめ。罫線や補助線頼りだといざ白紙に書くのは難しいもの。それに本番は罫線のない紙に書くことも多いものです。まずは何にも頼らない白紙練習がおすすめ。
3.紙の枠を指標にする
紙はたいてい四角形で、枠はまっすぐだと思います。紙の枠の直線と平行に文字を連ねていくことができれば「まっすぐ」です。
4.途中で何度も確認する
「曲がってしまった・・」となったら時すでに遅し。文字を連ねていく過程で、一文字のみを見つめず、紙全体を俯瞰してまっすぐに連なっているかを逐次確認しましょう。少し曲がっていることに気付ければ、そこでしれっと修正が可能です。
5.都度ペン先で中央線を確認する
指さし確認をするイメージで、書いている途中で、そこまでの行が曲がっていないか、真っすぐを実際に手を動かして確認するのも良い手です。
6.字幅を参考にしない、前の文字につられない
先述の通り、文字には様々な形があります。そのため字幅はまっすぐ書くことに全く参考になりません。また、これもよくある話なのですが、すぐ前の文字に囚われすぎてしまうのも×。あくまで全体を眺め、文字の行列がまっすぐになっているかを確認しましょう。
7.中央線を確認しやすい漢字をうまく捉えて
「中」「川」「車」「木」「土」などは、分かりやすく縦画が中央線となるし、また「立」「回」「大」「実」「黒」など左右対称系の文字は中央線がどこを通るか分かりやすい。これらの文字が出てきたときには中央線を確認するようにしましょう。
8.字間隔を開けて文字を配置していく練習
これは実用というより筋トレ的練習ではありますが、文字を飛び石のように字間隔をかなり開けてまっすぐ配置していけるか、という練習はかなり効果的です。お試しあれ!
9.どうしても曲がってしまう場合は中央線の補助線
練習しても、どうしても曲がってしまう・・・という場合には、中央線の補助線を引いて、その上に書いてみましょう。ただこの練習は、白紙でしこたま練習した後にするのがおすすめ。「まっすぐってここだったの!?」という体感を得やすいです。
平安時代はまっすぐ書かないことが正義だった
最後に。
まっすぐ!まっすぐ!と申し上げてきましたが、平安時代には文字をまっすぐ書かないという流儀も存在しました。「平安かな」の「散らし書き」という書道のひとつの流儀があり、現在でも多くの書道人が好んで取り組んでいます。
行が自然と右流れになっていくのが見て取れると思います。これはまっすぐではありませんが、自然な印象がするのではないでしょうか?
文字の多くは左上から始まり、右下で終わる、そのすぐ下あたりから次の字を続けると右流れになっていく。そんな感じなのかなと思います。
まっすぐ書くよりも”自然さ”で言えば、こちらの方がもしかすると”自然”なのかもしれません。
文字の中心をビシっとまっすぐ貫いていく。
色々と説明してきましたが、実はこれって厳密にフリーハンドの手書きでやるのは案外難しいものです。
だからこそ、中央がビシっと揃った、一本筋が貫かれているものには感動さえ覚える整然さが宿ります。
試してみたけどよく分からない・・・!などあれば、お気軽にコメントお寄せください^^
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