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蒼槍高原

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風、梅、無人駅
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#小説

「無人駅」

「無人駅」

「君は何をしとるんだ…」
僕を迎えにきたその人が、改札の向こう側からすでに、非難の言葉を口にしているのがわかる。ややくたびれているようにも見えるが、その人はやはり綺麗で、若い。呆けた僕をまっすぐ睨みつけながら、人のいない改札を、ヒールを鳴らして歩いてくる。彼女はいつでもヒールを履いているんだった。懐かしい音を聞き、ほっとするのがわかる。
「すみません、先生」
僕が言うと
「ン、とりあえず…」
と一

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