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ROKKORレンズ「MC」と「MD」の描写の違い
どうもO太郎です。
カメラの楽しみの一つはレンズ選び。
毎年何本も発売される最新レンズも良いですが、安く買えて「エモい」写真が撮れるオールドレンズも人気が高いですよね。カメラ好きなら1度は使ってみたという人も多いと思います。
そんなオールドレンズの中でも流通量が多く写りの評判も高いレンズの一つがMINOLTAのROKKORと呼ばれるレンズシリーズ。
ROKKORレンズは発売した時代とともに冠する名称が異なっているのですが、今回はその中でも代表的なシリーズのMC ROKKOR(1960年代から1970年代に発売)とMD ROKKOR(1970年代から1980年代に発売)にフォーカスして描写の違いを比較します。
同じシリーズ内のレンズでも、特に開放付近での撮影では描写の違いはありますが、絞っていくと同じような描写になります。今回はレンズ単体ではなく、シリーズ間の比較をしていきますので細かな描写には目を瞑り作られた時代の設計思想を考察していきましょう。
▼MC ROKKOR
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外装は金属製でローレットも金属製。緑のロッコールの愛称で知られる緑色に見えるコーティングが特徴的。
※参考写真はMC ROKKOR-PF 58mmF1.4
自分が保有しているMC ROKKORのレンズはMC ROKKOR-PF 58mmF1.4とMC ROKKOR-PF 55mm F1.7、MC TELE ROKKOR-PF 135mm F2.8の3本。
まずは開放での作例をみてみましょう。
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絞り開放で撮影した時には盛大にフレアやゴーストが発生します。オールドレンズの中でもフレア・ゴーストが綺麗に出ることで人気の高いSUPER TAKUMAR 55mm F1.8も同じ時期に発売されたレンズですので、発売年相応ということでしょう。
周辺減光も激しく、中央部でも解像感は低いです。ハイライトのディティールが潰れていたりにじんだりしていて、実にオールドレンズ然とした描写です。
さて絞った時の描写はどうでしょうか。
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ぐっと解像度が増していますね。ディティールまでくっきりと写っているので建築物の直線がビシッと決まります。
ふわっとした描写が好まれるオールドレンズですが、60年代に作られたものとは思えないほど線が細く繊細な描写ですね。
一方でコントラストは低く明暗のメリハリはあまりつかない印象です。色味についても色のりは良くはなく、良くも悪くもレトロな雰囲気。こういった要素から写実的ながらノワールな写りになっていると感じられます。
ここまでの内容をまとめると
・線が細く高精細
・色のりは悪く、レトロな色味
・あっさりとした描写
といった特徴を持っているレンズシリーズです。
▼MD ROKKOR
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外装はプラスチックに変更されていて、ローレットはゴム巻き。MC時代よりチープな見た目にはなりましたが軽くなり操作性も良くなったのでより実用的なレンズです。
MD ROKKORで自分が保有しているレンズはMD ROKKOR50mm F1.7、MD ROKKOR 50mm F1.4、NEW MD ROKKOR 50mm F1.7の3本
※NEWMDは正確にはMDシリーズではないですが描写に大きな違いは見られなかったため同じシリーズとして扱います
MCと同様に開放付近の作例から見ていきます。
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MC時代と比較するとフレア・ゴーストともに控えめになっています。コーティングの技術が上がったということがよくわかります。とはいえ現代レンズと比べるとまだまだ逆光耐性は低いですね。
周辺減光は相変わらずありますし、中央部でも解像感はいまいち。レンズによってはハイライトの滲みがありますしこの辺りはMC時代と近い描写です。
次に絞って撮影した作例を見ていきます。
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一見すると現代レンズのようにも見えますね。色のりがとてもよく、特に赤と緑の発色が凄まじいです。コントラストが高くくっきりはっきりしている印象。
ただし、MC ROKKORと比較して線は太くなっているのか繊細な描写とは言い難いですね。強い色味やコントラストの高さも相まって、少しわざとらしい描写にも思えます。
トイカメラとまではいかないですが少しおもちゃや絵のようで、クレヨンで色塗りしたかのような描写に感じられます。
まとめると
・線が太くコントラストが強い
・色のりは強く特に赤と緑の発色が良い
・こってりとした描写
といった特徴が見られます。
▼比較
これまでの内容をおさらいすると、
▼MC ROKKOR
・線が細く高精細
・色のりは悪く、レトロな色味
・あっさりとした描写
▼MD ROKKOR
・線が太くコントラストが強い
・色のりは強く特に赤と緑の発色が良い
・こってりとした描写
という特徴の違いがあることがわかりました。
時代としてはMC→MDの順に発売されているのですが、意外にもMCの方が線が細くより写実的な描写をしています。
その一方でMDの方がコントラストや色のりの良さを生かしてくっきりはっきりとした描写になっています。
明らかに2つのシリーズで方向性の異なる描写をしていることから、解像感が高い魅力的な写真のためには解像度の高さ以上にコントラストと色が重要だという設計思想の切り替えがあったものと考えられます。解像度の高いMC ROKKORの設計方針を変えるというのは当時はかなり思い切った判断をしたのでしょう。
現代においては、カールツァイスなどのコントラスト重視のレンズとSIGMAなどの解像度重視のレンズが混在していて各メーカーの個性の1つともなっています。そんな中でMINOLTAという1つのメーカーの中にそれぞれの設計思想で作られたレンズがあるというのは珍しいですね。
▼まとめ
さてここまで描写の比較をして来ましたが、当然MCとMDのどちらが良いどちらが悪いという話ではありません。
レンズは撮影で使ってこそですからそれぞれの特徴を知った上で、自分が撮りたいものに合わせてレンズを選べると満足いく写真を撮れるのではないでしょうか。
ちなみに自分の使い分け方として、MCではレトロな描写を生かして古民家などの古い景色の撮影やフレアゴーストを活かしたポートレートを。MDは色のりの良さを生かして薔薇などの色の濃い花などの撮影に使っています。
最後に、流通量も多く人気もあるROKKORレンズは憧れのフォトグラファーが使っているという理由で手にする人もいるかと思います。ですが同じROKKORというブランドのレンズでも年代によって描写の方向性が違って来ますので、新しく購入される際には自分の用途を考えてから購入されると間違いがないと思います。
ぜひ購入の参考としていただけると幸いです。
▼作例〜MC ROKKOR〜
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▼作例〜MD ROKKOR〜
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