
【開催レポート】近代ナリコ「女たちのエッセイ」読書会 2025年2月22日(土)
久々に水野ゼミの本屋主催の読書会を開催しました。
課題本は、近代ナリコ『女たちのエッセイ――新編 For Ladies By Ladies』(2024年、ちくま文庫)
2003年に『FOR LADIES BY LADIES 女性のエッセイ・アンソロジー』のタイトルでちくま文庫から発行された本書。一時品切れとなっていたようですが、タイトルも内容も一新して20年ぶりに復刊されました。
その復刊のきっかけとなったのは、水野ゼミの本屋で起こったあるできごとです。詳細は瀧波ユカリさんが執筆した本書の解説でご覧ください。
解説中に水野ゼミの本屋も初代店長(青)さんも登場します。
水野ゼミの本屋と不思議なご縁で結ばれた本書。
これは弊店で読書会をやらねば、と意気込み、1回生(浅)さんが人生初の読書会主催に挑戦しました。2024年12月中旬に開催予定でしたが、インフルエンザ流行のため開催を延期。
紆余曲折を経て、このたびようやく開催の運びとなりました。
写真の下からはネタバレがありますのでご注意ください。

参加者は7名。男性が5名、女性が2名。
年齢は10代から60代。
老若男女が集い、多様な意見が交わされる雰囲気です。
この読書会は、他人の意見を否定せず、多彩な読み方があることを確認し、自身の読みの幅を広げることを目的としています。
終始、和やかな雰囲気で読書会は進行しました。
本書には26編の短編エッセイが収録されています。
タイトルの通り、執筆者は全員女性です。
読書会ではまず、26編の内、好きなエッセイを順番に挙げていただきました。
平野レミ「ドレミ前奏曲」。
複数の方がこの作品をお気に入りに挙げて、人気でした。
あの破天荒な料理の原点は、自由奔放な幼少期と思春期にあった。
幼少期は裸足で喧嘩三昧。思春期にはボーイハント。黒豆の味のファーストキッス。遠藤周作に怒鳴られる。辺見マリと間違えられてラジオ番組のレギュラーとなったことがきっかけで結婚。などハチャメチャなエピソードが満載です。
伊藤雅子「『主婦的話法』より」
次に人気だったのは、主婦の問題を中心に市民教育を推進した公務員のエッセイ。夫の転勤のため自身の人生設計を振り回される。夫の社会的地位で妻の格付けがされる。女性が小さな幸せをみつけて自分をなだめ、大事な問題から目をそらすことを処世術にしてしまったことを柔らかな筆致で鋭く指摘しています。
如月小春「二十六回目のバースデイ」
20代半ばの女性は華やかに見えるが、経済力は不安定、身分保障は曖昧、都市の消費文化の泡沫と浮遊し、ほどほどの結婚話にうなづく。1980年代日本の都市文化の中の女性の立場を浮き彫りにしたエッセイ。
さすがに現在はエイジズムに対する見方も変わったかな、というご意見でした。
按田優子「『たすかる料理』より」
「自炊=自立」という主張は納得。社会人として初心に戻りました、とのご意見も。
熊井明子「幻の姉のように・・・」
「ひまわり」、「それいゆ」、「少女の友」などの少女雑誌への憧憬を書いたエッセイ。
10代の参加者からは、雑誌を交換し合って読む、という文化が想像し難い、というご意見。インターネット、サブスクが無く、コンテンツが貴重だった時代は、貸し借りのコミュニケーションがありましたね。

その後はフリー・ディスカッション
次のようなテーマやご意見が出ました。
冒頭2編は・・・
冒頭の2編、戸塚文子「『おんなのこ』論」、桐島洋子「ガールズ・ビ・アンビシャス!」の論調は攻撃的で、ちょっと怖かった、というご意見。
読み切れるかな、と不安を感じたが、その後のエッセイは多彩なテーマで、面白かった。
母と娘の関係
本書の収録エッセイには著者の母親のエピソードが頻発する。男性の執筆するエッセイでこれほど多く父親のエピソードは出ないように思う。娘の人生にとって母親はそれほど影響が大きいのだろうか。
ジェンダー規範の変化と世代の対応
現在50代以下の男性は、会社のコンプライアンス研修の影響で、(表面的には)ジェンダー規範に基づく行動を控える傾向がある。他方、60代後半以降の男性はそのような研修を受ける機会も無かったので、自律的に意識を変えようという努力がないと姿勢は変わらないのではないか。
読書会後は懇親会。
巻末解説に登場する弊店初代店長(青)さんが関西を離れることになったので、壮行会も兼ねたパーティーでした。

文責:水野五郎
以上