手を差し伸べられなかった|私を「うにうに」と呼んだ猫
はじめに
ミミさん(勝手に名前出してすみません)からコメントで「どうして、うにうにという名前なのですか」という素朴な疑問を頂きました。これには、いつか公開しようと思っておりましたが、自分から発表するのは恥ずかしいので、今回の質問に答える形で、語らせて頂きます。コメントが載った記事はこちら
「うにうに」は海でとれる雲丹(うに)ではない
雲丹が好きだからうにうにだと、思われていると思います。確かに雲丹は大好きですが、好きな食べ物を名前につけたわけではありません。
埼玉県のとある駅
私が昔住んでいた地域にある駅は、駅猫天国でした。駅猫たち(非公認)はプラットホームの二番線に住みつき、裏にあるお花畑と自由に行き来しておりました。その中で上の写真の子は一番の大きな猫でプラットホームでの出現頻度も一番高かったです。男の子で私は「駅長」と名前をつけていましたが、他の方は「チャー」と呼んでいたようです。高齢です。
この子は、「駅長」の次に大きな猫でした。駅長と仲良しで、ちょっとやんちゃな所もありますが、優しい猫でした。女の子で私は「バイト」と名づけました。他の方は「シマちゃん」と呼んでいたようです。若いです。
写真手前の子(奥は駅長)はお婆ちゃん猫だと、駅猫好きの方が教えてくれました。臆病で、駅長やバイトとはちょっと距離を置いていましたが、喧嘩しているわけではなく、二頭とはつかず離れずの距離にいました。私は「ばーにゃ」と名づけました。他の人は「クロちゃん」って呼んでたかな?
新入り
先ほど紹介した三頭は駅の常連ですが、表紙の画像の子は何回かだけ会った仔猫です。
私が駅のホームの端っこでたたずんでいると、小さな猫が全速力で駆け寄ってきて、スライディングしながらお腹を見せてきたのです。びっくりしました。そのあと起き上がってきて、私に向かって、
「うにーうにー」
と嬉しいのか、ご飯が欲しいのか、鳴いてきたのです。
当時は、駅猫に餌を与える人がいて、私からもご飯がもらえると、思ったのでしょう。ただ、その行為に対して、賛否両論があることを知っていたので、私は基本的に、地域猫に餌はあげないスタンスを貫いています(ガリガリに痩せていたら考えます)。その時も、私は優しく声はかけて撫でるけれども、食べ物を与えませんでした。しかし、仔猫はそんな事に構わず、私の足元でひたすら「うにー、うに―」と、電車が来るまで鳴き続けていました。
それから、一二度その仔猫を見ただけで、もう何処かへ行ったのかいなくなってしまいました。あの時、拾って飼ってあげれば仲良くできたような気がして、今でもあの猫のことを考えます。「新猫」と名前をつけました。
「あの子は、私を「うにうに」と名づけたのかもしれない」
そんなバカげた空想をして生活していると、通りかかる猫たちのなかに、
「うに―、うに―」
と鳴きながら寄ってくる子がいることに気づきます。
「もしかして、私は猫界では「うにうに」という名前で通っているのかも」
そう思って、ペンネームでは「猫からつけられたあだ名」としてうにうにを名乗っています。
猫はいなくなった
画像のように、猫天国だった駅も、駅長とばーにゃの病気をきっかけに、猫たちはいなくなりました。お世話をするボランティア(?)の方たちが、駅長とばーにゃを病院へ連れて行き、「もう外では暮らせない」と判断したようで、それぞれボランティアの方が探した里親の家庭に貰われていきました。バイトは駅長と大の仲良しでしたが、駅長が引退すると、彼女もすぐにいなくなりました。彼女は一番体力があったので、どこか別の縄張りを探したのかもしれません。
今では駅裏のお花畑とプラットホームの間には塀ができて、猫たちが入ってくることもなくなりました。
最後に
電車を降りると、太った駅長(推定12キロ)が、足元にまとわりついて出迎えてくるのは嬉しかったです。餌をあげたこともないのに、可愛い声で挨拶してくれました。バイトも可愛かったし、ばーにゃの奥ゆかしさも好きでした。この三頭と過ごした日々は宝物でした。それに加えて少し会っただけの新猫の挨拶もまだ思い出に残っています。当時は猫を飼ったことがなかったので、駅長とばーにゃが弱っていても保護してあげることができませんでした。その勇気はありませんでした。小さな新猫にも手を差し伸べられませんでした。
今でも、たまにその駅を通った時に、猫がいないことが分かっていても、ホームに猫を探してしまいます。
そんなほろ苦い思いでの上に、人生はじめて飼った猫ちゃんが、今日もふて寝しています。下の記事です。
この子の可愛さに一目ぼれしたのがきっかけですが、猫の魅力を最初に教えてくれたのは、駅長を始めとする駅猫たちです。
宣伝ですが
この駅猫たちや街で出会った猫さんたちは「天国へ行く前に、猫になった」に多くが登場します。現在は他の小説サイトに乗せていますが(現在も連載中)、もしかしたらnoteに移すかもしれません。その時は読んで頂けると幸いです。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。