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175 『アオのハコ』 第五話「水族館」

 バドのシングルスの大喜くんの緒戦が始まる今回、千夏先輩は前回最後の台詞、(いいよ、大喜くんが勝ったら水族館)をモノローグとして繰り返すのですが、心の声が明示されない千夏先輩、声優の上田麗奈とのアニメスタッフのディレクションは慎重に、緊密にやってるはず。その上での千夏先輩の声。こんな曖昧な声、良く出せると驚くばかり。期待と羨望とちょっとの不安。多分金魚鉢の向こう側の意見を聞き、無音のアニメ本編の映像に集中して演じたからと思われます。
 そして匡と雛がいる前で千夏先輩からのお誘いをLINEで受け取る大喜くん。良く考えたら日付も匡くんが指定していました。後日二次小説の方を書き換えておきます。
 そしてその夜の大喜くんの悶々の後、待ちに待った水族館。その駅前での待ち合わせは大喜くんが硬貨を落としてしゃがみ、それを千夏先輩が立って見る、その時点での二人の関係を象徴する構図。しかも大喜くんにかける千夏先輩の声はあくまで優しい。こんな姿を見たら男子、イチコロになること間違いなく。それが今回のタイトル画像で、大喜くんへの好意があるから無自覚なのが恐ろしい。
 そしてちゃんと受付と入口プレートを明示して、千夏先輩と大喜くんがサンシャイン水族館の本館に入る。そこで千夏先輩は大喜くんを先導する、あるいは半ば無視するように子供のようにはしゃぐ。水族館に来たことに喜んでいるのか、大喜くんと一緒に来れたことが嬉しいのか、本当にどっちともとれる演出は見事。千夏先輩につられて大喜くんも子供のようにはしゃぐ。
 そしてペンギンの水槽の前でお互い見つめ合ってしまった直後、小五くらいの男の子が千夏先輩にぶつかり、その勢いで右腕が大喜くんの左腕に触れる。私は半ばわざと、半ば不可抗力で千夏先輩は大喜くんに倒れかかったと解釈しましたが、観てるこっちもドキドキする場面でした。
 その直後、つまりぶつかった子供とその親御さんが千夏先輩に謝って去った後が、千夏先輩が笠原くんからのお願い、大喜くんとの水族館を受け入れた理由を告白する場面。それまでの千夏先輩の挙動から大喜くんが好きなのは視聴者からバレバレなのですが、この時点では千夏先輩にもそんな勇気はなかった。それでも千夏先輩は誠実だった。「来年も再来年ある」って言ったことについて「大喜くんが頑張ってること知ってたのに無神経だった」。
 こんな細かいことに気に病むとは、千夏先輩の真面目さ、気の遣いようが垣間見れた台詞でした。大喜くんも本当にいい男子で、デートでなかったことに気落ちしたものの千夏先輩の立場から、「とはいっても、一人で余所の家に住んでしたら、気遣うよな」、と察することができる。
 だから大喜くんは千夏先輩に、ケープくんのねえねえスタンプを教えてあげた。本当に二人、互いのことを考えられるお似合いのカップルと思うのでした。
 今回のサブタイの水族館の話しが終わって次は翌週月曜日、食堂での大喜くんと匡くん、途中から雛ちゃんが加わってのお喋り。その途中で千夏先輩が入ってきたのを見かける顛末も。
 その後で三人が教室に戻る時、雛ちゃんが質問して匡くんが答える形で高校バドミントンの勢力図、栄明の県は佐知川(さじかわ)高校一強のことが明かされる。その実力は昨年インターハイ優勝が示すように全国レベルであることも。それを聞いた雛ちゃんは「当たって砕けろ!」、ここまではコメディ要員でした。
 そして原作でも名場面の整体師さんでの雛ちゃんと千夏先輩との出会い。雛ちゃんはケープくんのキーホルダーを見て大喜との関係が脈ありと察し、千夏先輩は雛ちゃんが語ってくれた大喜くんに関する話しぶりから、雛ちゃんの想いは大喜くんにと思いつく場面。それぞれ違う情報で気づく点、雛ちゃんと千夏先輩、二人のキャラクターの違いが表れて素晴らしい場面と思いました。
 そして最後、雛ちゃんが千夏先輩を尾けてしまい、帰りついた家に戸惑って家塀にしゃがんでしまうカットで終わり。サブタイの水族館に相応しく、雨雲が垂れ込めて降りしきる雨の場面のend。水族館から雨へ。楽しいお出かけと陰鬱な天気。両方とも水関連ですが扱い方が劇的に違いがある。作劇的にも目を見張る回でした。

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