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「北方領土の奪還方法」をロシア駐在中にロシア人とロシア語で議論し考えた

今となっては昔の話で、南国鹿児島にいるとすっごく遠くに感じるのですが、かつて仕事の関係でロシアにいました。最近鹿児島の観光地「霧島神宮」に行った際に「北方領土の返還」が祈られてるのを見て
「こんなん鹿児島で祈っても意味ないやろ・・・」と思うと同時に、
そういえばロシアで北方領土の議論をよくしていたことを思い出しましたので記事にしてみました!


ロシアにいった経緯

総合商社には語学研修制度があり、入社3~6年目くらいの若手が自ら行きたい国を選び、英語圏以外の国で語学&実務研修で2年くらいいく制度があります。
語学がとにかく大好きだった自分も勿論この制度を活用し、やりがいありそうなペルシャ語、アラビア語あたりと迷いましたが、当時勤務先はロシアに日系企業最大の投資をしており、ロシア愛が強い社員が数多おり感化されたのでロシア語を選び、社内試験を受け、無事に派遣頂くこととなりました。

研修中(何故か芸大で留学しました)の寮はおんぼろで、学生と4人部屋だったのでプライバシーは勿論、共用のトイレには便座もなく、とにかく臭くて寒くて、港区のタワマンに住んでた自分にはかなりこたえました。
ただ日本ではあまり会わない国の人(シリア、イラン、モンゴル、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタン、ウズベキスタン、グルジア等)、東京では仲良くならなかったであろう日本人(他商社、外務省、バレエ関係の人、佐藤君という学生)とも出会うコトが出来て、人生の宝物になりました。

ちなみにロシア語は期待通り笑非常にやりがいがあり、滅茶苦茶難しかったのですが(感覚的に2言語習得するくらいの労力がかかりました)、目標にしていた検定試験も何とか合格でき、何とかロシア人と飲みに行ったり、議論できるようになりました。

「大祖国戦争」

先の大戦「大祖国戦争」(第二次世界大戦をロシアではこう言います)の戦勝国であるロシアでは、独ソ戦に勝利した5月9日を「勝利の日」として盛大な祝日にしています。ただ実際にメディアの報道や、住んでいる人(特に年配の方)と話していると、日本の8月の終戦記念日にも通じる何やら悲しくてしんみりした雰囲気を感じます。それは戦争に勝利はしたものの、ソ連が最大の戦争の被害者だったからだと思います(犠牲者数は2400万人と日本の約8倍で、もはや建国神話レベルの大惨事でした)

第二次大戦の世界各国の戦死者数

ちなみに大国アメリカはプライベートライアンはじめ数多の感動的な戦争映画を作って、世界を救った感出してますが、犠牲者数ベースでは↑のランキングに入っておらず(確か30万人です)、同じ連合国側でも約80倍の犠牲者を出したソ連こそが、最も犠牲を出し、勝利に貢献したのは事実かと思います。

ロシアの(少なくともプーチンを支持する中年~年配の方)の歴史観は恐らくこんな感じです

「ロシアは可哀そうな国でずっと侵略を受けてきた。北欧のバイキングに始まり、アジア(モンゴル・タタール)の遊牧民族に侵略され、その後は西ヨーロッパの強国から常に侵略され続けてきた。先の大戦はソ連時代の国力が弱っている時に、ナチスが不可侵条約を破棄し一方的に侵略し、我々は2400万人を盾にしてロシアを、そしてファシズムから世界を守った(アメリカはせこいので、ロシア劣勢の開戦時は助けてくれず、東部前線の形成逆転し、連合国側の勝ち確定してからしか参戦しなかったのに、ちゃっかり戦後の覇権を握った許せん)。我々の国、その領土はそうした犠牲の上にある尊いものなのだ」

ぶらいあん調べ

日本側の主張と感じる違和感

日本政府の主張は恐らくこんなイメージです

「卑怯なソ連は日本の敗戦がほぼ確定したタイミングで、不可侵条約を一方的に破棄し侵略してきた。満州や樺太では民間人までもが殺害され、北方領土を不法占拠し、二宮和也はじめとする日本兵をシベリアに抑留し、戦後も悲しみは続いた」

ぶらいあん調べ

ラーゲリより愛を込めて : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

北方領土の不法占拠に対しては政府公認のゆるキャラのエリカちゃんによる強引な抗議が続いています。

ロシア側の立場、歴史を考えると、こんなゆるキャラ使ったところで、話題にはなりますが、領土返還に繋がるイメージは全然わかないです、、、

北方領土を返してもらうには

結論 : 現状無理。チャンスは米露関係次第。
外交に於いては夫々の立場主張があり、一方的にどちらが正しいということは生じえないので交渉を通じて落としどころを見つける必要があります。現状ロシア側に領土を明け渡すメリットも、日本側にそれを引き出すカードがあるとも全く思えません(西側諸国の代わりにウクライナが戦争してますし)。
ただ一つ、ロシア人と議論していて気付いた点として、ロシア側は領土問題に関して、日本を交渉相手と思っていないです。
彼等の立場からすると、日本は軍隊を持たず安全保障をアメリカに依存しているアメリカの属国であり、真の主権国家ではないです。北方領土返還後、そこに米軍基地が出来るリスクがあります。なので話をつける先はアメリカであり、領土返還の為にはアメリカがその気にならんと無理。つまり「日露問題というよりも米露の問題」というのが、ロシアで考えた自分の意見です。

我々日本人が領土奪還の為に出来るアプローチは、神社で祈るとかエリカちゃんによる啓蒙活動とかもありますが笑、現代の征夷大将軍たるアメリカに動いてもらわんと何も出来ん、という現状をシッカリ認識するコトかもしれません。

今回は以上です!ありがとうございました。


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