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水深800メートルのシューベルト|第706話
その時、銃に指が引っ張られて痛みを感じると同時に、銃をひったくられた。
「やめろ! アシェル・スコット。訓練もしないで何をしている!」
突然の怒鳴り声に、反射的に跳ぶように後ずさり、メッシュの金網が揺れた。目の前には教官の熱い胸板があり、それがグイと前に押し出されてきた。僕は、本能的に退こうとしたが、壁に阻まれた。
「どうして銃を二丁持っているんだ。西部劇のガンマン気取りか? 答えろ! アシェル・スコット」
彼の目は怒りで燃えているようだった。僕はぜいぜいと息をあえがせながら、何かを言おうとした。
「銃がジャムで……」
それ以上、口から何も出てこなかった。