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103『小市民シリーズ』、第5話「伯林あげぱんの謎」、感想

 いくつかの点で初回とは対称的な回でした。前回は頼まれていないのにしゃしゃり出た堂島くん、今回は自分の新聞部が舞台。また今までは推理に消極的だった小鳩くんも今回は新聞部のみんなに嬉々として自分の推理を披露する。そして残った女の子も「羊の着ぐるみ」では自転車の盗難にあった以外では傍観者でいられたが、今回は。
 高校の近所にドイツのパン屋ができたというので取材を申し込んだところ、パンのくじ引きで担当を決めることに。新聞部の人数分パンを作り、その中の一つにマスタードを入れると。ドイツでそんな遊びがあるらしい。しかし新聞部の四人が一個ずつ食したところ、誰も辛いパンに当たらなかったと。新聞部部室にいた堂島くん以下計四人、アンケートを渡しに来た小鳩くんと視聴者の私に説明してくれました。
 私が最初に思いついたのは辛さが飛んだということ。料理酒を使った料理でも加熱すればアルコール成分は飛ぶというから、辛み成分もオーブンなどで加熱する過程で蒸発したのではないかと。しかしパンの底に小さい穴があったというので、この私の思い付きは排除された形。
 今回の件で難しいのは外れ、辛いパンに当たってドイツのパン屋を取材することになってもそれだけのこと。つまりパン屋さんに感謝されこそすれ、名誉が貶められたり自尊心が傷つくことは考えられないこと。つまり「美味しく戴きました」と噓をつく根拠が(差し当たって)見当たらないこと。
 だから小鳩くんは辛いパンがなかったに感づかなかったことを根拠づけるため、味覚障害を持ち出してきた。私はあまりその線はないと思いました。しかしともかく伯林あげぱんを作ってくれた調理部に確認したところ、マスタードでは目立たないからハバネロソースを使ったという。聞かない名前だったので何かと思ったら、タバスコじゃないですか。私の家でもロールキャベツやスパゲッティに食べる前に二、三滴垂らしたことがあり、直に舐めるもんじゃないと承知しています。それをさせる小鳩くんの無茶ぶりさ。
 その苦心淡々を傍観する小鳩くんの無神経さ。多分一時解散し、各自水や清涼飲料水を買って辛さを紛らわしたはず。と言うことはこの場にいる新聞部の四人はタバスコパンを食べなかったことになる。では誰が、辛い外れくじを引いたのか。その前の段階で新聞部にはもう二人、この日は外せないライブがあった部長と、馬鹿らしくて参加しなかった部員がいた。
 結果的にこの二人の行動で部室の四人が外れ(一つだけだから「当たり」か?)を引かなかった理由、そして真犯人(というより被害者)が判明する。その過程は正にミステリ。前回は実際の犯罪だからか後手に回ったけど今回は気軽な探偵ごっこだからか、小鳩くんの推論の鋭さが際立った感じ。
 今回も美麗な背景美術、そこで展開された学校が舞台のちょっとした喜劇に堪能しました。その手抜かりのなさ、強烈にアニメ『氷菓』を意識してると観ています。

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