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Vol.8 「農業、カフェ、販売……様々な食の仕事を経験したから実現したい夢」

今年6月新たに社外取締役に就任した小脇美里さんは、ライフスタイリスト、ファッションエディター、ブランディングディレクターとしても活躍しています。働く女性やママたちから絶大な支持を集める小脇さんが、オイシックス・ラ・大地でそれぞれの輝きかたを見つけて働く女性のリアルな声をインタビューしていくこの企画。

第8回目は、大地を守る会の生産本部で働く関根由紀さんです。大学を卒業後、経験も知識もなかった農業の世界に飛び込み淡路島に移住した関根さん。地域活性化のために和太鼓奏者も経験し、農業や過疎地域が直面する問題を実際に体感しました。その後、カフェ勤務などを経て、大地を守る会に加わりましたが、そんな様々な経験を経た彼女が描く食の世界を聞きました。

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オイシックス ・ラ・大地 社外取締役
小脇美里さん
ファッションエディター/ブランディングディレクター。令和初のベストマザー賞・経済部門受賞。鯖江市顧問SDGs女性活躍推進アドバイザー。ママだからこそ実現できる取り組みを発信する新スタイルライフスタイルメディア「MOTHERS編集部」を立ち上げ、編集長を務める。2歳娘と6歳息子の二児の母。

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大地を守る会 生産本部 農産セクション
関根由紀さん
農業と和太鼓奏者の兼業、地元密着型のカフェ勤務、保険代理店営業など多様な経歴を経て、2019年入社。店舗外販売本部で東京駅構内での販売などを経験し、2020年4月より大地を守る会生産本部農産セクションに異動。四国・中国地方や群馬県・千葉県を担当している。

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小脇さん:
今はどんなお仕事を担当されていますか?

関根さん:
いまは大地を守る会の農産セクションで、日々農家の人々とコミュニケーションや、毎週の出荷や出荷の品質管理などをしています。また事業部がカタログやサイトで販促をかけるための特集を組んだりする際に、おすすめの野菜を伝えたり、一緒に野菜セットの内容を考えたりもします。
一言で表すと、バイヤーなのだと思います。「何曜日に何トンこのじゃがいもを仕入れてほしい」などと受注者に依頼したり、量を調整したりするのです。野菜は、天候にもとても左右されます。台風が来るなら前倒しして仕入れ、商品をストックしておこうかという調整も日々ありますね。

食の原点を見たくて大卒後に農家に飛び込む

小脇さん:
実は関根さんご自身も農業をやられていたんですよね?

関根さん:
はい、淡路島で農業をしていました。出身は茨城ですが、大学を卒業後、全国で大卒で経験のない若者を受け入れてくれる農家を探したら、受け入れてくれたのが淡路島の農家だったのです。

小脇さん:
え?!ご自分であちこち探されたのですね。大学で農業を専攻していたのですか?

関根さん:
実は全く違います。大学は、経営学部でした。いずれはカフェをやりたいと最初は思っていました。しかし、将来的に食育もやっていきたいと思った時に、もっと食の原点から知りたいと思ったのです。

小脇さん:
大学生でそんなに明確に考えていたなんて、すごいですね。

関根さん:
周囲には、あまりそういう人はいなかったので、農家で働くと言ったときには反対されました。でもやっぱり現場で働いてみたかったのです。
定年退職をされたおじいちゃんがやっている淡路島の農家へ行き、 大学卒業後2年間そこで働きました。寮生活を送り、淡路島のスーパーに卸すための野菜を作っていました。
しかも、地域活性化の一環で和太鼓奏者にも挑戦したんですよ。

農家の現場で衝撃を受けた“自分用畑”と“商業用畑”の存在

関根さん:
野菜を作っていくと、野菜がかわいくなるんですね。すると、少しでも形がいびつだったり、穴が空いていたりすると廃棄しなくてはならない ことが残念に感じるようになりました。こうした廃棄野菜は、想像以上に多いんです。
これをなんとかしたいと思い、その廃棄ロスになる野菜を持ち帰ろうとしたらそのおじいちゃん先生が「やめろ。俺の家で作っている野菜を持っていけ」と言うのです。自宅のものは農薬を使っていないからです。その時、農薬って何なんだろうと思いました。虫食いを作らないよう、外見がきれいになるためのものであり、自分たちは大切に育てているはずなのに自分たちは食べないほうがいいという矛盾を生んでいるんですよね。
それが私は凄くショックでした。

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小脇さん:
お客様に買われる野菜を育てようと思って農薬を使うのでしょうが、形がいびつだったりすると売れ残るし、悩ましいですよね。

関根さん:
宏平さん(社長の髙島)の著書にもあった「自分用の野菜を育てる畑と商業用の野菜の畑の2つが本当に存在する」ことを私自身も目の当たりにした時に、 「農家さんが売りたい野菜は何だろう」と思ったことと、「食品ロスを何とかできないだろうか」と思ったことが、今につながっています。

小脇さん:
農業の現場にいたからこそ実感されたことが今の仕事へと繋がってくるんですね。

関根さん:
その後、東京に戻ってきて地域密着型のカフェで働きました。大学生の時にアルバイトしていた店長さんが運営しているカフェで、地元の農家さんと契約し、毎週いろいろな野菜を持ってきてもらい、持ってきてもらったものを調理するという方法をとっていました。そこで2年弱働きましたね。

家族の良い思い出に“食”がいつもあったから

小脇さん:
その後、保険代理店でも働いたのですか?

関根さん:
本当はそのままこの業界に転職したかったのですが、それまでのキャリアだと就職が難しいと思い、数字で表せる何かがほしいと思って保険代理店へ就職しました。そこでも2年働き、この会社に転職しました。

小脇さん:
では、念願の仕事をしている感じですね。

関根さん:
はい。私は幼いときから両親が共働きだったので、幼い頃からどうしたら家族が近くにいてくれるのかということを漠然と考えてきました。その1つの方法が、自分が夕飯をつくることだったのです。私が作れば、お母さんが帰宅後にキッチンに立っている時間が短くなり、食卓で話す時間が増えますよね。だから、子どもでも作れる料理や、お母さんの手間を減らす料理を考えていました。小学校3年生くらいからですね。

小脇さん:
そんなに早い時期から!ご両親と一緒にいたいという思いが、原体験になってるのですね。
やはり食は絆になるんですね。

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関根さん:
でも、両親の働いている姿はすごくかっこよかったんです。だから仕事を辞めて一緒にいて欲しいとは思いませんでした。ただ、家に帰ったら私のところにいてほしかった。食事を作ることは、それを叶える手段でした。
私は、食べ物の近くに家族の良い思い出が多かったので、将来的に安心して家族が囲める食卓を作ることに関わりたいと思ってきました。

農家さん1人1人の思いをお客様に伝えたくて

小脇さん:
実際に大地を守る会に就職をされてからは、どんな現場でお仕事されてきましたか?

関根さん:
東京駅にある「大地を守るデリ」(今は閉店)で最初に働きました。

店舗

本社とは離れた現場だった代わりに、月1回の「社内バー」というイベントで様々な部署の人と話す機会がありました。

ある時参加してみたら、大地を守る会の農産バイヤーの人たちがいらっしゃっていて、話すことができたのです。東京駅のデリは大地を守る会の野菜を使っているのですが、「あの産地は天候がよかったんだ」とか、「あの農家さんは性格も几帳面だしね! 」 と、1つの野菜から情景や農家さんの個性が思い浮かび、その情報量に衝撃をうけたのと同時に、その関係性が素敵だとしびれました。
きっと買う方も売る方も、農家さんや事業者の方など、人柄を知るとその野菜も農家も応援したくなりますよね。こういうことが私はしたかったんだと思って、現在の部署に異動希望を出しました。

小脇さん:
デリの店舗で実際に働いてみて、どんなことを感じましたか?

関根さん:
「大地を守るデリ」を訪れるお客様は、やはり食べるものに関心の高い人たちでした。でも、やっぱり話さないと伝わらないことが多いのです。「安心・安全」というだけでなく、人柄も伝えていきたいなと思いました。

日々の食事から体に入っているものに目を向ける

関根さん:
また、裏側の表示を穴が開くくらいまでよく見ているお客様が多いことにも気づきました。外食することを不安に思っている人がこんなにいるんだという衝撃がありました。
そこから自分が食べるものを意識し始めると、見慣れないカタカナの添加物がすごく多いことに気づかされました。

小脇さん:
調べれば調べるほど日本って諸外国で禁止されている添加物も使われていたりしますよね。それは子を持つ親としてはとても怖いこと。忙しい生活の中で安心して食べられる食事がもっと増えるといいですね。大地を守る会やOisixやらでぃっしゅぼーやが、そうした願いを叶えていけるといいなと願っています。

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関根さん:
農家さんと話していて驚いたことなのですが、本当にその土地にあった作物を作っていると、農薬を使った野菜よりも保ちがいい時があるそうです。実際に私のところに届いたそうした作物も、2週間以上持ちが違ってくることを実感しました。新しい添加物を研究するのではなく、自然の力を最大限に活かす、そういう未来のほうがいいなと思っています。

小脇さん:
関根さんは、大地を守る会の社員が執筆している「スタッフ偏愛商品コラム」でも加賀レンコンを使った料理など、商品と一緒に作り方も提案していましたよね。

関根さん:
はい。そうしたおいしい食べ方のご提案も野菜の魅力と共にこれからもっと提案していきたいですね。

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干し芋や梅干しづくり、手しごとを伝えていきたい

小脇さん:
新型コロナの影響で、家で料理をする機会が増えているので、料理の方法などを提案してもらえるのって本当に助かりますよね。

関根さん:
はい、大地を守る会は50、60代の方が多いのですが、今後は30、40代にもターゲットを広げていきたいなと個人的には思っています。私が担当する大地を守る会には世代限らず興味を持っていただけるものがたくさんあると思うんですね。
例えば、「干し芋手作りセット」というのがあるのですが、ずっと続いてほしい商品です。育ちすぎたり大きすぎたりするさつま芋をまとめ、手書きの作り方リーフとセットでお届けします。
さつま芋を切って、天気のいい日を2週間くらい見つけて干してあげれば、干し芋ができあがります。干し芋は昔から大好物なのですが、自分で作れるものだとは思っていませんでした。
大地を守る会のヘビーユーザーは、梅干しやお味噌なども作るといった手仕事を当たり前に日々の中に取り入れている方々が多いです。それをもっと広い世代に伝えていきたいと思っています。

小脇さん:
それはやってみたいですね!息子がちょうどおじいちゃんと一緒に干し柿を作る本を読んでいたのですが、まだ子どもは干し柿を食べたことがないんですよね。無添加のものを買ったら1000円以上して驚きました。昔ながらの良さを再現できるようなキットは、続けていけるといいですよね。

気候に左右される生産の難しさともどかしさ

小脇さん:
お仕事での苦労はありますか?

関根さん:
肝が冷えたのは、梅の手配でした。梅の季節には、梅ジュースや梅酒を作るキットを販売しているのですが、その時期に梅を確保するために2カ月以上前から何度も生産者さんと連絡を取ります。しかし、今年の夏の気候が不安定だったので心配していました。
梅は最後の2週間でグッと膨らむらしいんです。3日前までは「出せるよ(出荷できるよ)」と聞いていたのに、いざ発注を出そうとした段階で「ちょっと今は出せないかも 」と言われてしまって…

話をよく聞くと「お客さんにおいしくないものを出したくないんだよね」と言われました。農家さんのその気持ちがうれしい反面、お客様に届ける立場としては悩ましくもある。受注販売という形なので、それも守りたいし……。何が正解なのか分からなくなってしまうこともあります。

以前は、和歌山が南高梅などで有名でしたが、梅は思い通りに簡単にはできず育てるのが大変なので、名産地の和歌山でも諦めて他の果樹園にしてしまっているところも多いのです。
だから、大企業さえ私達が契約している小規模な農家さんを取り合いするようなことになっています。さらに自社でも加工品をやっている農家さんだと、自分たちの製品用の梅も確保したいと言われ、より梅の確保の難易度はあがっています。

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小脇さん:
実際に淡路島の農家で廃棄されるものを見ていらっしゃったそうですが、大地を守る会ではどのように食材ロスに対応していますか?

関根さん:
傷があるものや規格外品を有効活用する”もったいナイシリーズ”があります。意図せずに生まれるものを商品化するので常にあるわけではないのですが、あまりいい色にならなかった人参、大きさが中途半端な玉ねぎ、ハムの切り落としなどがあります。

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今後の課題は、トマトやナス、キュウリなど1日で大きくなってしまう果菜類をいかに無駄にしないか、ですね。成長や痛みが早く、収穫しきれないときが多いんですね。そこが農家さんが一番困っているところでもあるので、何とかうまくできないかと思っています。

食材の裏にあるストーリーを伝えてつなぎたい

関根さん:
既に取り組んでいることではありますが、さらに「○○さんのトマト」のように生産者さんのストーリーを浮き上がらせて伝えていきたいですね。

小脇さん:
大地を守る会の良さは、1人1人の生産者さんのストーリーが深いんですね。

関根さん:
はい。発注をかけるときも、「この生産者さんだからきれいな野菜を作れる、大丈夫」というこれまでの信頼やストーリーが見えてくることがあるんですね。もうそれを感じると感動しますね。
大地を守る会というブランドが誕生した時は配達ではなく、青空市としてスタートをしました。

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スタッフが団地を回って、そこに近所のお客様が集まって買ってもらっていたんです。「無農薬の大根とうたうだけより、それを持って1本でも直接売りに行こう」という創業当時の思いを知って、私も働きたいと思ったことを今でも覚えています。
新型コロナが広がる前は、生産者さんとの年2回の会合や、生産者さんとお客様が直接会えるような場も多くありました。それを生きがいにしてくれてた人がいるくらい。私は残念ながらまだ交流会に参加できたことがないんです。でも、会員さんから「○○さんの野菜はやっぱりおいしいですね」というようなお手紙をいただくと、食品宅配だとは思えないような生産者さんとお客様のつながりがあるのを感じます。

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小脇さん:
これまで様々なキャリアを積んできた関根さんですが、今後の目標を教えて下さい。

関根さん:
料理を作る人がストレスなく、今あるものを楽しむための食べ方をもっと提案したいです。特にその土地のその時期にあったものをおいしく、楽しく召し上がっていただく。そんな地域に密着した情報をより多くの人に伝えられる人になりたいと思っています。

小脇さん:
それはきっとこれから本当に必要なことで、人と人とがつながってくることですね。関根さんのような熱い思いを持っているからこそ実現できると思います。楽しく食事をするという気持ちや体験を多くの人に伝えていきたいですね。

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