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169 『アオのハコ』 第四話「あいつが勝ったら」

 鹿野千夏と猪股大喜、二人の若者の気持ちが丁寧に描かれた素晴らしい回でした。
 まず大喜くんが切っ掛けを作り、千夏ちゃんも気づかずに昼休みになって発覚したジャージ取り違え騒動。結局屋上に人知れず落ち合うことができて無事にお互いの持ち物を交換できたのですが、問題はその後。千夏ちゃんは大喜くんの目の前で着がえ始めたのです。
 私の二次小説でも説明しましたが、千夏ちゃん、男子にとって女子がどう見られるか、花恋という友人がいても実感として分かっていなかったんだと思う。決して大喜くんを男の子として見ていなかったわけではないかと。
 千夏ちゃんがジャージ騒動での自分の迂闊さに気づいたのは二次小説でも言及した通り、バドのダブルスの公式戦前日に大喜くんを元気づけようとした場面。心の声こそ明示されてないけど、大喜くんの裸の上半身を見て照れている場面、聡明な千夏ちゃんは大喜くんと置き換えて考えることができたはずだから、「男子の大喜くんには目の毒だったんだ」と気づいたはず。
 しかしこの場面で重要なのはもちろんこの後。

「余計なこと考えないで、ただそれを発揮してくること。分かった?」

は『タッチ』のある場面を彷彿してにやけてしまった(『アオのハコ』を貶してるわけではないです)のですが、問題はその直後。千夏ちゃんの未熟さ、青が出た「大喜くんには来年も再来年もあるんだし」。お姉さん気取りで言ったつもりだったけど、大喜くんからしたら「俺と千夏は同志ではなかったのか」という反発もあったと思う。その表情に即座に千夏ちゃんは気づき、不安な表情をする。多分明日のダブルスに影響するではと心配になったのだと思う。
 しかし次の日、考えて見れば金曜日だから普通に授業がありますね、二次小説で間違ってました。能登から帰ったら変えときます。針生くんと大喜くんのペアは無事地区予選通過。その報告をおばさんから聞いて安堵し、昨日の大喜くんとのやり取りを告白。
 大喜くんのお母さん、由紀子さんは千夏ちゃんのできた性格を改めて好感持ったはずだけど、この時点で千夏ちゃんは自分の息子、大喜を好きなことに気づいたのでは? 人生経験豊富で猪股家への居候にも尽力してくれ(多分今週のアニメで描かれるはずです)、なぜ家を選んでくれたか考えれば、大喜がいたからと思いつくはずだから。しかしおばさんはやはり大人。気づいていながら優しく見守るため、あえて大喜との仲を問うことをしなかったと思う。

「ああいう子だから気にしなくていいのよ」

 だから千夏ちゃんへ言った台詞は、うちの息子と付き合うなら一挙手一投足にいちいち反応しなくていいのよという、大人で大喜の親からのアドバイスと思うのです。
 そして一週間後の地区大会のシングルス。大喜くんの親友、笠原くんから千夏ちゃんは、自分が賭けの対象となっていることを知る。しかし続いて大喜くんには何のメリットもないことを告げられ、あいつが勝ったら水族館でも連れてってやってくれませんかとお願いされる。
 ここでも千夏ちゃんのモノローグがないから推察するしかないのですが、聡明な千夏ちゃんはいろいろなことに気づいたはず。大喜くんが私を好きなことがバレていること。私がバスケを頑張っているから大喜くんもバドを頑張れていること。すでに大喜くんとの関わりで分かっていたことですが、他の人から見ても同じなんだと、自分の見方に確信をもてたはず。
 その前提に立っての水族館。二次小説でも言及したように千夏ちゃん自身にとってもまたとない機会と思い、「いいよ。大喜くんが勝ったら水族館」と笠原くんのお願いに承諾したと思うのです。
 本当に大喜くん、友だち思いのいい親友を持ってる。羨ましく思えて気持ちよく終わった回でした。


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