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「接筆」を制す者は文字を制す!?【美文字の極意②】

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左:書道家タケウチ 右上:書道家板谷栄司with鯖大寺鯖次朗 右下:ジャズギタリストタナカ


以前、美文字最大の極意!ということで起筆の話をしました↓↓


今回の話は、起筆に続き、美文字の極意接筆」!!です。

この話のYouTube版はこちら↓↓



「接筆」って??


おそらく書道用語?の「接筆(せっぴつ)」。

例えば、「月」という文字を書くとき、

接筆は5か所

左から、
接筆はどこもぴったりくっついている
横画2本の右側が離れている
横画2本の左側が離れている
横画2本の両側が離れている+2画目の出だしも離れている
横画1本目は両側離れ、最終横画は左側離れの右側はやや突き出している

「白」であれば、

左から
接筆はどこもぴったりくっついている
2画目の出だしが離れている+横画2本の右側が離れている
2画目の出だしが離れている+横画2本の両側が離れている

接筆」のイメージつかめたでしょうか?

マニアックな・・・!?まあそうかもしれませんが、この接筆、本当に大きく文字面全体のイメージを変えるものなので是非着目していただきたい・・・!!

※これは文字の「正しさ」の話はしていません。言ってしまえばどれも正解。あくまで文字の演出、雰囲気作り、好みの話です。

まとめると、接筆とは、

線と線がくっついている、離れている
線に線が突き刺さっている など
つまり、線と線が接するところの状態

のこと。

接筆は、「文字を上手く書きたい」「文字を使って印象的な画面を作りたい」というときのひとつの大切な要素になりうる・・・!


接筆①くっつける/離す

さて、先ほど挙げた「月」「白」。皆さんはどれが一番”良い”と思いますか?あるいは”好き”ですか?

接筆をどこも離さずぴったり書いた一番左も文字は
・きちんとしている
・抜かりない
・黒が多い
という印象がするのではないでしょうか。ネガティブに言えば、やや”窮屈”という印象がするかもしれません。

一方で接筆を離す書き方は、
・自然さがある
・こなれている
・小気味よい
・明るい
などと感じるかもしれません。ネガティブに言えば、きちんとしていない、スカスカしているという印象を持つ人もいるかもしれません。

筆者は普段、手書き文字が苦手な方に指導をすることがありますが、皆さんにどれが好きかとお聞きすると案外接筆が離れたものが大人っぽく見えて好き!という声をよく聞きます。

接筆を離すと実質的に黒の部分が減り、その分白が増えることになるので、文字の印象が明るくなります。

ちなみに筆者は接筆を結構開けて書く方ですが、雰囲気が良くなるというメリットの他に、きっちり書くより楽というメリットも享受しているような気がしています。


字典を見てみる


愛用している中国の字典アプリ「Yunzhang calligraphy | 云章书法字典」。「月」「白」の楷書体のページです。

各文字の下に書かれているのは、この文字を抜粋した石碑名や書いた人の名前

こうして見ると、すべての接筆がぴったりくっついている文字の方が少ないことが分かります。
もちろん字面を作るのは接筆だけではありませんが、接筆だけに着目してみても違いが見て取れて面白いのではないでしょうか。


接筆②突き刺す


接筆は離すだけではなく、突き刺す、こともできます。

最初の画像の最後の「月」、最終画が少しだけ突き出していました。突き出すアイディアは次のような文字にも使えます。

たとえば左払いに、たとえば縦画に、ちょんと引っかけるようにして突き刺します。ちょっと本格的っぽい感じがしない・・・?

「木」は左払いの接筆を離している

ただし突き出すときは、起筆を引っかける程度にしれっとやってください。あんまり出過ぎると間違い!?になってしまうかも。


接筆③四角いパーツの組み入り方


次の画像の上段と下段、丸の付いている箇所の違い分かりますか?

これも接筆の話。
これには法則性があり、きちんとした楷書体を書く際には必ずと言っていいほど、このような線の組み入り方になります。

上段グループは横が出る。
「口」「中」のように、四角の中身がない、あるいは四角を突っ切るものしかない場合には、横が出ます。四角を書く際、三画で終わる場合、とも言えます。
もちろん「品」「仲」のように漢字の一部のパーツとしてこれらが現れる際にも適用されます。

下段グループは縦が出る。
「日」「目」「田」「西」のように、四角の中に何かが入る場合は縦が出ます。
もちろん「昌」「畦」「茜」などの漢字の一部のパーツとしてこれらが現れる際にも適用されます。

ちなみにフォントの場合はこれらが適用されないことも多々あるので、手書き文字の場合、ということになりそう。


フォントの接筆を見てみる


フォントは基本的に接筆をぴちっとくっつけているものが多いですが、こうして並べてみると、接筆に色々と違いがあることが分かります。

①~④ゴシック系、⑤~⑧明朝系、⑨~⑪手書き系、⑫その他

「月」の接筆は、⑦⑩⑫が離れています。手書き系は起筆(線の出だし)や収筆(線の終わり)見せて、接筆ギリギリくっついている感じです。
「新」は沢山接筆がありますが、「立」の3,4画目、「木」の縦画と左・右払いが着目どころ。

これらはフォントのサイズは同じ、それぞれ太さや影を付けていないノーマルな状態。接筆含め、太さなどでフォントが醸したい雰囲気・ニュアンスが、こうして並べてみることでよく分かるのでは。

①~④ゴシック系、⑤~⑧明朝系、⑨~⑪手書き系、⑫その他

「夏」の「目」の中の横画2本は⑨~⑪のように手書き系の接筆は開いています。囲われた四角の中に2本も線があるのは窮屈なので、毛筆でも硬筆でも手書き時にはこうして点のように書くことが多いもの。
最終画は、④⑨⑩⑪⑫で突き刺さっています。

ひらがな「さ」はゴシックは2,3画目が連続して書かれるよう。「や」の2画目は接筆様々。各フォントのデザイン性が見て取れます。


ロゴとかその他


接筆で思い出されるロゴと言えば、国立新美術館。佐藤可士和さんのデザインのもので、美術館が開かれた場所であるようにと願って、接筆をバラバラに離したデザインとなったそうです。

これは筆者の敬愛する服のブランド、山下陽光さんの「途中でやめる」の野草Tシャツ。もはや接筆という問題ではなく線が抜けていますが、不思議と「野草」と読むことができます。(「途中でやめる」ブランドの文字はどれも本当に魅力的!)

あとは、1980~90年代に流行した丸文字。こちらも接筆的観点で見ると、かなり突き刺しが多いことが分かります。

(産経WESTより)


接するか、接しないか。
突き刺してみるか。
四角の線の組み入り方はどうか。

手書きのみならず、接筆は字面を変える大きな要素!
ちょっとこだわって見ると、文字変革が起きるかも・・・!!



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