「八万三千八」なんて読む?漢数字、和歌の世界。
最近我が家に「算数おもしろ大事典IQ 増補改訂版」というぶあつーーい算数の本がやってきたのですが、その中の1ページに、
「三十十百九 三千百三三四八 一八二 四五十二四六 四百八 三千七六」
こんな和歌がありました。漢数字ばかり!でもれっきとした和歌、です。
似たようなものとして、過去記事で万葉仮名のざれ書きを扱いました↓↓
この話のYouTube動画はこちら↓↓
ざれ書き(戯書)は奈良時代~飛鳥時代
「二八十一」⇒「二 八十一」⇒「二(九×九)」
⇒「にくく」(憎く)と読む
「十六」⇒「四×四」
⇒「しし」(獅子)と読む
「二五」⇒「十」
⇒「とお」と読む
「三五月」⇒「三×五」(⇒十五夜は満月)
⇒「もちづき」と読む
例えば、上のような九九を使ったとんちのような、洒落のような読ませ方が、日本最古の歌集「万葉集」(7~8世紀頃成立)に実際に使われています。
※数字の回でもお話しました。
この頃、時代は飛鳥時代(592-710)~奈良時代(710-794)。万葉仮名(要は、漢字の当て字、「夜露死苦システム」)を使っていた頃の話です。まだ平仮名も作られる前。
想像ですが、漢字という文字を得た日本人が、自国の言葉を書き表すためにとことん文字と向き合い、戯れる必要があったことからこのようなざれ書きが生まれたのでは。平仮名ができていないわけなので、今のような漢字かな交じり文は無かったわけですし。
文字を使って使って使い尽くして、自分たちの言葉を自由自在に書き表せるようになっていったのかなあと。
江戸時代にもあった漢数字の和歌!
三十十百九 三千百三三四八 一八二 四五十二四六 四百八 三千七六
冒頭にご紹介した、
「三十十百九 三千百三三四八 一八二 四五十二四六 四百八 三千七六」
という和歌。読めますか・・・?
三十十百九 さととおく
三千百三三四八 みちもさみしや
一八二 ひとつやに
四五十二四六 よごとにしろく
四百八三千七六 しもやみちなむ
漢字かな交じりの書き方をすると、
「里遠く道も淋しや一つ家に夜ごとに白く霜や満ちなむ」
簡易的に現代語訳するなら、
「人里離れた淋しい一軒家の周りに毎夜白い霜がおりる」
万葉集の中にあるような九九を使った二段階のひねりではなく、無理やり漢数字をあてているといった雰囲気です。
これは江戸時代の数学書「算法童子問」(1784年)に載っている和歌です。
万葉仮名が使われていた時代から1000年も経っているわけなので、文字を書き表すための戯れというわけではないでしょう。算数の教科書的なものの中に数字への親しみで遊びとともに生まれたものなのではないかと思います。
八万三千八 三六九三三四七 一八二 四五十三二四六 百四億四百
続いて。
「八万三千八 三六九三三四七 一八二 四五十三二四六 百四億四百」という和歌。軽井沢近く、碓氷峠(うすいとうげ)の頂上、熊野皇大社の境内にある石碑に刻まれたもの。
八万三千八 やまみちは
三六九三三四七 さむくさみしし
一八二 ひとつやに
四五十三二四六 よごとみにしむ
百四億四百 ももよおくしも
漢字かな交じりの書き方をすると、
「山道は寒くさみしし一つ家に夜ごと身に染むもも夜おく霜」
簡易的に現代語訳するなら、
「山道は寒くてさみしい 一軒家に夜を重ねるたびに身に染みる多くの夜におりる霜よ」
先ほどの和歌もそうですが、もちろん普通に漢字かな交じりで書いた方が断然分かりやすい・・・!だから意味の分かりやすさのためでは毛頭なくて、やっぱり遊び心。あるいは暗号!?
それにしても先ほどのものとよく似た意味合いの和歌ですが、関係性は不明。詠まれたのはもっともっと昔平安時代!?という説があります。平安時代末期の僧侶武蔵坊弁慶が逃避行の際に心中を詠んだとか・・・!?
バカリズムの新いろは歌
漢数字のみの歌とはちょっと違いますが、数年前にお笑い芸人バカリズムさんが作ったいろは歌が話題になりました。
いろは歌とは、47音の音を漏れなくダブりなく使って作られ、それでいて意味の通る秀逸な歌。バカリズムさんは現代版のそれを秀逸に作ったわけです。
「漢数字だけで歌を作ってみよう」「一文字もかぶらず47音使って歌を作ってみよう」、こうしたある種の制約を自ら課した遊びは平安時代頃から現代まで楽しまれています。
遊び尽くしたその先には、自ずと新しい世界が立ち現れているのかも・・!
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