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今は金なり。将棋の駒に見る草書体の話

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左:書道家タケウチ 右上:書道家板谷栄司with鯖大寺鯖次朗 右下:ジャズギタリストタナカ


皆さんは、将棋は嗜みますか?
筆者はやらない(できない)のですが・・・^^;

前回の草書体の記事を書いていて、そういえば将棋の駒の「金」!と思い当たった次第。

この話のYouTube版はこちら↓↓↓


将棋の駒の文字


将棋の駒は各種様々ありますが、お高い駒の文字は、江戸時代末期の書家巻 菱湖によるものが多いようです。

▼巻 菱湖(まきりょうこ)
巻 菱湖(1777-1843年)は、江戸時代後期の書家・漢詩人・文字学者。
「菱湖流」と呼ばれた書風は、幕末から明治にかけての書道界に大きな影響を与えた。幕末の三筆の一人。
(市河米庵(いちかわべいあん)/貫名菘翁(ぬきなすうおう)/巻 菱湖(まきりょうこ))

(Wikipedia巻菱湖より抜粋)
江戸時代の能書家巻 菱湖の文字


駒を裏返すと草書体!


将棋の駒の詳しい動きは省きますが、「成る」と駒を裏返しにします。そうすると、「銀将」「桂馬」「香車」「歩」は全て「金」の文字が出てきます。いわゆる【成銀(なりぎん)】【成桂(なりけい)】【成香(なりきょう)】【と金(ときん)】です。

王将 ⇒ -
飛車 ⇒ 龍王(りゅうおう)
角行 ⇒ 龍馬(りょうま)
金将 ⇒ -
銀将 ⇒ 金【成銀(なりぎん)】
桂馬 ⇒ 金【成桂(なりけい)】
香車 ⇒ 金【成香(なりきょう)】
歩  ⇒ 金【と金(ときん)】

実際の駒はこんな感じ↓↓

あきこ先生の初めて将棋教室より

どれも裏は「金」で、くずし字です。
「銀将」⇒「桂馬」⇒「香車」の順に裏の「金」のくずし方がはげしくなっていきます。

香車の裏の「金」は、清水寺で書かれる2016年の今年の漢字の書き方と同じです。(ちなみに2021年も「金」でしたが、こちらは普通の書き方でした。)


「と金」は「今」!?


歩兵の成ったものを「と金」(ときん)、または「と」と言います。先述の通り、「銀将」⇒「桂馬」⇒「香車」の順に裏の「金」のくずし方が大きくなっていくとすると、「金」の慣れの果て!?と思いますが・・・

どう見てもひらがなの「と」と見える「と金」ですが、各種字典には「金」が「と」と書かれる事例はなく、実は「今」という文字の草書体、という説が有力なようです。

アプリ「Yunzhang」 「金」草書体
アプリ「Yunzhang」 「今」の草書体
最右下のものは「と」ですね

「今」の音読みは「キン」。「金」の1,2画目のカサの部分も同じ。これ以上くずせないから、これで代用しよう、という感じだったのかもしれません。

「金」=「と」が広まるあまり、カタカナの「ト」が書いてある駒もあるようですが、これは誤りではあるものの、俗的に市民権を得たものと考えられます。


字って色々ありますね、という文字大海原の小ネタでした!



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