水深800メートルのシューベルト|第196話
お婆さんは驚いた顔をして振り返り、ママは投げ遣りになって怒っていたのに、急に幸運が舞い込んだような顔に変わった。
「いいの? 本当に、アシェルは。我慢することないのよ」
オリビアさんはしゃがんで僕の目を見てきたので、頑張って目を逸らさないようにした。
「少しの間……だったら。僕、お婆ちゃん大好きだし」
泣かないように目一杯笑ってみせた。「お婆ちゃん、僕がいても困らない?」
「ええ、構いませんよ。でも、ママといないと寂しいでしょ?」
「平気だよ」
「この子はオリビアさんにとって、育てやすい子だと請け負いますわ」ママが、朗らかな声で話した。「悪戯っ子で、時には困ったこともあるけれども、聞き分けがとってもいいのよ。例えば、家の中にいて、家事の邪魔だと思えば『外で遊んでいらっしゃい』と強く言えば、日が暮れるまで外にいてくれたり、二晩くらいならお留守番だっておとなしくできるのよ」
「きっとママのことが大好きだからでしょう」
お婆さんは困った顔をしていた。