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note200日連続投稿記念。純文学風掌編小説「棘」

はじめに

こんにちは。吉村うにうにです。小説を主に書いております。この度は、2021年10月17日から数えて、5月4日で連続200日投稿を記録いたしました。これもひとえに読者のみなさんの存在や他のnote投稿者に刺激を受けたおかげです。ありがとうございます。

これまで何を書いてきたか

noteを始めたきっかけは「ショートショートnote杯」です。普段は他のサイトで長編を書いており、たまにコンテストがあればショートショートにも参加しているというスタイルでした。noteさんでもショートショートのコンテストがあったので参加してみたのが昨年10月17日です。

ショートショートを毎日欠かさず執筆して(自分なりに)頑張りました。コンテストは終わりましたが、noteは執筆を続けやすいシステムだと感じて、これでnoteを止めちゃうの勿体ないなと感じました。どうせなら連続投稿頑張ろうなんて。でも、私が毎日沢山書くのは体力的に無理です。それなら毎日ちょっとずつ積み重ねて長編を書こうと思ったのがこちら。

せっかく200日連続投稿したんだし……

「800シュー」はおかげさまでまだ継続中です。書き続けているうちに、ついに200日投稿達成しちゃいました。感慨深いです。そういうわけで、自分で何かお祝いのようなことをしたいなと思い、何か自分が書いたことないものを書こうかなと考えました(100日の時には何もしていないのですが)。何を書こうか迷ってとりあえず、200日なので200という数字で色々検索してみましたが、目ぼしいものがありません。見方を変えて、私がnoteを始めた10月17日で検索してみました。すると

「川端康成さんがノーベル文学賞を受賞」

と書いてあるではありませんか。川端康成さんといえば、純文学。それで、これを機に、純文学っぽい作品を書いてみようと思い立ちました。初挑戦です。でも純文学って何だろうと思い、読んでみたのがこちら。

川端康成さんの「掌の小説」を読んでみて私が思った「純文学」とは

①キャラクターやストーリーよりも、文学表現や雰囲気に力を入れた作品。
②心理描写は少ない(かもしれない)、表現から読者に察してもらう。
③会話文の最後に〇がつく。
と感じました。この解釈は純文学作品をもっと深く読みこんでいけば更新されると思います。とりあえずはそんな雰囲気なのかなあと。
というわけで、書いてみました。

掌編小説「棘」

    棘
                     吉村うにうに
 深夜のファミリーレストラン。精神科研修中の医師である宇似うには、熟慮の末、郊外の店を待ち合わせの場所として選んだ。
「こんな所に来たの初めて。すごい、ドリンクバーっていうの? 先生も飲むでしょ。」
 痩せぎすな少女の鎖骨。細い首。グラスを持つ手には自己嘔吐の勲章。医師は彼女の好意を尊重し、手ぶらでテーブルに戻る。
「先生は、何歳の時に彼女がいたの? 令奈れなはねえ、いたことがないの。」
 上目遣いだが、睥睨するように三白眼で男を見つめる。医師は身を震わせ、ストローで茶色の液体を慌てて啜る。
「令奈はねえ、お酒を飲まないの。お母さんがアルコール依存だったから。先生が飲む人だったら付き合えないなあ。」
「飲まないよ。」
 彼女の空間に響き渡る声に、宇似は目を逸らし、周囲を見回す。席にも窓の外にも知り合いがいないことを確認する。
「ねえ、この前の当直の日、令奈の届けたお弁当食べてくれた? サプライズだったの。」
 彼は、大きく見開いた無垢な目に、敵意の目を向けることなく小さく首を振った。
「回診で忙しかったんだ。」
「いいの。また作るね。」
「いや、いいよ。気持ちだけで。」
 宇似は、少し冷たい声を装う。彼女は、自分のために何杯も作った色とりどりのドリンクの一つに口をつける。
「これ、美味しくないや。先生にあげる。」
 突き出されたグラスの中で、波が生じて、小さなはみだしがテーブルを濡らす。
「お医者さんって、性欲強いんだってね。先生もそうなの? 令奈のこと襲わないでね。」
「襲わないよ。」
 握り拳を思わず作ったが、それをストローの袋を弄ぶことに転換する。
「ねえ、この前、病院の近くで殺人事件があったの知ってる?」
「うん、怖いよね。」
 少女は血色の悪い顔に瞳だけを輝かせて言った。
「ねえ、こんなレストランに呼び出して、令奈を殺さないでね。」
「そんなことしないよ。もう遅いし、帰ろう。」
 宇似は、平静な表情で突き放すように言った。
「もう遅いもんね。また会ってくれる?」
 彼は、伝票を持つと、目を合わせず小さく頷いた。少女は、レジの後ろから懇願するように男の袖を引いた。
「ねえ、どうして令奈が教えた番号に電話くれたの?」
「君のことを知りたかったんだ。」
 医師は、華やいだ笑顔になった彼女のために重い扉を開けた。そして愛想笑いを浮かべ、カルテに書いてあった珍しい病名を思い起こしていた。
  
          (了)

最後に

200日連続で投稿して参りましたが、これからも続けられるという自信はありません。ですが、できるだけ欠かさず、少しづつでも執筆を続けて、自分も読者のみなさんにも楽しんで頂ければと思います。また、これからもみなさんの作品も楽しませて頂ければ嬉しいです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。



                                           


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