すると、昂って不安だった気分がいくらか落ち着いてきた。きっと一発撃ったらもっと波が静まると思い、銃のスライドを、習った通りに左手の指を揃えて掴んで引いた。ガチャリと音がした。
左右の人影が腕を前に突き出して構えているのを見て、僕も的に向かって照準を合わせた。遠くで小さく「撃て」という教官の声が聞こえ、周囲から煙が立ち上るのを見て、僕も慌てて引き金を引いた。反動で手が跳ね上がりそうになったが、手が硬直していたので、実際銃口はほとんど動いていなかったと思う。標的を見ると、黒い人影の隅に小さな穴が開いていた。
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